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【コンサルが教える】仕事を任されたとき、二流は「納期の確認」をする。では、一流は?

『頭のいい人が話す前に考えていること』著者・安達裕哉インタビュー

入社1年目に身につけた習慣や、上司に教わった仕事のやり方は、その後の働き方、しいては人生に大きな影響を及ぼします。コンサルの知見を凝縮し「今年1位かも」「刺さりすぎて、声出た」と話題沸騰中の書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者である安達裕哉さんは、新人コンサルタント時代に、尊敬する先輩から教わった「仕事を任されたらやるべき8箇条」が、22年経ったいまでも仕事の基盤になっているそうです。
今回は、だれでも「頭のいい人」になれる方法を記した一冊『頭のいい人が話す前に考えていること』の20万部突破を記念して、安達さんに特別インタビューを実施します。
上司に怒られることばかりで、精神的にまいってしまうことも多い入社1年目。どんな対策をすればいいのでしょう。安達さんに、くわしく教えていただこうと思います!(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。

仕事の「できる人」「できない人」の決定的な違いとは?

――安達さんが、「この習慣は、1年目のうちに身につけておいたほうがいい」と思うものはありますか?

安達裕哉(以下、安達):コンサルタントになったばかりの頃、尊敬する上司に「仕事を任されたらやるべき8箇条」を教えていただきました。あれから20年以上が経ち、会社を経営するようになった現在も、ほぼ教えていただいたとおりにやっています。

 今読み返してみると、この「仕事を任されたらやるべきことリスト」は、仕事の「できる人」「できない人」を分けるリストでもあるな、と思います。

 つまり、仕事を任されたら、この8つのことをやるだけで「仕事のできる人」になれるのです。

 入社1年目の人に限らず、ある程度経験を重ねた人でも、この8箇条を見返して常に意識できるといいかもしれません。

❏仕事を任されたらすべき8箇条

1.納期を確認せよ
2.成果を合意せよ
3.仕事を分割せよ
4.難しい仕事から取り掛かれ
5.行き詰まったら、「即、相談」せよ
6.説明責任を果たせ
7.自分でゼロから考えるな。前例を探せ
8.人への依頼は早めにし、1から7を守らせよ

任された瞬間に「仕事ができるかどうか」は決まる

安達:この中でも、1の「納期を確認せよ」はだれでもやっているのですが、意外にできている人が少ないのが、2の「成果を合意せよ」です。

 上司に何か指示されても、不明点を細かく確認しないまま「わかりました」と引き受けてしまう人が多いと思うのですが、「上司からの指示は契約である」くらいの認識でいたほうがいいと思います。

――上司からの指示は契約、ですか。

安達:「会議の資料、まとめておいて」など、ちょっとした雑用でも、安請け合いするのではなく、具体的にどんな成果物を出せばいいのかその場で確認すること。

 納期を確認するのは多くの人ができることですが、納期だけ確認して、仕事に取り掛かったら「あれ? ここってどっちがいいんだろう」と不明点が出てきて、上司に確認しようにも、外出してしまって連絡が取れない。「明日の昼までって言われたのに、どうしよう」とあとから後悔する……というのは、新入社員にはよくあるトラブルだと思います。

――あるあるですね……耳が痛いです。

 仕事を任せる側が、指示を明確にしてから依頼をするケースは少ないものです。

 たとえば、納期を確認したあとに、「誰に見せる用の資料ですか?」と聞いてみる。

 すると「役員プレゼンで聞かれたときに、提示できるようにしたい」と返ってくる。

 そしたら「でしたら、過去の成功事例やデータがたくさんあった方がいいですよね?」とまた上司に確認することができる。

 すると「そうだね、とにかく、真剣にこのプロジェクトについて本気で考えている感を出したい。無駄になるかもしれないけど、やっていて損はないと思う」となるかもしれません。

――だいぶ進めやすくなりましたね。

安達:そうなんです。もちろん、このようにうまくいくことばかりではありませんが、だれしも仕事をお願いしようと思った理由はあるはずです。この例では、「役員にいざ聞かれたときのために、データをたくさん集めた資料を作る」という成果を合意することができました。納期を確認し、成果を合意したら、あとは、納期より早く成果物を提出すれば……

――仕事が「できる人」になる……!

