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新卒歯科衛生士就活に必要な[軸]の話

これから話す内容は一般企業で勤める方やベテランの医療職の方にとっては当たり前の内容かもしれません。ただ、これから就活を始める新卒歯科衛生士にどうしても知っておいて欲しい考え方ですので、新卒歯科衛生士学生で今就活をしようとしている読者の方はお付き合いいただけたら幸いです。

トピック
歯科衛生士と離職率
新卒歯科衛生士に必要な就活「軸」の話
新卒にエージェントとキャリアセンターは要らない説
あなただけの「歯科衛生士としての目的」を軸にした就活方法
就職面接の挑み方

さて、日本の新卒歯科衛生士のうち30%は3ヶ月以内に離職すると言われています。この離職率の高さの理由は一体なんなのでしょうか?新卒歯科衛生士は年齢にして21歳(ストレートで高卒から来た場合)。その若さゆえの判断力の無さや、「仕事」というものに対する考えの甘さなのでしょうか?それとも歯科医院の多くに、いわゆる体育会系の「見て覚えろ」的なパワハラも横行するような場所があるからでしょうか?  ケースによっては今挙げたようなケースのいずれかに当てはまる場合もあるかもしれません。事実、私自身も臨床実習のころ含め、かなりのパワハラを目にしてきましたし、受けたりもしました。ただ根本的に新卒歯科衛生士の離職率が高い原因はこういった歯科医院サイドの「古い体質」だとか新卒歯科衛生士ゆえの「仕事に対する考えの甘さ」だけが原因ではないと思います。 その本当の理由は、新卒歯科衛生士学生ひとりひとりの「就活」というものに対する態度と就活の方法に誤りがあるからと考えています。

「就活とは求人票の諸条件を見て自分の希望と合う条件の医院を探すことではない」 

こう学生が聞いたら、多くの学生は「は?じゃあなんなの?」と反応すると思います。 この言葉の意味することは「就活とは、あなたが近い将来になりたいと考えている歯科衛生士像に向かって働くことができる歯科医院を探すこと」だと思います。言葉を変えていうならば「給与」「勤務地」「福利厚生」といった、一般的な求人票で歯科医院側があなたに提示している条件があなたを満足させられるか?で決めるものではないということです。 本来あるべき就活とは、将来(近い未来に)「あなたが社会(歯科医院や患者)にもたらしたいと思っている貢献内容(言い換えれば業務内容)を存分に発揮できる環境(歯科医院などの勤務先)を探す」作業であり、決してあなたが歯科医院から「もらうモノ(給与や福利厚生)」を基準に探す作業ではないということですこの考えをわかりやすく説明している動画がありますのでこちらをぜひご覧ください(人生の目的論:utsuさん) 

就活模式図.001

「なりたい歯科衛生士像」「社会(医院、患者)にもたらすこと」をベースにした就活do and don't

ここからはDH新卒就活の上でやりがち、でもやってはいけないことを紹介します。
学校の進路担当教諭に面接先を探してもらう
求人サイトや求人票の地域、給与面などの条件面だけを見て面接の候補を探す
求人サイトのエージェントによる紹介機能経由で探す
大手エージェント主催の就活フェスに参加するなど
以上の4つが私がお勧めしない就活方法です。これらは「あなたが歯科医院から利益をもらうこと」または「あなたの将来のことなど1ミリも責任を持たない人間が自分の利益のために歯科医院を紹介する仕事(手数料ビジネス)」であり、歯科医院とミスマッチを起こす元凶です。 ※就活エージェントに関してはあなたを就職させれば多額の紹介料が歯科医院側から受け取れます。その特性上あなたがその職場で長続きしようがしまいが知ったこっちゃないので、いい加減な歯科医院を平気で紹介するのです。
本来あなたがとるべき方法は、まず就職先を探す前に「自分がなぜ歯科衛生士を目指したのか?」を振り返り、そこから「将来どのような歯科衛生士になりたいか?」を決めることです。 はっきりと言い切れるような歯科衛生士像が考えつかなければざっくりでも構いません。ここで重要なのは「自分がなぜ歯科衛生士を目指したか」や臨床実習や幼い頃からの生活を通じて感じたことなどの自分の経験から導き出すこと。なりたい歯科衛生士像はあくまで「社会へどのような貢献がしたいか」を表せるように設定することです(決して超有名な歯科衛生士になるとか、お金持ちになるみたいな自分に→矢印が向いたものではいけません)
そしてもう1つの条件が「達成可能なゴールがない』こと(先にあげた、お金持ちになる では年収いくらみたいなゴールがあるでしょうし、有名になる というのも雑誌に載るとか、ある程度のゴールが設定できてしまいます)。
この「なりたい歯科衛生士像」言い換えれば「歯科衛生士としての人生の目的」を決める作業はあなたが本当に納得いくまで考えてください。目安としてはその「なりたい歯科衛生士像」を両親や友達を面接官と見立てて話をして「なぜ?」を3回以上いろんな視点から質問を繰り返してもらい、相手もあなたも納得できる返事を続けて答えられるかどうかが、あなたが設定した、その「なりたい歯科衛生士像」が今のあなたにとって本当に嘘のないものか?判断する目安になると思います。ぜひ「なりたい歯科衛生士像」を仮決めできたら、ご両親やお友達に付き合ってもらい自分自身を試してみてください。(面接練習をすることも、あがり症の人には大切です)

