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【コンサルが教える】「落ち込みやすい部下」を持つ上司が持つべき“たった1つ”のスタンス

『頭のいい人が話す前に考えていること』著者・安達裕哉インタビュー

多くのマネジメント層にとって「若手社員の育成」は大きな悩みの種。厳しくしすぎると落ち込んでしまうし、かといって、給料分の働きはしてもらわないと困る……。そう悩んでいる管理職も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「読み終わった後、この本に出会ってなかった人生を想像するとゾッとする」と話題沸騰中の書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』の20万部突破を記念して、落ち込みやすい若手社員の取り扱いについて、著者の安達裕哉さんに特別インタビューを実施します。
安達さん、上司はみんな人格者になるべきですか?(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。

上司は「部下のメンタル」に責任を持ってはいけない

――すぐに落ち込んでしまう若手社員。上司はどう対処したらいいでしょうか?

安達裕哉(以下、安達):結論から言うと、いちばん大切なのは「上司は部下のメンタルに責任を持ってはいけない」ということだと思います。

――ええっ。「部下が落ち込んでいるのは私の責任だから、私がなんとかしなきゃ」と思いがちじゃないですか?

安達:もちろん、パワハラは絶対ダメですし、「礼儀正しく接する」などは、最低条件として必要だと思います。でも、その最低条件を守っているかぎり、「部下のメンタルケア」は上司の責任の範疇ではないと考えています。むしろ、上司の責任だと思ってしまうと、余計な問題が起きやすくなる気がしますね。

――余計な問題。

安達:メンタルというのは、その人が生まれ持った性格や、プライベートの状況によっても大きく異なるからです。

 たとえば、身内が亡くなった直後も今までどおりのメンタルで働ける人は、なかなかいないでしょう。その他にも、離婚、子どもが病気、彼女にフラれた、ゲームにハマってほとんど寝られていない……などなど、人のメンタルは、さまざまな出来事に影響を受けます。

 いくら上司ががんばったところで、どうにもならないわけです。

――たしかに。それは個人の問題ですもんね。

安達:上司は心の専門家ではないし、カウンセラーでもない。上司は、チームの成果に対して責任を持っているのであって、部下のメンタルケアをすることが目的なわけではないじゃないですか。チームの成果だけではなく、部下のメンタルまで責任を持ってしまうと、上司まで潰れてしまう可能性もあります。

スキル不足でメンタル不調に陥ったときの解決策

――たとえば、仕事で失敗してしまい、「自分はなんてダメなんだ……」と、仕事が嫌になってしまう人もいますが。

安達:メンタル不調の原因として、「スキル不足」も大きいですよね。

 たしかに上司として、失敗のフォローをしてあげるのは大事だとは思いますが、飲みに誘ってくどくど語ったりする必要はないと思います。スキル不足は本人が解決するべき問題。メンタルの配慮のために、管理職の膨大な時間を使うのは、適切ではないと思います。

 だから、「気にしなくていいよ」とか、さらりと声をかけるくらいでいいと思いますよ。

――よく、「上司が人格者で、メンバーのモチベーションを高めてくれるすごい人だ!」みたいな話も聞きます。みんなのやる気を出させるためにやっていることなど、ありましたか?

安達:うーん、それは、人格者の特性であり、みんなが同じようにできるわけではないので、真似しないほうがいいと思いますね。

 管理職は「仕事のプロ」ではありますが、カウンセラーやセラピストのような「人の心理のプロ」ではありません。そういう専門的な訓練を受けているわけでもない。せいぜい管理職になってから何回か受ける「管理職研修」「メンタルヘルス研修」の中で、話題になる程度でしょう。

 また、現在の日本では「仕事はできないけど、人はいい」という人は管理職になれません。管理職の最優先事項は部門の成果をあげることにあり、メンタルへの配慮はその手段にすぎないからです。むしろ「仕事はめっぽうできるけど、人として『できた人』には程遠い」というケースのほうが多いのではないでしょうか。

