あなたにとって民主的とは?
DPI企画 デモクラシー・ダイアローグ「あなたにとって民主的とは?~対話へのお誘い」にむけて
ロシアとウクライナの戦争はデモクラシー、民主主義という言葉を意識することにならざるを得なくなった。
元首相の死亡事件は、テロという手段が使われたこと。また政治と宗教団体の癒着という関係が露呈されることになり、本当に日本は民主主義国家と言えるのだろうかという疑問をもっている。
民主主義とはなんだろう。日本が民主主義国家と言いながら、個人の自由や社会集団の自立性を認めず、個人の権利や利益を国家や組織全体の利害と一致するように統制を行う全体主義的な面が強くあると感じている。
個人の主張をアピールすることよりも、今は下火にはなったとはいえ、家という共同体、地域、地区における共同体、会社などの共同体、組織の意向、方針に従うという気持ちが大きい。個人の自由は尊重しているといいながらも、共同体、組織、ヒエラルキーが存在しており、そこに従う、迎合するという意識が強く、従わなければ遠ざけられ、場合によっては無視、孤立させられてしまう状況にある。嫌でもおつきあいせざるを得ないというのは誰しも経験していると思う。
今回のDPIの趣旨がよくわかっていない自分であるが、オープンダイアローグを学んでいるところで、対話を展開することにおいて、また、外国の講師、人の話、思想に触れることでデモクラシーという言葉をとても多く見受ける経験をしている。
対話というのは民主主義を実現するということだと。特にDICO(ダイアローグ・インターナショナル・カンファレンス・オンライン)では多く主張されたと感じている。
なぜ、民主主義の実現には対話が必要とされるのだろうか?
今回、民主主義の定義を旧教科書から読み直す機会になった。
民主主義の根本は、もっと深いところにある。それは、みんなの心の中にある。
すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神である。
人間の尊さを知る人は、自分の信念を曲げたり、上司の口車にのせられたりしてはならないと思うであろう。
同じ社会に住む人々、隣の国の人々、遠い海のかなたに住んでいる人々、それらの人々がすべて尊い人生の営みを続けていることを深く感ずる人は、進んでそれらの人々と協力し、世のため人のために働いて、平和な住みよい世界を築き上げて行こうと決意するであろう。
そうして、すべての人間が、自分自分の才能や長所や美徳を十分に発揮する平等の機会を持つことによって、みんなの努力でお互の幸福と繁栄とをもたらすようにするのが、政治の最高の目標であることをはっきりと悟るであろう。それが民主主義である。そうして、それ以外に民主主義はない。
したがって、民主主義は、きわめて幅の広い、奥行きの深いものであり、人生のあらゆる方面で実現されて行かねばならないものである。
民主主義は、家庭の中にもあるし、村や町にもある。それは、政治の原理であると同時に、経済の原理であり、教育の精神であり、社会の全般に行きわたって行くべき人間の共同生活の根本のあり方である。
それを、あらゆる角度からはっきりと見きわめて、その精神をしっかりと身につけることは、決して容易なわざではない。複雑で多方面な民主主義の世界をあまねく見わたすためには、よい地図がいるし、親切な案内書がいる。
これからの日本にとっては、民主主義になりきる以外に、国として立って行く道はない。
これからの日本としては、民主主義をわがものとする以外に人間として生きていく道はない。それはポツダム宣言を受託した時以来の堅い約束である。
〈民主主義(1948年~53年)中学・高校社会科教科書エッセンス〉
どのように民主主義についての対話をすすめていくか
参考)
政治について話そう!
