インターンシップに踏み出す前に。「企業ゼミ」というキャリアサポートの新たな形
大学生の中には、企業でのインターンシップを始めて社会人になる準備を進めている学生がいる一方で、インターンとはいえ”いきなり現場で働く”ことに抵抗のある学生もいます。
そんな学生の社会への一歩をサポートするために、デジタルハリウッド大学(以下、DHU)では「企業ゼミ」を開講。キャリア開発支援の新たな形として、企業の人とコミュニケーションが取れる場を設けています。
企業ゼミとは?
企業ゼミとは、学内でインターンシップと同じような就業体験ができる、DHU独自のキャリアサポートです。新卒採用時における人材ミスマッチを解消し、学生・企業双方にとって有益な就職・採用を実現することを目的としています。
講師となるのは、企業で活躍しているクリエイター、ビジネスの最前線にいる社会人。9万人にもおよぶDHU卒業生のネットワークを活かした授業を行っています。
DHUの全学年が受講でき、通常の授業と同じように単位取得も可能です。ほかにも専門スクールや大学院などデジタルハリウッドが運営している別の教育機関の学生も参加が可能であるため、普段関わることのない社会人学生との交流の場になっています。
「企業のことを知りたい」と受講する学生が多数ですが、その中でも大きく分けると2つのタイプの学生がいます。すでに技術的な面に精通しており、より専門的な知識を深めるために現場の人から直接話を聞きたい人。その分野に関しては専門外だけど、これから学んでいこうと思っている人です。
企業ゼミには講義タイプと実践タイプの2つの授業があります。
講義タイプは入学したての1年生が参加できるよう春季や夏季に多く開催されますが、多くは実践タイプで、主にグループワークや創作活動などを行っています。
▲株式会社CyberOwl様による講義風景(2019年度)
アプリ・デザイン・サービスの設計など技術を問う企業ゼミがある一方で、1・2年生が参加できるよう、グループで企画やアイデアを考える企業ゼミも多くあります。
たとえば企業が普段抱えている課題や公開しているコンテンツをテーマに、グループで話し合い、プレゼン。そして講師の方から講評をいただき、企業に勤めている人がどんなことを考えて仕事をしているのか、その価値観に触れることができます。
身近に存在する商品やサービス、広告などの制作過程段階でどんな思いや意図が込められているのか、企業で起こっている内側を実践を通じて知ることができるのが「企業ゼミ」の醍醐味です。
■過去に実施された企業ゼミの例
・エン・ジャパン株式会社「就職活動と採用」
・株式会社キノトロープ「コンサルティング」
・株式会社CyberOwl「Web開発」
・株式会社博報堂プロダクツ「広告制作」
・株式会社ヴァンガード「ゲーム開発」
インテルの企業ゼミで学べる、クリエイターとして生きていくためのヒント
ここからは、実際に2021年度に行われたインテル株式会社(以下Intel)の企業ゼミについてご紹介します。講師は技術本部部長の安生(あんじょう)さん、入社5年目の菅原(すがわら)さんです。
「クリエイターってどんな仕事だろう」「クリエイターが得るべき技術的な知識とは」「クリエイターとデジタルテクノロジーはどのように関わっているのか」。このような疑問についてお話しいただきました。DHUの学生にとって今後の方向性のヒントになってほしい、という想いが込められた企業ゼミです。
企業ゼミを開講するのはIntelだけではなく、学生は複数の企業の中から選ぶことができます。その際に判断基準となるのが、授業の計画書であるシラバスです。Intelの場合、このような内容のシラバスが配布されました。
■到達目標
IntelのCPUが、PCの体験向上にどのように貢献しているかを理解する。その上で、これからのPCのあるべき姿やどのように活用するべきなのかを想像し、皆さんのデジタルクリエーション業界での創造的な活動のヒントになれば幸いです。
■対象学生
・最先端のPCに興味がある方
・PCをもっと活用したいと考えている方
・将来コンピュータを活用したデジタルクリエーションに何らかの形で関わりたい方
・コンピュータの知識があまりないが興味がある方
・Intelという会社に興味がある方
・コンピューティングが人々のライフスタイルを支えていると信じている方
■授業内容
・Intelの紹介
・CPUや半導体について
・Intelのクリエイティブ戦略
・グループワーク
ゼミの全体的な構成として、講義と実践のハイブリッドタイプになっています。ゼミの前半では、Intel製品のテクノロジーやクリエイティブ戦略について講義形式で紹介がありました。
将来コンピュータを活用してデジタルクリエイティブ業界を支えていくであろう受講生に向けて、今後クリエイティブの産業はどうなっていくのかをお話しいただきました。
安生さん
クリエイターの方と話していると、最近はクリエイティブのジャンルの垣根がなくなっているというのが私の印象。既存の価値を組み合わせることで新たな価値の創造、クリエーションにつながっていくと感じます。
ゼミの後半では、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使ってグループワークを実施。テーマとなったのは、「デジタルコンテンツクリエーションに使われているテクノロジーを思い浮かべる100本ノック」「登場したテクノロジーを組み合わせたクリエーションのアイデアの考案」などです。
