翻訳発注コストの”正しい”削り方
翻訳の仕事では、文字数カウントが最初の基礎になります。
翻訳料金は単価×文字数が通常ですからね。
さて、この文字数ですが
料金に直結する数字なだけに、クライアントとの話題にもよく上ってきます。
「うちでカウントした文字数と違うのだけれど……」
こういうケースで多いのが、数字をすべて削除してからカウントしていること。
数字なんて翻訳の必要がないじゃないか、と思われがちですが意外とそうではありません。
例えば「1990年代」という言葉は、
中国語では「20世紀の90年代」というのがより自然です。
1億2000万という数字も、
1.2億と書き換えたほうがいいこともあるでしょう。
和暦なんて当然伝わらないので、
すべて西暦に直します。
台湾向けであれば、民国歴に直したほうがいいことがあるかもしれませんね。
ほかにも面積を表すのに、日本ではよく使われるa/haや坪も換算しないといけませんし、
反対に中国では畝(ムー、約6.67a)が一般的なので訳注をつけたりします。
さらにそもそもの話をすれば、
A)薬品A 1456mlに薬品B 589mlを混ぜ、それを223ml取り、さらに水1412.3mlを混ぜたロットNo. ABCD12345EFGHから1589mlを別容器に保管する。
B)薬品Aに薬品Bを混ぜ、それを取り、さらに水を混ぜたロットを別容器に保管する。
という二つの文があったとして、Aの文のほうが明らかに手間がかかるのに、
Bとほぼ同じ料金となってしまうと
翻訳の受け手はいなくなってしまいます。
「翻訳しなくていい」と「訳文の中の数字が間違っていてもいい」は別問題ですので、
数字は逐一チェックが必要になりますし。
そんなわけで私のところでは基本的に文中の数字は、
すべて1文字として扱っています。
とはいえ、本文中に数字が大量にあって
どうしてもコストを削りたい、という要望もわからなくはありません。
そういう場合は、次のようにしています。
C)薬品A {1}mlに薬品B {2}mlを混ぜ、それを{3}ml取り、さらに水{4}mlを混ぜたロット{5}から{6}mlを別容器に保管する。
Aの文をCのように改変し、1~6まで数字を別のデータベースとして保持しておきます。
そして訳文が完成したら、「発注側の責任で」数字を置き換えていくのです。
たくさん数字のある文章なら、ある程度のコスト削減効果が得られます。
以上、翻訳コストの”正しい”削り方でした。