著者 スウェーデン若者市⺠・社会庁発⾏ 第⼀版 2018年8⽉
訳者 轡⽥いずみ・リンデル佐藤良⼦・両⾓達平公開 2020年3⽉
本書の翻訳は、スウェーデン若者市⺠社会庁
デモクラシーの基盤となっている人権の尊重と、基本的な民主主義の価値を伝え、根付かせること(skollagen 1 kap. 4 §)
何について、どのように、なんのために
民主主義を教えることは、民主主義とは何かを教えることだけでなく、実践で示すことでもあります。(Skolverket, 2013b) 学校の「民主主義のミッション」は、
何について(om)、
どのように(genom)、
何のために(för)、
という言葉で説明ができます。
人々は、対話などの民主的な方法によって民主主義や政党の役割を学ぶことで民主主義についての知識を身に付けます。
政党とのかかわりについては、
何について(om)、
どのように(genom)、
何のために(för)、
のすべてを網羅しています。
・教育は、基本となる民主的な価値と基本的人権を
-人類にとっての不可侵性
-個人の自由と統合
-あらゆる人の平等の価値
-性の平等
-人々の連帯
とみなし、それに沿って設計されなければならない。
「民主主義のミッション」の実践に対する総合的な見解を、どのようにしたら作ることができるだろうか。
「基本となる価値観についての学習」や、民主主義の仕組みを浸透させるために、今どのような取組をしているのか、またどのように取り組くんだらいいのだろうか。
対話の導入
「基本となる価値観についての学習」や教育においては、対話が中心的な役割を果たすことになります。
対話は、民主主義に必要なものですし、学校の民主主義と民主的な市民を育てるために重要な役割を果たします。
学校教育庁(Skolverket 2013b)によると、「様々な対話の方法は、民主主義の資質・能力、様々な話題や問題について考える力を鍛えます。取組の全体に基礎におく価値観を埋め込むためには、様々な形態による対話が可視化されている必要があります。」
様々な科目を教えることとあわせて、民主的な形式による対話は生徒の
・批判的思考力
・抽象的な考え方や価値を探求する力
・他の人の考え方に耳を傾ける力
を養います。
探求的な対話は、「民主主義のミッション」に取り組むための方法です。同僚と「民主主義のミッション」に取り組むための方法を再検討する話し合いの場でも教室でも、同じことです。またこれは「民主主義のミッション」を、教育に統合するための方法でもあります。
(Skolinspektionen 2012, Skolverket 2013b)
民主的な対話の方法
政党が来校するからといって、学校で行われる対話を実際の政治の場で行われる形式に合わせる必要はありません。学校でどのように政治について話し合うかは、教職員としてあなたが決めればいいことです。学校の教育者として、政治のディベートや討論に限らない様々なやり方を試してみましょう。
熟議
熟議の場においては、自分が意見を表明して塾考するだけではなく、他の人にも意見と見解を表明して塾考する機会があります。熟議は、教える方法ではなく、参加者の主体的な取組や、「自分にも関係していると感じること」にその特徴があります。熟議の対話の場では、参加者が互いを理解し合うことに努め、議題が浮かび上がる共通の想いがある場にしましょう。
哲学的な対話
哲学的な対話というのは、誰かが正解を与えることがなく、傾聴し合い、共に考えて推論をしていくやりとりです。対話は、ある出来事や文章を共有してから行われます。生徒に何に興味を持ったか、あるいは何に違和感を感じたか考えてもらい、交互に二人で話し合ってみること。考えが行き詰まったら一度、対話を止めて、対話がどうだったかにについての「メタ対話」をしてみましょう。
そこから何を学びましたか?何を発見しましたか?
哲学的な対話において重要な概念は、類似性、差異、定義、規則、対称性などです。これらの概念やその他の概念で対話の振り返りをしてみましょう。
自分に問いかけてみよう
・あなたにはどんな経験がありますか?
・どんな民主主義の価値を持っていますか?
・どんな政治的な属性を持っていますか?
・どのような質問をすることが、自分にどのように影響を与えますか?どんな意見を持ち、特に強調したいですか?
・あなたが話したことや、挙げた具体例、投げかけた質問で、知らずの間に生徒を傷つけてしまったことはありますか?
同僚との話し合いにおすすめの質問
・どんな価値が職場にはありますか?それが民主主義の取組にどう影響を与えていますか?
・教職員の政党への所属が、学校での政治の取り扱いにどう影響を与えますか?
・学校で政治を扱う取組に、それがどう影響していますか?
・あなたはどんな人ですか?何があなたの規範と価値を特徴づけますか?それが学校での対話の場にどのように影響を与えるでしょうか?
「学校で民主主義を作るために」
(Lodenius 2012) を著したAnna-LenaLodenius は、とりわけ外国人恐怖症と人種差別についてあえて話し合うべきであると主張します。彼女は以下のようにアドバイスをしています。
・率いる
もし暴力的な意見が学校でみられるようになったら、学校で集会を開いてそのことについて話し合う場を作ってみましょう。教室、授業、学級会、職員会でも話し合ってみましょう。そうすることで、学校で発言された民主的でない意見は、無視されることなく、真剣に受け止められるのだと示すことができます。最初に主導した人は、話す方法と内容を決めることもできます。
・質問をする
それが本当の主張で、言いたかったことでしょうか?例えばそのグループについての情報は事実で、何に基づいているのでしょうか?
・公平である
すべての人が平等に扱われ、尊重される必要があります。差別的な発言をした人であってもです。発言者について話すのではなく、発言した内容について話しましょう。
・傾聴して反対意見を取り上げましょう。傾聴する人は、反対意見にも耳を傾けるものです。
・偽りを見破りましょう
人種差別、外国人差別的なメッセージは、ある集団についての嘘を伴う場合が多いです。事実を見極め、性、社会階級、民族的帰属、身体障がい、性自認、性的指向についての偏見を強める嘘を見破りましょう。
・恐れない
備えあれば憂いなしです。話し合うことは怖いものですが、回数を重ねることで実施もしやすくなり、他の人による開催も促します。
・辛抱強くあろう
意見は話し合っても変わるとは限りません。ひとつの過程にあるとみなしましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?