「なりたい歯科衛生士像」を言葉にできたら

ここまでできたらようやく、就職活動の第二段階の始まりです。
ここまでの作業であなたが「歯科衛生士として何を、どう、社会にもたらすか」は決まっていますから、あなたが探すべき就職先の候補は「あなたのなりたい歯科衛生士像を実現もしくは近づくことができる場所」を探せばいいだけです。
(間違っても給与や福利厚生や勤務時間といった条件で探すことはないと思います。)

「なりたい歯科衛生士像」になれる職場探しの方法

ここからは実際に「なりたい歯科衛生士像」を踏まえた就活方法について、一例を紹介します。
手順1「なりたい歯科衛生士像」に近づける歯科医院(企業でも可)をキーワードで検索する。
手順2 検索にヒットした歯科医院(企業)のウェブサイトをくまなく確認する。特に医院の診療科目、医院の運営理念、院長紹介欄は必ず熟読する。
手順3 自分の「なりたい歯科衛生士像」と手順2で確認した内容が同じ方向を向いているか?言い換えれば、自分がやりたいと思っていることが、歯科医院の運営理念や診療科目、院長の考えなどと合致しているか?を確認する。(ここが重要)手順4 通勤に無理のない通勤時間、条件かをさらっと確認(高望みしない)
※正直言ってやりたいことができて実家から通えるなら給与なんて二の次です。 ※通勤時間は1時間以内が目安だと思います。特に女性は体調の波があると思いますので通勤1時間以上はお勧めしません。
手順5 メールまたは電話で面接と見学の申し込みをする。候補の歯科医院は3つ以上10以内に収めましょう。「なりたい歯科衛生士像」が具体的であればあるほど、「個性的であればあるほど」候補は多くならないと思います。 現状採用をかけているかはサイトで確認しつつも、気になった歯科医院があれば、万が一採用をかけていなくても応募すべきです。その際は電話でもメールでも「なぜ?あなたがその歯科医院に興味を持ったのか?」をウェブサイトで確認した歯科医院の運営理念、院長紹介の内容、診療科目と自分の「なりたい歯科衛生士像』と重ね合わせて相手に伝えましょう。そうすれば、きっと「とりあえず会ってみてもいいかな」と思ってくれるはずですし、良い意味で仕事熱心な先生ほどそういうものだと思います。

面接ですべきこと

面接に行く際は緊張すると思いますが、意識して欲しいことがあります。それは 「面接官とあなたは対等の立場である」ということ。たまに「面接官の方が上」みたいなことが言われますが、私(採用担当も経験しています)はそうは思いません。例えるなら面接における力関係は男女の「お見合い」に近いです。そう考えると過度に胸を張って自分をカッコよく見せようとしないでいいと思います。あなたらしく、最低限のマナーは抑えつつも面接官と意見交換をするつもりで楽しみましょう。 (歯科医院面接時のマナーについてはこちら)
面接の流れとしては面接官主導で質問をいくつかされると思いますが、「なりたい歯科衛生士像」が決まっていれば、答えにこまりがちな「なぜ歯科衛生士になろうと思ったの?」や「どんな歯科衛生士になりたい?」と言った質問やさらに踏み込んだ「なんで数ある歯科医院からうちを希望したの?」という質問まで迷うことなく答えることができるはずです。そしてその答えは「あなたの今までの人生経験に基づいたものであり、他のどの候補者の答えと同じになることはほぼない答え」ですから、きっと数多の歯科衛生士を見てきた面接担当者の心にも響くはずです。「この子(あなた)は他の子(候補者)とは違う」と。
※しょっぱなで自己PRを求められたら「なりたい歯科衛生士像」と「志望した歯科医院の理念」の方向感が一致していることを分かりやすく伝えましょう。学生時代に何を頑張ったとかはもし聞かれたら答えるくらいで良いと思います。
この手の質問に対して多くの新卒既卒候補者は「昔、歯医者さんに行った時に歯科衛生士さんに優しくしてもらって」とか「医療従事者に憧れて」とか、テンプレートの答えばっか言ってくる候補者が多いもの。しかしあなたはそうではなく
「(あなたの人生において)、歯科衛生士として何を目指したいか?そしてその理由は(あなたの人生において)、これこれこう言った経緯があるから。だから貴院で働いて社会にこうやって貢献したい」と言った答えが出るはずです。何度も言いますが、歯科医院の理念(ビジョン)とあなたの「なりたい歯科衛生士像」の方向が合っているからこそできる答えです