そしてディスカッションが始まる前には、「人の意見は皆異なるため、否定せずに尊重して耳を傾けること」というグラウンドルールが設定されました。このルールの背景には、インテル株式会社のFairness (公平、公正性)を大切にする企業カルチャーが反映されています。
こうした前提が設けられたことで、新しいアイデアをポンポンと場に出しやすい雰囲気に。「空中ディスプレイ×ギター=本格的なエアギター」「ドローン×傘=手がフリーになる傘」「オノマトペ×AI解析システム=オノマトペで注文できるレストラン」など、既存の価値を組み合わせたアイデアが数多く生まれました。
安生さん
ひとりでアイデアを出すことも時には必要だけど、自分が出したアイデアが他者によってブラッシュアップされ、それに自分が刺激されて新たな発想が生まれる。チームで話し合うことのパワーを感じてほしいです。
企業ゼミだからこそ体験できる内容に学生からは次のような感想があがりました。
学生Aさん
自分の発言が尊重される場で、くだらないかもと思うアイデアでもたくさん投げると、これいいねと思いもよらない反応が返ってくることがあるから、アイデアをどんどん場に出すことの大切さに気づけました。
学生Bさん
クリエイティブは今までにないものをゼロから生み出すイメージだったけど、既存のものを組み合わせてできていると教えてもらったことが刺さりました。
学生Cさん
今までは与えられたツールで何かを作るということしか頭になかったので、世の中にはツール自体からモノづくりを始める人がいるのは頭にはなかった。
働くイメージがわずかでも変化するきっかけになれば
最後に、企業ゼミの裏側についてもご紹介。この企業ゼミを運営しているのは、DHUの学生の進路をサポートするキャリアセンターです。2012年からスタートした企業ゼミの運営を開始当初から支え、企業と学生を9年間つないできた座間味先生へ話を聞きました。
座間味 涼子(ざまみ りょうこ)
デジタルハリウッド大学キャリアセンター・マネジャー。GCDF-Japanキャリアカウンセラーの資格を保有し、学生のキャリア相談を担当。近年増えている留学生の就活相談などにも対応している。
——普段の授業でも、DHUの講師陣はデジタル産業において現役で活躍されている方が多く、実践的に学べる環境であると思います。それに加えて「企業ゼミ」として開講する狙いを教えてください。
企業ゼミは、通常の授業とは違ってスキルアップを主な目的としておらず、働くイメージを持ってもらうことを目的としています。インターンシップがお試しとして企業で働く体験ができるように、DHUの企業ゼミでは授業という慣れ親しんだスタイルで「企業」を知り、「働く」を体感できます。
普段関わる機会が少ない企業の方や社会人学生とコミュニケーションを取ることで、社会に出ることが劇的な変化だと思っている学生の抵抗感を減らしていきたいと考えて開講しています。
——企業ゼミはDHUの全学年が対象な上に、社会人学生も受講可能となると、入学したばかりの1年生が授業についていけないということはありませんか?
何か困ったことがあれば、いつでもスタッフに相談できる体制で、1年生でも参加できるプログラムになるように工夫はしています。
たとえば技術的なアウトプットが必要なゼミの場合、ソフトを触ったことがない学生がいるとすると、高学年の学部生や社会人学生と同じチームになってもらうケースがあります。逆に1年生のやる気が周りを巻き込んで議論が活発になるケースもあるため、お互いに補いつつ、1年生だからといってつまづくことはそこまで多くない印象です。
最後のプレゼンが終わったときには、学年の垣根がなくお互いに「頑張ったね」と称え合って、団結力が高まっている姿を見かけることがあります。同学年で受ける授業とはまた違い、この企業ゼミで新たな縁が生まれているグループもありました。
——座間味先生はこれまでにいくつもの企業ゼミをご覧になっていると思います。その中で学生の変化を感じる場面はありましたか。
企業ゼミで取り扱った内容について興味が湧いたり勉強を始めたりする学生や、受講したゼミの企業へインターンシップに行く学生は多くいます。2~4回で完結してしまう短期の授業であるため、期間内で大きな変化を遂げる学生ばかりではありませんが、彼らにとって、なんらかのきっかけになっていることは間違いありません。
——企業ゼミが入り口となって企業と学生を結びつけたり、新たな分野と学生をつないでいたりするのですね。
そうですね。受講した1,2年生がキャリアセンターのスタッフを知る機会にもなって、就職活動が本格的に始まる前に顔を出してくれることもあります。
キャリアセンターを「就職活動のときだけ利用する場所」と捉えてしまう学生も少なくありませんが、1年生のころからキャリアセンターに来てくれると、早い段階で顔を覚えることができ、学年が上がってから個別面談をする際にもコミュニケーションがスムーズになります。
進路を決める上で大切なのは自分で決断することですが、そのために情報を提供したり話を聞いたり、キャリアセンターとしてサポートすることはできます。企業ゼミもキャリアセンターも、ぜひ1年生のうちから活用してほしいですね。
デジタルハリウッド大学では就職に向けたサポートをしており、企業ゼミの開講はその一例です。キャリアセンターでは、産業界との強いつながりを活かして独自の求人情報を公開しています。詳しくは公式HPをご覧ください。
以上、企業ゼミのご紹介でした!
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