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【卒業生インタビュー】メディアアーティストと大学院生の「二足のわらじ」生活になるまで。

デジタルハリウッド大学(DHU)のカリキュラムの特徴として、1学部1学科の中で、複数の専門科目を自由に組み合わせることができることがあります。

3DCG、Web、ゲームプログラミングなどの基礎知識を「講義」で学びながら、「演習」授業で実際に手(PC)を動かしながら学びを深める。他大学では専門分野の学習は2年次以降に本格化することも少なくありませんが、DHUでは1年次からこうした実践的な授業が行われています。

そのため、当初学ぼうと考えていたものとは別の専門分野に興味を持ち、最終的に入学前にはまったく想定していなかった進路を選択する学生も多くいます。入学後の興味・関心によって、1学部1学科の枠内であれば自由に専門分野を切り替えることも可能なのです。

今回インタビューした川口 萌花(かわぐち もか)さんも、そのひとり。1〜2年次は映像制作を中心に学んでいた川口さんでしたが、2年次で体験した「起爆展」(特待入学者向け特別プログラム)で、メディアアーティストとしての道を歩み始めました。

今回のnoteでは、そんな川口さんの学生生活、就職先であるPARTYとの出会い、そして社会人兼大学院生としての現在の様子について伺いました。

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川口 萌花(かわぐち もか)
1999年東京都生まれ。2020年度にデジタルハリウッド大学を卒業。デジタルハリウッド大学院、クリエイティブ集団「PARTY」所属。本大学の特別講義でPARTYに出会い、2020年7月から加入。 現在はプロジェクションマッピングやメディアアートを中心にインタラクティブな作品制作を行っている。PARTYでの主な仕事に、RADWIMPS「SHIN SEKAI」などがある。
PARTY
未来の体験を社会にインストールするクリエイティブ集団。アーティストのパフォーマンスを独自の世界観で楽しめるヴァーチャルライブ「VARP」、雑誌『WIRED』日本版のクリエイティブディレクション、成田空港第3ターミナルの空間デザインなど、最新テクノロジーとストーリーテリングを融合した数多くの実績がある。さらにアーティストとして森美術館(未来と芸術展)にて「2025年大阪・関西万博誘致計画案」を展示、アートと個人の関係をテクノロジーで変革する「The Chain Museum」、サッカー観戦をDXする「Stadium Experiment」など新規事業開発も行なっている。

「一方通行」から「インタラクティブ」へ

——DHU入学前は芸術系の高校で映像を学んでいたんですね。

そうです。DHUへの進学を決めたのも映像制作を学ぶためで、実際1〜2年生の頃は映像に関連する授業を積極的に履修していました。

進路を考えるきっかけになったのは、2年の特待生向けプログラム「起爆展」。その作品展示会で、プロジェクションマッピングにチャレンジしたことでした。

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▲川口さんが2年次に参加した「起爆展」(2018)

プロジェクションマッピングの制作を通じて、16:9(動画の画面比率)の枠に収まらない、画面から飛び出すような立体的な作品を作る楽しさを感じたんです。それ以降、落合陽一先生のメディアアートの授業を受けたり、卒業制作で体験型の作品を作ったりして。見に来てくれた人の行動によって、双方向的に味わえるような作品の制作に移行していきました。

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▲川口さんの卒業制作「Obsession」。来場者が真っ白な空間に入り、ドアスコープを覗くことから作品の体験が始まる。

——では高校から大学2年生にかけては映像、それ以降はメディアアートを中心に学んでいったんですね。

はい。大学では映像やアートなど、ビジュアル面を中心に学びましたし、現在の勤務先でもお客さんやユーザーが目にできるCGの制作などを担当しています。一方でそういった作品を動かすためのシステム制御も仕事としてあって、数学的な思考が必要になります。

DHUでも数学やプログラミングの授業はあったのですが、映像やメディアアートを仕事にしたいから関係ないや、と思って。今は先輩から教えてもらったり、自力で勉強しながらなんとかこなしていますが、そういう授業ももっと受けておけば良かった!と後悔することもありますね。

クリエイティブ集団「PARTY」との出会い

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——川口さんにとってDHUで生活した期間はどんな時間でしたか。

DHUを選んで良かったな、というのはずっと感じていることです。たぶんDHUに進学していなければ、メディアアーティストとして活動していないだろうし、ぜんぜん違うことをやっていたと思います

DHUにはその業界の最前線で働いている先生が多く、落合陽一先生をはじめ面白いことをされている先生が身近にたくさんいます。その方たちの話を、4年間さまざまな場で聞けたのは良い機会でした。

周りの学生も面白いことをやろうとしている人ばかりで、人を巻き込む力もあり、みんながいたから創作活動を続けることができたのだと思います。

そんなたくさんの出会いの中でも、いま勤めているPARTYの特別講義に参加できたことが、自分にとってのターニングポイントになりました。

——PARTYの特別講義に参加しようと思ったいきさつを教えてください。

空間デザインやプロダクト開発、マーケティング、アート活動など、もともと面白いことをやっている会社だというのは知っていました。ちょうど落合陽一先生の講義を受けていたときに、学内でPARTYの特別講義があることを知ったんです。それで友達と「一緒に受けてみる?」と話したのがきっかけでした。

講義自体は毎回講師の方が交代でお話をするリレー形式で、クセが強い人ばかりだったのでどの回も印象に残っています。

——いちばん印象的だったのは?

