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「もう他人だから」




高3の冬、違う大学に行く彼に言われた一言


卒業式までまだ期間があるのに言われた一言



私達は同じ大学に行くと口約束をした


それなのに彼に黙って自分の道を優先させた


自分でも最低だと思うし嫌われるのは仕方ない
でも…流れで付き合ったから正直別れるぐらい別にいいと思う彼氏だった








「ちょっと来てくれる?」



そうクラスメイトの女子達に呼ばれた

腕をガッチリ掴まれたまま屋上に続く階段へと連れて行かれる

これで3日連続

言われる事は分かってる




「なんで学校来れんの?」

「卒業式まで来んなって言ったよね」

「彼に酷いことした自覚ないんだね」




罵詈雑言を私に浴びせ言いたいことだけ言って去っていく

彼女達に何の迷惑はかけてない

それなのに……でも別に良い 
大学に行けば物理的にも他人だから

私は一瞬の放心状態から抜け出し教室に戻ろうとする



ガチャ


背後の屋上への扉が開き



「お前邪魔」



ブレザーのポケットから色褪せた文庫本が少しはみ出した学年1の秀才の男子にそう言われた


私はすぐに頭を下げて教室に戻ろうと足を早めるがその男子も後について来た


少し怖くなって私は『なにか用ですか?』
そう聞くと


「お前じゃない」


無愛想な声で返って来た

クラスは違うし教室まで来るまい…



……その男子は教室にまで来た

私はもう一度『なにか用ですか?』
そう聞こうとすると


「おい、そこのブス」


その男子はさっきまで私に罵詈雑言を言っていた女子達に近づいて行った



「なに?ってかブスって私?」



そう言った女子に


「お前ら以外に誰が居るんだよ」


もちろん言われた側は不機嫌な顔をしたが
その男子は笑っていた



「単刀直入に言うけど屋上近くでギャーギャー雑音で喚くな、読書の邪魔なんだよ」



最初から私の為じゃないのは分かってた
でも、読書の為に人にキレる人は見たことない

なんならイヤホンして自分の世界に浸ればいい

それもしないのはただのワガママだ


でもその女子に


「…分かった」


そう答えさせて教室を去っていく


たぶん私の知らない所では凄い人なのだろう



ピタッ


『え?』



何故がその男子は私の前で立ち止まった



「お前も連れて行かれるなら別の所でイジメられろ迷惑だ。それに言い返すキャパねぇなら泣いて女子力見せれば男子が助けてくれるぞ」



さっき見せた笑顔と同じ顔をこちらに向けた



『な…なにその言い方』


「他人の人生だから知らねーけど、もっと頭使え」



私は心の中で『お前は言葉遣いを学べ』なんて思ったが口には出さなかった





その一件以降私は何故かその女子から呼び出しを喰らう事はなく卒業した






『今日から新生活だ〜!』


わざわざ口に出さなくても良い言葉を口に出して喜びを表現する大学初日



何故か見たことのある背中を見た


突如として振り返ったその男子は


「お前もここか」


言葉遣いのなってないあの彼だった



『確か□□君だよね……なんでいるの!?』

「今日からこの大学だから。
それ以外でここにいる訳ねーだろ頭使え」



やっぱり彼だ



『そう言う意味じゃなくて□□君程の頭の良さがあればもっと上の大学入れたでしょ』



自分で言ってて恥ずかしい…




「仕方ねえだろ、ここの教授が俺のやりたい事の第一人者なんだから。それ以外でこんな2流大学来ねえよ」



こんなに私と違うのに私と同じ志を持った彼に興味を持った



『やりたい事って?』


「なんでお前に話さなきゃいけねんだよ」



相変わらずだが彼の言葉は一理ある



『じゃあ私が先に教えるからその後教えてくれない?』

「男の尻でも追いかけて来たんだろ?」



前に私に見せた笑顔をまたしている


この男は私の何を知ってるんだ!



『ゴホン…私もやりたい事があってここに来たの!』

「へぇー……興味ねぇ』




そう言ってそそくさと去って行った




『本当になんなのアイツ!』



でも、すぐに彼がここに来た理由を知る事になった

それは彼が新入生首席として代表挨拶をしていたからだ




私は入学式が終わってすぐに彼の背中を追った




ハァ…ハァ…



『待って!』

「またお前か、暇だな」

『さっき言ってたのって本当?』

「さっき?…あぁ紙媒体の保存方法の研究がしたくてこの大学に来たってヤツ?」

『うん』

「本当だよ、わざわざ代表挨拶で嘘つく訳ないだろ。頭使え」

『……うん』

「やけに素直だな」

『だって…』

「私と同じだから…か?」



その言葉にビックリした私は今どんな間抜けヅラを彼に晒しているのだろう



「フッ…お前の元彼はバカだよな「もう他人だから」って言っててさ、そんなの最初から他人だろっての」



私は思い出す…嘘ついて…フラれたあの時を

その日私がいたのは…



「フラれるなら屋上以外にしろ」



すべて彼に聞かれていたんだ



「家族以外の人間はすべて他人だ、どんなに好きな彼氏だろうと結婚するまでな。だから、俺はお前の決断を当たり前だと思ってる」



こんなに私の欲しかった言葉をくれる他人がいるなんて



「ただしどんな決断をしてもお前の手柄だし失敗したら責任は自分で取れ」


こんなに人の彼が私の心を理解してるなんて信じられなかった



「俺はお前の生き方好きだけど」



こんなに興味を持てる男の子がいたなんて



「興味ないけど」


『一言が余計!』


「まぁ…でも結末は気になるかな…」




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