亡き婚約者からのギフト

日本に住む日本人女性の内
どれくらいの人が生涯の中で
「愛してる」と直接、男性から言われた事が
あるだろう？

そんな事を考えながら
2020年4月6日　月曜の11時を私は、
公園の桜の花びらが舞い散る中で日向ぼっこをしながら思った。

私は、ギニア人夫と2016年夏に33歳で結婚した。
私の人生で、直接「I love you」と言葉で伝えてくれた
唯一の人だ。

1月30日の早朝、空が朝白くなる日が昇り始める頃
最愛の祖母が天国へ行ってしまった。
彼女の死をきっかけに、私は18歳まで暮らした富山県での時間を生まれて初めて振り返った。

それから、私が20歳の冬に交通事故で亡くなった、
同棲していた彼との時間をはじめて振り返った。

彼が亡くなったあと辛さから逃げたくて
蓋をしたまま一度も向き合ってこなかったままだった。

彼とは私が高校生の時に出会って。
多くの「初めて」を教えてくれた彼は年齢が、
ひと回り年上。
当時の私には「遠い大人」な公務員の彼氏だった。

だから、当時、彼に子供扱いされる口調や接し方が
すごく鼻についたし、私は全然素直になれなかった。

彼が亡くなったあと、今もずっと悔やまれるのは
私に素直さがなかったこと。

彼が残した同棲していた家の合鍵と
自衛官だった当時の私宛に送ってくれた宅急便に
同梱してくれた手紙。

「愛してます」と最後に書かれた、その手紙。
彼の声で、直接そんな類の「彼の思い」を聞いた事はないまま離れ離れになってしまった。

私は、夫と出会うまで9人の男性と付き合った。
公務員彼氏が亡くなったあと、
自分から人を好きになるまで、3年掛かった。

4人目の彼までは、全員日本人。
5人目はイタリアからの帰国子女。
6人目以降は、全員別々の外国籍の男性だった。

自分の思いを「察してもらおう」「行動で示そう」じゃなくて。
声で、言葉で伝えてくれる人に惹かれる様になったのは
婚約者の死がキッカケだったんだって、
実は最近、そんな自分の傷に気が付いた。

だから夫との縁も、ずっとずっと辿ったら
20歳の時に失った人の存在に行きついた気がした。

スティーブ・ジョブスの有名な言葉に
「点と点が線になって面になる」って言葉がある。

ある時に自分の人生で蒔いた種が
どこで発芽して、どう成長していくか？

誰にも分からない。

私の大好きな曲である
中島みゆきさんの「糸」って歌にもつながる。

「廻り合わせ」って本当に美しい日本語の１つやな。

公務員彼氏との時間を振り返る時間の中で
私は自己肯定感と自信を沢山得ることが出来た。

当時の10代の私には
見えなかった、気が付けなかった
彼からの絶大な愛情と信頼を注いでもらっていたんだと
17年経って、やっと理解できたことが切なすぎるほど
いっぱいあった。

ギニア人夫は、今コロナウィルスの影響で
アフリカから日本に戻れずに
モロッコ国際空港での足止めを食らっている。

いつになったら戻れるのか目途は経っていない。
けれど、結婚して離れ離れの時間を過ごしてみて
初めて見えるもの、感じる事もいっぱいある。

公務員彼氏によって、今のタイミングで
ギニア人夫に対して本質的に伝えなきゃいけない事
避けずに向き合わなきゃならない事も
教えられた。

公務員彼氏が亡くなったあと
「もう結婚しない」って思っていた私。

「点と点が線になって」今の夫との結婚に至った。
ギニア人夫は大使館で働く公務員として
私と出会った。

「廻り合わせ」って本当に面白い。