ドイツで展示会をしている真っ最中だったメンバーと生中継をする時間ですね。ARを活用した立体的なオブジェクトを展示している様子を見せていただいたり、展示会の話を聞いたりすることができました。

当時は中国でCOVID-19感染症が拡大し始めて、ニュースで豪華客船の映像が流れているくらいの時期で、遠隔地から授業してもらったことはまだなかったんですよね。だから「ヨーロッパで展示会をしている人といま話してるんだ、めっちゃキラキラしてる!」というのが印象に強く残っています。

——そこからインターン生としてPARTYに加入されたんですよね。

最終講義が終わった後、インターンを募集しているのか聞くだけ聞いてみて、いつかインターン出来たらいいなと思っていたんです。そうしたら3ヶ月後くらいにオファーを頂いて。インターンを1年弱経験して、そのまま就職して今に至ります。

社会人兼大学院生としての生活

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——PARTYでの仕事について改めてお伺いします。

CGチームとしてはモデル制作、モーションキャプチャやUnreal Engineのデータ編集。テクニカルチームとしてはシステム制御などを行っています。

一般的に、入社したての時期は重要な部分を任されない企業は多いかもしれませんが、PARTYではインターン時代からチームの一員として戦力に数えてくれて、プロジェクトに関わることができました。

最近だと、RADWIMPSの「SHIN SEKAI」というバーチャルライブで、CGチームとして参加しています。

▲RADWIMPS「SHIN SEKAI

オンラインイベント「WIRED CONFERENCE 2021」では、カンファレンスの演出として、映像制作やシステム制御を担当しました。

登壇者の方には、3DCG空間で次世代型電動車椅子「WHILL」に着席していただいて、その車椅子と背景の映像の動きがリンクするようなシステムを組んでいます。

——すでに大きな仕事を任されているのですね。2021年3月の大学卒業後、就職と同時にデジタルハリウッド大学大学院にも進学されました。

大学院では、脳科学者で株式会社ハコスコ代表の藤井直敬先生のラボに入りました。そこで個人の創作活動や研究などを行っています。

PARTYは性善説で成り立っているような会社なのでコアタイムがなく、きちんと仕事をこなせるなら自由な時間に働いていい、という感じ。なので大学院との両立もできています。

いま携わらせてもらっている仕事はもちろん面白いのですが、会社以外のコミュニティや活動の場も欲しかったので、藤井先生や大学院の仲間とも一緒に作品を制作しています。

作品を見た人の中に生まれる感情こそがアート

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——PARTYでCGやシステム面を支えながら、大学院でご自身の活動もされているということですが、今後はどのような活動を考えていますか。

いま、個人で展示会の準備を進めているところです。メディアアートのインタラクティブ性は引き続き追求していきたいと思っています。

私が今まで作ってきた作品は解説や指示を提供せずに、ただどうぞって展示しているだけなんです。全員が同じものを受け取り、似たような考えに落ち着いてしまうのは面白くないじゃないですか。

メディアアートを体験した際の、その人の中に生まれた感情がアートだと思っているので、他の作品にはない揺さぶりや印象を与えられたら嬉しいです。

——デジタルフロンティアグランプリ(DHU内の優秀作品発表会)のインタビューで、「私の作品として記憶してもらうよりは、その人の感性に影響を及ぼしてしまうような体験を目指して作品を作った」とコメントされていました。

そうですね。「その人だけの体験」を生み出せるのが、メディアアートの良さだと思っています。

——最後に、DHUへの進学を検討されている方や、後輩であるDHU生へメッセージをお願いします。

自分がいまこの場に立っているのは、世渡り上手なところがやや影響していると思っています。大学では先生や事務局の方に頼みごとを受け入れていただき、自分のやりたいことをすくい上げてもらいました。

先ほど紹介した特別講義でも、PARTYの方に頼ることでインターンから就職までさせてもらっています。

自分の想いを伝えて周りの人を頼ると、ありがたいことに協力してくれる方は多いんです。DHUでもやりたいことがあれば全面的にサポートしてくれるので、自分ひとりで頑張ることも大切だと思いますが、周りの人を頼ってみるのも良いかもしれません。

——ありがとうございました!

川口さんが参加されたPARTYの授業のように、デジタルハリウッド大学では定期的に外部の講師をお招きし、普段の授業とは異なる特別講義を実施しております。詳しくは公式HPをご覧ください。

▼デジタルハリウッド大学公式HP
https://www.dhw.ac.jp/feature/lecture

▼デジタルハリウッドの卒業生のインタビュー
https://dhaa.jp/interview

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