 安達:そういうことです。成果を合意し、納期より早く提出する。新人はこれだけで確実に「仕事のできる人」になれますね。多くの人が成果を合意せずに、納期だけ早くしようとして、無理がでるんです。

 成果を確認することで、手に入れたのは「考える軸」です。資料を作っている途中で何か迷っても、「役員に見せる」「データの網羅性」という軸に沿って考えることができる。

 仕事ができない人ってすぐに「何を考えればいいかわからない!」となるんですよ。そうならないための考える軸を仕事を任された瞬間に確認する。頭のいい人って成果を合意するための質問がすぐできるんです。ですから、任された瞬間に「仕事ができるかどうか」は決まる、と言っても過言ではないです。

 なので、大袈裟に聞こえるかもしれませんが、「契約書にサインしてもいい」と思えるレベルまで、最初にきちんとチェックして、考える軸を集めるために質問してから仕事に取り掛かるといいと思います。

「契約書にサインしてもいい」と思えるレベル、というのは、「考える軸が手に入ったからなんとかなりそうだな」という状態です。

――「考える軸を集める」イメージで質問する……

安達:そうです。で、提出するときに、「こういう軸で判断したので、ここはこうなっていますと」説明すればいいんです。

――これは、もしかして、6の「説明責任を果たせ」ですか?

安達:そういうことです。さすがですね。仕事を任された瞬間に「考える軸」を集めて、納期より早く提出し、判断した基準を考える軸に沿って説明できたら、「この人、仕事できるし、頭いいな」となるはずです。そしたら、仕事ができる人だけが入れる「上昇スパイラル」に入れるんです。

――え、なんですか? それ。

安達:「この人、仕事できるし、頭いいな」と認識されたら、どんどんその人に仕事が回ってくるようになります。とりあえずあいつに任せとけばなんとかなりそうだ、と。

 5行き詰まったら「即、相談せよ」を守っていたら特にですね。なにかあってもちゃんと相談してくれるし。と安心感もある。

 仕事を任される回数が増えると、経験がどんどんたまっていくんです。経験も「考える軸」になるんです。「考える軸」が勝手に増えていく。そしたら、次に仕事を任されたときに、「考える軸」を集めなくても、すでに経験という経験という軸があるので、「わかりました~」と納期だけ確認して受けられるようになるんです。これが「上昇スパイラル」です。

「メモの取り方」で差がつく2つのポイント

――とはいえ、上司に仕事を指示されたとき、頭の中で不明点をサッと整理するのって、結構難しいですよね。「ちょっと頼みたいことがあるんだけど。これがこうで、あれをやってほしくて……」と上司が説明をはじめることもあるでしょうし。「考える軸」を集めるイメージを持った上で、具体的にどんな聞き方をするといいでしょうか?

安達:2つのポイントを意識するといいと思います。

 1つは、基本的なことですが、「紙に書くこと」。曖昧になっている箇所を発見しやすくなるので、メモを取ることは必須だと思います。

 言葉にできないものは作れないので、まずは、指示された言葉の意味を一つ一つ確認しましょう。

 よく使う言葉でも、上司と自分では、違う意味としてとらえているかもしれません。以前、私が働いていたコンサルティング会社では、ミーティングで常に辞書を携帯することが義務付けられていました。コンサルタントの先輩や上司だけでなく、クライアント先の優秀な人はみんな、言葉の定義に敏感で、「安達さん、その言葉の意味って、こういう認識で大丈夫ですよね?」と確認されたことは何度もあります。

――たしかに、安請け合いして、「簡単な仕事だと思ったから引き受けたのに、思ったよりヘビーな仕事だった!」とあとで気が付く……みたいなこと、よくありますよね。

安達:そうそう。たとえば、「スケジュール管理」という言葉一つとっても、イメージは人それぞれです。

 単にスケジュール管理を「会議などの予定を被らないように調整すること」と考えているか、「理想のスケジュールを過ごせるようにマネジメントすること」と考えているかによって、言動は変わりますよね。

 入社1年目だと、社内で使われている言葉の半分もわからないと思います。社内ルールとしてはまとまっていないけど、みんな知ってる「社内の常識」みたいなものもあるかもしれない。

 言葉に敏感になり、定義を掘り下げることは、言い換えれば、「思考の解像度を上げる」ということです。

 メモを取るときには、「言葉の定義」を確認し、上司が求める仕事のレベルを把握しましょう。それだけで、「ここまでやると思わなかった!」という誤解や、仕事の見積もりミスなども、ずいぶん減ると思います。

「いつも期限に遅れる人」のスケジュールの立て方

――「メモするときのポイント」2つ目は何でしょうか?

