2023年11月10日、日本株式市況
10日の東京株式市場で日経平均株価は反落し、前日比78円35銭(0.24%)安の3万2568円11銭で終えた。米長期金利の上昇に伴う前日の米株式相場の下落を受け、日本株にも利益確定売りが優勢だった。ソフトバンクグループ(SBG)が急落して日経平均を押し下げた。
ハイテク株を中心に売りが先行して日経平均は午前に一時下げ幅を400円近くまで広げた後は下げ渋り、大引けにかけては下げ幅を縮小する展開だった。市場で目立った買い材料は指摘されていないが、日経平均の底堅さに目を付けた海外短期筋とみられる打診買いが株価指数先物に入っているとの観測もあった。午前から堅調だった商社や海運、銀行など割安株が多く含まれるセクターが午後に一段と強含み、指数を下支えした。
決算を受けた個別銘柄の売買も活発だった。9日発表の2023年4~9月期の連結最終損益が大幅赤字だったSBGは急落した。SBGは大引けで前日比515円(8.16%)安の5790円と、1銘柄で日経平均を100円強押し下げた。決算結果が市場予想には届かなかったホンダとソニーGも売りに押された。一方、株主還元が評価されたトレンドは急伸した。
東証プライムの売買代金は概算で4兆1106億円。売買高は16億3842万株だった。東証プライムの値下がり銘柄数は630、値上がりは988、変わらずは41銘柄だった。
10日の国内債券市場で長期金利は上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.025%高い0.855%で推移している。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の発言を受けて追加利上げの可能性が改めて意識された。米金利の先高観が強まり、国内でも幅広い年限で国債には売りが優勢となった。
長期金利は一時0.860%まで上昇した。9日にはパウエルFRB議長が講演で「一段の金融引き締めが適切となるなら、躊躇(ちゅうちょ)せず実施する」などと述べ、追加利上げに含みを持たせた。米30年債入札が不調な結果に終わったのもあり米長期金利が上昇し、国内金利の上昇圧力となった。
もっとも、長期金利の上昇幅は限られた。日銀が10日実施した定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)では全ての年限で購入予定額を前回から据え置いた。国内では前日の30年債入札で投資家の堅調な需要が確認されていたため需給の引き締まりを意識した買いも入り、債券相場の支えとなった。
超長期債では新発30年物国債の利回りが前日比0.030%高い1.730%、新発20年債利回りは同0.035%高い1.560%で推移している。中期債では新発5年債利回りが0.420%と同0.020%上昇した。債券先物相場は3日ぶりに反落し、中心限月の12月物は前日比22銭安の144円54銭で取引を終えた。
10日の中国・上海株式相場は反落した。上海総合指数の終値は前日比14.3093ポイント(0.46%)安の3038.9699だった。前日発表の10月の中国消費者物価指数(CPI)が3カ月ぶりにマイナスに転じたのなどをきっかけに中国の景気減速懸念が再び広がった。
中国人寿保険など保険株の売りが目立った。時価総額が大きい酒造の貴州茅台酒が下げた。自動車、太陽光発電関連株が安い。2023年7~9月期決算で大幅減益となった半導体の中芯国際集成電路製造(SMIC)が売られた。半面、石炭の中国神華能源が上昇した。軍需関連、電力株が上げた。
上海のハイテク新興企業向け市場「科創板」の50銘柄で構成する「上証科創板50成分指数」の終値は0.45%安の889.7498だった。深圳総合指数の終値は0.42%安の1903.795だった。新興企業市場「創業板」指数は0.65%安の2005.235で終えた。
上海・深圳両市場を合わせた売買代金は8274億元となった。香港との証券相互取引を通じた海外投資家による中国株売買は売り越しだった。
ソフトバンクG<9984>が発表した2024年3月期第2四半期業績は、売上高が前年同期比1.4%増の3兆2270.60億円、経常損益が9074.25億円の赤字(前年同期は2926.36億円の黒字)だった。保有株式の価値から純有利子負債を差し引いた純資産価値(NAV)は9月末時点で16兆4000億円だった。
・クラレ<3405>280億円投じ米に新ライン、活性炭を年2.5万トン増強
・大成建設<1801>ピーエス三菱を240億円で買収、規模拡大で生産効率化
・みずほ<8411>楽天証券に追加出資870億円、協業で顧客開拓を加速
・日本郵船<9101>最大15隻のアンモニア燃料船建造を検討
・ユアサ商事<8074>バウハウス丸栄と、循環型セメントパネル開発、廃棄物を再利用