思いを伝える以外に面接の際にすべきこと

面接が終わりその場で内定を出す医院もあれば、「何週間後までに返答をします」のような終わり方の医院もあるでしょう。いずれの場合にせよ私が強く勧めたいのが 「医院の見学をする」ことです。時間は30分程度が目安でしょう。
「百聞は一見に如(し)かず」という「ことわざ」があります。知らない人のためにことわざの意味を紹介すると「物事の真相は人から100回(度)聞くより、一度実際に自分の目で見るほうが確かであり、よくわかる」という意味です。就活においてもこれは鉄則であり、就職したら一緒に働くであろうスタッフの様子は必ず目で見ておくべきです。滅多に無いとは思いますが、もし「見学は患者さんのこともあるので、、、」と言葉を濁して見学拒否する医院はどんなに綺麗で華やかな場所であろうと「医院内の雰囲気(人間関係)に関し就活生に見られたく無い大きな問題がある」と考えてよいでしょう。 また、実際に見学をする際にお勧めの方法として、見学中にすれ違うスタッフ全員に、あなたから目を合わせて笑顔で会釈か、状況が許すなら声を出して「こんにちは」と挨拶しましょう。その際にうつむいたり、返事をしない人がいたら要注意。その職場には人間関係になんらかの問題がある可能性が高いです。また、可能であれば歯科衛生士のトップの立場の方と会っておきましょう。その方と短時間でいいので目を見てやりとりしてみて「フィーリングが合いそうか?」確認してください。フィーリングってなんだよ??と思うかもしれませんが、こればかりはあなた自身の感覚がその人に合うかの問題です。傾向としては会話をしても「あまり目を合わせない」「笑顔を見せない」チーフ歯科衛生士はお局黄色信号です(笑)。アシストについていない空いているスタッフが楽しそうに生き生きと動いているか?なども確認しましょう。
このような方法で就職希望の職場を1プラス2カ所くらい選びましょう。第一志望から第三志望と言った具合に。 候補選びに迷う場合もあると思います。あくまでも軸は自分の「歯科衛生士としての目的」が「その歯科医院で成し遂げられるか?(近づくことができるか?)」ですが、その観点で優劣付けがたい場合は給与などではなく、「見学の際に楽しそうに働いているスタッフがいた方」かつ「自分と合わなそうなチーフクラスのスタッフがいない」職場を条件にふるいにかけて選ぶことを勧めます。 結局のところ、どんなに院長や病院の運営理念が自分の目指す方向と合っていても、一日中一緒に働くスタッフとある程度反りが合わなければ働き続けることは難しいです。言い換えれば、人は「環境」を理由に就職しますが、短期間で辞める場合の理由はほとんどが「人間関係」だということです。そのため、難しいことではありますが、見学の際にしっかりとスタッフの様子を観察することが職場選びにおいて分岐点となります。
※第二、第三志望は万が一第一志望受からないとか(多分ないですが)就職したけど大きな問題(給与未払いとか)があってやめざるを得ない場合に保険として決めておいた方が安心です。

最後に

ここまで私の拙(つたな)い文章をお読み頂いた方に、心より感謝申し上げます。実を言うと、もっともっと就活や仕事について困っている歯科衛生士さんたちに伝えたいことがあるのですが、それについては今後、焦らずに別の記事でしっかりと伝えたいと思います。皆様の就職活動がよいものとなりますよう、そしてこの記事が一人でも多くの方の歯科衛生士ライフのスタートを間違いのない場所で迎えるための道標となれれば幸いです。

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