安達:もう一つは、「仕事を任されたらすべき8箇条」の中にも入っていますが、「仕事を〇〇すること」です。

 依頼された仕事は、大きな岩の固まりのようなもので、そのままでは扱うことができないし、誰かの手を借りることもできません。具体的なタスクに分割することで、ようやく自分が何をするべきかが見えてきます。

 上司から仕事を依頼されたときに大事なのは、依頼された「その瞬間に」仕事を分割しておくこと。

 新入社員だと、他の先輩たちからの依頼も溜まっていたりして、上司からの指示にはひとまず「わかりました」と返事しておき、他の仕事が片付いてからようやく仕事の手順を考える……なんてことをやりがちですが、そうすると、時間がかかるタスクに着手するのが遅れたりします。

 お客様に回答をもらう、業者さんに見積もりをもらうなど、外部の人とやりとりが必要な仕事の場合、上司に指示されてすぐに着手しないと間に合わないものも多々あります。


 そうすると、

上司「あの仕事、終わった?」

部下「いや、業者からまだ見積もりが送られてきてなくて」

上司「それ、最初に頼んでおかないとダメでしょ!」

 みたいなトラブルに発展したり……。


――あるあるですね……。新人の頃ってとくに「あれやらなきゃ」「これやらなきゃ」と雑務に追われて、簡単なものから手をつけがちですよね。

安達:難しい仕事、特に「どうしたら良いかよくわからない」仕事は、思っているよりもはるかに時間がかかります。見積もりの2倍から3倍はかかると思っておいたほうがいいでしょう。

 だからこそ、上司に依頼されたらすぐに、手順を整理しておくことが、仕事をスムーズにこなすコツだと思います。


 おさらいすると、

仕事を任されたらすべき8箇条

1.納期を確認せよ
2.成果を合意せよ
3.仕事を分割せよ
4.難しい仕事から取り掛かれ
5.行き詰まったら、「即、相談」せよ
6.説明責任を果たせ
7.自分でゼロから考えるな。前例を探せ
8.人への依頼は早めにし、1から7を守らせよ

 これを仕事の基本として、常に意識しておけるといいと思います。


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本書の内容

第1部 頭のいい人が話す前に考えていること ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす7つの黄金法則

 その1 頭が悪くなる瞬間、頭がよくなる時間
 その2 頭のよさを決めるのは「だれ」だ?
 その3 なぜ、コンサルは入社1年目でもその道30年の社長にアドバイスできるのか?
 その4 頭のいい人は、論破しない
 その5 「話し方」だけうまくなるな
 その6 知識が「知性」に変わるとき
 その7 承認欲求をコントロールできる者がコミュニケーションの強者になれる

第2部 一気に頭のいい人になれる思考の深め方 ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法

 第1章 まずは、バカな話し方をやめる ――客観視」の思考法
 第2章 なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか? ――「整理」の思考法
 第3章 ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう ――「傾聴」の思考法
 第4章 深く聞く技術と教わる技術 ――「質問」の思考法
 第5章 最後に言葉にしてインパクトを残す ――「言語化」の思考法


【取り上げられた本】
頭のいい人が話す前に考えていること
 安達裕哉 著

<内容紹介>
どれだけ考えても、伝わらなければ意味がない。でも、話し方のスキルだけでは、人の心は動かせない。コンサルで叩き込まれたのは、人の心を動かす、思考の「質」の高め方でした。本書は「頭のいい人」が何をどう考えているかを明確にし、誰でも思考の質を高め、「頭のいい人」になれる方法を伝授します。