 ですから、バリバリと仕事をしながら、部下の人心も掌握する。

 そんなスーパーな上司なんて、そうそういる訳ないのです。

 結局、メンタルの改善にいちばん効果的なのは、人格者に近づこうとすることでも、モチベーションをアップさせるような声がけをすることでもなく、「部下に成果を上げさせること」です。成果が上がらないから心が折れてしまうわけで、自分がやったことが成果につながると、みんな明るくなるんです。

 だから、営業マンなら、徹底的に売ってもらう。上司がすべきなのは、チームメンバー一人ひとりが目標達成ができる環境をつくる。売れる営業のやり方を学べる環境をつくる。それ以上の治療方法はないと思います。

社員に絶対言わせてはいけない1つの言葉

――チームの空気がギスギスしていると、メンタルを病んでしまう人も多いのではないかと思います。

安達:チームの空気づくりは、とても大事だと思います。ただ、誤解されやすいのですが、「厳しいことを言われない環境」イコール「心理的安全性の高い環境」ではありません。

 プロとして仕事する上で、目標達成のために部下に厳しくするのはむしろ必要なこと。

 大事なのは、「厳しくされない環境」ではなく「失敗してもバカにされない環境」をつくることです。

 他人が失敗したとき、

「頭悪いね」
「おまえ、センスねえな」
「こんなことも知らないの? 常識だよ」

 など、人格否定のような言葉を使う人がときどきいます。

 そういう人に対しては、上司が「人をバカにするな」と厳しく対処すべきだと思います。

 入社したばかりの新人が、最新のニュースを読んでいなくて、チームの話題についていけなかったとして、そのときに言うべきなのは、「自分の仕事に関連するニュースはちゃんと読んでおきなさい」ということだけ。わざわざ「新聞読まないとか、常識的にどうなの?」なんて言い方をする必要はありません。

――社員一人ひとりが目標達成しやすい環境をつくりつつも、個々人がどこまで努力できるかは、本人に任せるということですね。

安達:もちろん、メンタルの不調の原因が上司にあれば、カウンセラーなどは上司にその旨を伝え、改善を促すように求めなければならないでしょう。上司の横暴を放置してはなりません。

 しかし、上司は最低限、

「法律を守る」
「部下に礼儀正しく接する」
「教えるべきことは教える」

 など、最低限のことをしているかぎりにおいて、部下のメンタルの状態について、責任を負わされるべきではないと、私は思います。


■ダイヤモンド社から書籍のご案内
全国の書店で1位続出!!「今年1位かも」「部下も上司も全員読んで」と大反響。

ぶっ刺さりすぎて声出た。
この本に出会っていない世界線を想像するとゾッとする。

(30代・男性)

「いま、流行りの自己啓発本かぁ」と思って手に取ったことを
反省したくなる程の内容でした。
(50代・男性)

本書の内容

第1部 頭のいい人が話す前に考えていること ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす7つの黄金法則

 その1 頭が悪くなる瞬間、頭がよくなる時間
 その2 頭のよさを決めるのは「だれ」だ?
 その3 なぜ、コンサルは入社1年目でもその道30年の社長にアドバイスできるのか?
 その4 頭のいい人は、論破しない
 その5 「話し方」だけうまくなるな
 その6 知識が「知性」に変わるとき
 その7 承認欲求をコントロールできる者がコミュニケーションの強者になれる

第2部 一気に頭のいい人になれる思考の深め方 ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法

 第1章 まずは、バカな話し方をやめる ――客観視」の思考法
 第2章 なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか? ――「整理」の思考法
 第3章 ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう ――「傾聴」の思考法
 第4章 深く聞く技術と教わる技術 ――「質問」の思考法
 第5章 最後に言葉にしてインパクトを残す ――「言語化」の思考法


【取り上げられた本】
頭のいい人が話す前に考えていること
 安達裕哉 著

<内容紹介>
どれだけ考えても、伝わらなければ意味がない。でも、話し方のスキルだけでは、人の心は動かせない。コンサルで叩き込まれたのは、人の心を動かす、思考の「質」の高め方でした。本書は「頭のいい人」が何をどう考えているかを明確にし、誰でも思考の質を高め、「頭のいい人」になれる方法を伝授します。