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偶然が運命になるには行動が大事です 10







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息子:まだお兄ちゃん寝てるの〜?

奈々:疲れてるみたいだから起こさないであげてね?

息子:分かった〜!




○○は冬眠と言っていいほどの眠りについていた


それもそうだ、ボツにされたのを含めると4日間も寝ずに机に向かってたのだから




大樹:ここ俺の家なんだけどな〜

奈々:弟子なんでしょ?
最後まで面倒見なさいよ。

大樹:手の掛かる弟子だ…苦笑




ピンポーン




奈々:誰かしら。

大樹:俺が出る。



大樹はモニターに映る人物を見るや否や



大樹:入っていいよ。



そう言って家に招き入れた



奈々:いらっしゃい。

飛鳥:○○は?

奈々:第一声がそれ?笑

飛鳥:……お邪魔します。苦笑

奈々:どうぞ。笑

飛鳥:それで○○は?

奈々:家に帰って来ないから不安にでもなった?

飛鳥:それもある…でも理由は分かったから…

大樹:飛鳥だって今撮影中だろ?

飛鳥:うん。だけど寝る時間はある。

奈々:だとしても心も休めないと。

飛鳥:だから来た。

大樹:○○はいつから飛鳥の精神安定剤になってたんだ。笑

奈々:前からでしょ?笑
○○なら大樹の部屋で寝てるよ。

飛鳥:ありがとう。見てくる!



飛鳥が小走りで○○のいる部屋に向かう

その背中を見ながら大樹も座ってた椅子から腰を上げた



大樹:ハァ…俺もそろそろ本腰入れるか…

奈々:珍しくやる気ね。笑

大樹:ため息ついてるのが見えないのかな?

奈々:ため息はいつもでしょ?
でも本腰入れてなんて単語大樹から初めて聞いたから。

大樹:…さすがっすね!苦笑

奈々:プレッシャー?

大樹:だね。 
あんな台本の続きを書かないといけなくなるとは微塵も思ってなかったからな。

奈々:そんなに凄いの?

大樹:正直…万人受けはしないだろうけど…

死ぬまでに一度でも書ければその時点で天寿全うしたって言っていい脚本だな…

奈々:!!





○○:…………………


寝息すら聞こえないほど深い眠りについている○○

状況を知らない人が見たら救急車を呼んでるかもしれない




飛鳥:○○…



だからこそ名前を呼びながら飛鳥が頬を撫でても起きる素振りもない


飛鳥:…○○の書いた台本読んだよ。

凄かった。
登場人物のセリフが本当にそこにいるような…憑依してるような言葉選びに震えた

震えたって冗談じゃないよ?
鳥肌が立ったんだから。

でもそれを演じなきゃいけない私は…○○が伝えたい想いを視聴者に伝えられるか不安しかないの…

だから…来ちゃった。




飛鳥は涙が溢れそうだけど

溢さない

それを拭ける相手が目の前で眠ってるから




飛鳥:こっちは○○から出された宿題で困ってるのに馬鹿みたいに気持ち良さそうに寝ちゃって…

それに……


○○:………それに?

飛鳥:キスシーン………へッ?

○○:なに腑抜けた声出してんだ 笑

飛鳥:だって…ウルウル

○○:泣くな 笑



飛鳥は涙を流した



○○:ほらほら美人が台無し…



○○は飛鳥の涙を人差し指で拭う

それでも拭っても拭っても出てきた



○○:泣いてても美人だしいっか。


拭うのを早々と諦めた○○


飛鳥:良くない…明日撮影だから腫れちゃう…

○○:それなら泣き止んでくれよ 苦笑
別に死んでた訳じゃないんだから。

飛鳥:知ってます!

○○:それで忙しいのになんで来たんだよ。
キスシーンに文句言いに来たの?

飛鳥:………それもある…



○○が書いた8話には飛鳥のキスシーンがあった



飛鳥:……いいの?

○○:浮かんだものを書いたらそうなったんだよ…

飛鳥:○○が頑張って書いたものなんだから
嫌なんて言えないね…




物語内の好き同士の男女が見つめ合って何もしない…そんなの違和感があった




○○:もうそのシーン撮ったの?

飛鳥:まだ…でも明日か明後日に撮ると思う…

○○:そこまで寝てたかったな…ボソ

飛鳥:…………

○○:…………



見つめ合った好き同士の2人…


それは台本の中と同じ。



自然と触れ合う唇と唇



…チュ……クチュ…ゥンッ……



飛鳥:…フゥ………しちゃったね///

○○:…///

飛鳥:リハーサルだよ?笑

○○:でも…こんな熱いキスをやるって
書いたつもり無いんだけどな…

飛鳥:じゃあ…テイク2する?///

○○:///








○○が書いた第8話は世間で大きな話題になった




良い意味でも……悪い意味でも…笑





○○:ハァ〜

大樹:なに飛鳥のファンと同じみたいにキスシーンでショック受けてんだよ 笑

○○:違います!

奈々:絶対そこでしょ。

○○:絶対違います!

大樹:俺と熱いキスした飛鳥が…画面の向こうで……

○○:!!

奈々:私達見ちゃったの 笑

○○:…あ…あれは俺が無理矢理しただけで飛鳥は…



○○は焦りながら全力で否定したが

その様子さえも微笑ましいと思いながら優しい笑顔を見せる夫婦



奈々:そんな嘘私達に必要ないわよ?

大樹:そうだぞ。
俺らが誰かに漏らすとか思ってんの?

○○:…いや。

奈々:付き合ってるの?

