乳酸=疲労物質はもう古い!?
秋が深まってきそうな気配がする今日この頃。スポーツするには最適のシーズンだ。私は普段、ジムでの筋トレをするがフルマラソンや200kmくらいのロードレースに出ることもある。
ランニングや自転車競技で足がパンパンになっている状態を「乳酸が溜ってきた」と表現するが、実は乳酸が疲労物質というのはいささか古い考えであるのだ。
そもそも疲労物質には様々な原因が考えられる。近年は「中枢性疲労」と言って、脳のエネルギー不足なども有名だ。
筋肉の中では「リン酸」という物質が運動していると蓄積していく。そのリン酸がカルシウムと結合することで、筋収縮に必要であるカルシウムイオンとトロポミン・トロポミオシンの働きが低下すると言われている。
また、筋内にはカリウムが多く、筋外にはナトリウムが多い。運動すると筋内のカリウムが漏出し疲労につながるという説もある。
もちろんそれ以外にもたくさん疲労につながる物質や化学結合が存在する。つまりまとめると、「疲労物質は乳酸だけではない」ということだ。
では、乳酸とは何なのか?一言でいえば、「エネルギー基質」だ。そもそも乳酸は運動していなくても上昇する。例えば果糖(フルクトース)を摂取すると分解が非常に早いので細胞の糖分解が高まった状態になる。
糖分解においてはまず解糖系という代謝経路をたどって、糖はピルビン酸に変化する。ここで酸素があればミトコンドリアへ渡されTCA回路でエネルギーが作り出される。ミトコンドリアの一連の反応はシステマチックに働いているので、突然大量の糖分解が必要な時に必ず「余り」が生まれる。それが乳酸である。
つまり糖分解が過剰になるとピルビン酸が余る。余ったピルビン酸は安定した乳酸という物質に変えられるのだ。乳酸はたくさんの糖が分解されて生産される物質なのである。
乳酸は疲労物質や老廃物なんかではなく、とても使いやすいエネルギーなのだ。たった一つの反応で乳酸➞ピルビン酸➞ミトコンドリアに戻ることができるのだ。ちなみに乳酸/ピルビン酸の割合は10:1で圧倒的に乳酸のほうが多い。
激しい運動で乳酸がたまるのは間違いではないのだが、実はその乳酸はエネルギーに変えられる準備段階であるのかもしれない。いわば次のエネルギーになるため「待機」しているのかも。
だから乳酸を毛嫌いせずに、秋の運動に勤しみましょう!
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