・ワコールHD<3591>低収益店から撤退、希望退職150人募集など構造改革
・アマダ<6113>来春に子会社吸収、レーザー・溶接事業拡大
・大林組<1802>トヨタと、コンクリにCFRP端材、再利用技術を開発
・丸紅<8002>社債20億円引き受け、インドで不動産開発
・SMK<6798>米カナリーに出資、声で脳疾患分析
<5202> 板硝子 636 -83
急落。前日に上半期の決算を発表、営業利益は260億円で前年同期比80.3%増となり、従来予想の190億円を上振れる着地になっている。通期予想は従来の350億円から420億円、前期比20.6%増に上方修正している。ただ、第1四半期は146億円を計上しており、7-9月期は前四半期比で減益となる形に。下半期予想も上半期対比では水準が低い状況に。市場の期待値はやや下振れたものとみられる。
<1963> 日揮HD 1635.5 -214.5
急落。前日に第2四半期決算を発表、7-9月期営業利益は30億円で前年同期比66.1%減となっている。インドネシア天然ガス処理案件とサウジNGLプラント増強案件において追加費用やスケジュール遅延などが発生、コストの増加を織り込んだもよう。通期計画380億円、前期比3.5%増は据え置いているものの、下振れ懸念は拭えないようだ。また、受注高も通期計画に対して進捗率は20%程度にとどまっている。
<7731> ニコン 1376.5 -162
急落。前日に第2四半期決算を発表、7-9月期営業益は103億円で前年同期比14.1%増となったが、120億円程度の市場予想は下振れ。通期では従来の430億円から340億円に下方修正。売上高は上振れとなるものの、引当金の計上や構造改革費用などが利益の下押し要因となる。一過性・先行投資費用の意味合いが強いものの、通期市場コンセンサス450億円程度と比較し下振れ幅が大きくネガティブ視された。
<3659> ネクソン 3030 +109
大幅続伸。前日に第3四半期決算を発表、7-9月期営業益は463億円で前年同期比46.9%増となり、市場予想を50億円程度上回った。また、通期ガイダンスは1415-1480億円のレンジとしており、下限水準でも従来の市場予想を上回る。韓国「メイプルストーリー」成長や新作「THE FINALS」の貢献を見込む。また、発行済み株式数の1.8%に当たる1500万株を上限とした自社株買いも発表。
<4704> トレンド 6916 +851
一時ストップ高。前日に第3四半期の決算を発表、7-9月期営業利益は114億円で前年同期比58.4%増となり、上半期実績の同2.5%減から一転して大幅増益に。費用抑制効果などが主因となっているもよう。また、今後の株主還元方針を発表、期末配当総額で1000億円、24年12月期自社株買い400億円などを目標としている。現状で配当金は738円程度と試算され、目先の利回り妙味が高まる格好に。
<4004> レゾナック 2592.5 +238.5
急伸。前日に第3四半期決算を発表、7-9月期営業益は89億円で前年同期比47%減となったが、15億円程度のコンセンサスは上振れた。半導体後工程材料の回復などにより、半導体・電子材料の営業益は3四半期ぶりに黒字化した。通期営業赤字予想は従来の200億円から120億円に上方修正、半導体・電子材料の赤字縮小が主因。直近では黒鉛電極同業の決算に連れ安していた面もあり、安心感が先行する形に。
<7201> 日産自 607.2 -28.3
大幅反落。前日に第2四半期決算を発表、7-9月期営業益は2081億円で前年同期比2.3倍となり、市場予想も500億円程度上振れた。通期予想は従来の5500億円から6200億円に上方修正、市場予想を500億円程度上回る印象。円安効果が大きな上振れ要因となるが、販売の質の改善なども増益要因となるもよう。ただ、決算はポジティブながら好反応は限定的、次期中計の発表時期延期などを明らかにしている。
<7267> ホンダ 1586 -68
大幅反落。前日に第2四半期決算を発表、7-9月期営業益は3021億円で前年同期比30.7%増となり、3500億円程度の市場予想を大きく下振れた。北米の四輪エンジン部品関連で一過性の品質関連費用が発生。同費用を除けば実質上振れとも捉えられるが、円安効果などへの期待感も高かったとみられる中、ネガティブに捉えられた。なお、通期予想は従来の1兆円から1兆2000億円、前期比53.7%増に上方修正。
<9984> ソフトバンクG 5775 -530
大幅反落。前日に第2四半期の決算を発表、税引前損益は7312億円の赤字となっている。ビジョンファンド事業は2589億円の損失、外部投資家持分が増加したほか未実現評価損が発生したことなどが背景で、市場期待を下振れたとみられる。また、アームのIPOなどで期待された自社株買いも今回の発表はなかった。なお、本日は米国株式市場の下落なども逆風となる形に。