○○:そんな訳ないです!

奈々:お似合いなのにな〜。

大樹:本当にそう。

○○:ファンの方に怒られちゃいますって。

大樹:秋元康にもね。

○○:……………

奈々:秋元先生に睨まれたらこの業界で仕事するの大変だよ〜 笑

○○:……俺だけなら別にいいですよ。



それは心からの言葉だった
駆け出しの○○と既に一流の飛鳥ではダメージが違う

そこを冷静に考え、そして飛鳥を守りたいと熱く心に決めていた



奈々:そっか…そんなに好きになっちゃったんだね。

○○:……書いてる時…
ずっと飛鳥の顔が浮かんでて。

あれが書けたのは飛鳥のおかげなんです。

大樹:って事は2人がくっついたら神作品連続
だ〜!



そうおちゃらけた大樹はすぐに真顔になる



大樹:でもさ…○○って飛鳥と恋愛する気がないよね?

奈々:!?

○○:………バレてましたか。

大樹:相手がアイドルとはいえ
あんなに好き好き全開の飛鳥にキスの1回…

奈々:2回だよ。笑

○○:回数はいいです///

大樹:それしかしないんだもんね。笑

○○:……………

大樹:恋愛は一度でもスタートすれば
ゴールは結婚か別れか…その2択。

奈々:それって普通だよね?

大樹:そう。
多くの人は結婚を目指して恋愛してる、それが幸せへの道だと思ってるから。

でも、○○の過去を考えれば結婚も地獄だって考えてもおかしくはない。
それなら恋愛すらしなくない?

○○:……………

大樹:…○○は飛鳥と向き合うのが怖いんでしょ?

○○:…怖いです。
でも、飛鳥がいないと…

大樹:書けるか不安。
もう既に○○の心の中で飛鳥という存在が大きくなりすぎたから。

○○:……………

大樹:○○にとって小説とか台本を書くってどう言う事なの?

○○:俺にとって感情の出しどころと言うか…

大樹:じゃあ覚悟はまだない感じ?

○○:覚悟?




大樹は○○にある昔話をした




大樹:俺はデビューしてからずっと上り坂のイケイケでね。
書けば視聴率は取れるし内容は話題にもなって天狗になってた。


でも俺がまだ奈々未と出会う前、ある刑事ドラマの最終回の台本を書き上げたぐらいに来た電話で俺は気付かされたんだよ。


その電話内容は今書き終えた刑事ドラマの過去回を見た少年がその内容に影響されて人を殺したと警察に供述したっていう内容だった


○○:…それ知ってます。
一時期凄い話題になったましたね。


大樹:だよね。苦笑
そのせいで俺は世間で炎上してたけど
その頃の俺は自分の手を離れてから起きた事は全て関係ないぐらいにしか考えてなかった

自分の作品と心中する覚悟が無かったんだよ


○○:…………


大樹:それから半年後にある出版社の授賞式でたまたま秋元康に会った。

奈々:BOSSキャラ登場 笑

大樹:その秋元さんに言われたんだ
「今度ウチのアイドルが出るドラマの脚本を書いてみないか」って。

その頃の俺はその事件の事もあって世間のイメージは最悪。
今までチヤホヤしてた人達もいなくなって
仕事も少なくなってて、だからありがたくその仕事を受けさせて貰った。

でもその仕事をやるにあたって条件を付けられたんだ。


"現場に行く事"


最初は言ってる意味が分からなかった。

でもその事が俺を大きく変えた

その時に見た自分の書いた台本通りに撮ろう必死な撮影スタッフの頑張り
そして下手くそな演技ながらも台本通り頑張ってる子を見て…



奈々:私の過去何回刷るつもり?

大樹:○○にもあの演技見てほしい!
多分○SUTAYAにあるから!

奈々:止めて〜///

○○:今だから言いますけど…
リアルタイムで見てました。苦笑

奈々:///




大樹:俺はそんな頑張ってる奈々未を安心させたくて。

「演技力は物語に説得力を持たせるだけなんだから下手くそでもやれ」って言った。

もちろん奈々未に対しての言葉ではあったけどそれは自分自身に対しての覚悟になった



もちろんその少年のやった事は許されるものではないし、犯罪を助長させるモノを作った覚えはない。

でも少年や亡くなった方の人生を変えたのは俺の文章であり言葉だ

だからその全責任を負う

でもその負の評価を覆すには誰か1人でも多くの心を救う物語を一生作り続けないといけないって覚悟を持った。

そんな覚悟が○○もあるか?


○○:………ないです。


大樹:俺もデビュー仕立ての奴にそこまでは求めない。
でも飛鳥という存在に甘えて逃げて良い世界じゃない事だけは分かって欲しい。


○○:はい。

大樹:それに既に君の書いたものは飛鳥の人生を変えた。だからこそその責任も取るべきだって思うけど?

○○:………………

大樹:固い話しはここまでにして。
実は今回お手伝いを頑張ってくれた○○に飛鳥から独り立ちするのとさっき俺が言った覚悟
両方得れるチャンスをプレゼントしたいと思いま〜す。

奈々:いつの間にそんなプレゼント用意してたの?

大樹:まぁ詳細を言うと俺が用意したんじゃないんだけど…

○○:?

大樹:どうする?
飛鳥の為にも飛鳥なしで書ける男になりたい?

○○:…………はい…

大樹:じゃあ今、俺らがやってるドラマが終わったらアメリカ行ってきて。

○○:アメリカ?

大樹:そう。アメリカ。


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