第０話 友人からの誘い
◇◇◇二〇三一年七月二十日◇◇◇
「今日から夏休みっすね……」
高校生活最初の終業式。誰もいない教室から外を眺めて、ポツンとひとり。小さい時から友達がいない。作り方がわからない。顔の見えない誰かに話しかけても、返答がくるわけ…………。
『あーれーん‼ もう、ふてくされてどうしたの？』
「ま、舞彩⁈ いつの間に？ ってかいつから……」
『ずっと後ろにいたけど？ ほら、こっち向いてよ』
不意打ちに近いアプローチに、慌てて視線を移動させると、そこにはロングヘアの女子高生。彼女の名前は樋上舞彩。樋上中央大学病院院長・樋上或斗の娘だ。
この大学病院は主に脳医学専門。仮想五感型ゲームのテスト会場としても有名な、私立病院でもある。
「それで、突然なんすか？ てっきり帰ったと……」
「心配だからに決まってるでしょ‼ ついでに今日は、非公式なのに有名になったゲームが、正式サービスを開始するからね」
「非公式で有名なタイトル？」
「知らないの？ 〝リアゼノン・オンライン〟。自分からゲーム通って言っておいて…………。同時に違法薬物の更生剤研究も、本格的に始動するし……」
違法薬物の更生剤…………。聞いただけでめちゃくちゃ怖い。危なっかしくって恐ろしい。それはそうとして、〝リアゼノン〟か……。
席から立ち上がってリュックを背負うと、玄関に向かって廊下を歩く。後ろで手を振る舞彩。どうやら部活があるようで、一緒に帰りたいが仕方ない。
広い校庭。校門を出て帰路に着く。賑やかな都会の高校には『始業式まで』と一礼。俺は下校ルートを辿って進む。
見えてくる大学病院。先の樋上中央大学病院は、いつもと違う恐怖を感じる。なぜなら、更生剤の話を聞いてしまったのだから。
『あのすみません。樋上中央ってここで合ってますか？』
どこかで響いた女性の声。目の前には小柄な少女。脇にはノートパソコンを挟んでいる。
「そうっすけど……」
『ありがとうございます』
印象に残る幼い顔。とても可愛い。惚れてしまうくらいだ。病院の受付へと足を運ぶ少女。見送ってから、俺はその場から離れて、本屋に寄ることにすると、少女が振り向き視線が合わさった。
◇◇◇三十分後◇◇◇
『お買い上げありがとうございます‼』
手にゲームソフトが入った袋をぶら下げ、本屋の外に出る。中にあるのは舞彩に勧められた〝リアゼノン〟のソフトだ。
どんなゲームなのか気になるが、まずは家に帰る。話は全てそれから。大通りを通り過ぎ、雰囲気はガラッと変わって、穏やかな住宅街へ。
時間はあっという間に去っていく。目的地に到着して、二階の自室に直行。新入りそっちのけで、パソコンゲームにログイン。時間潰しを始めた。
【あとがき】小説家になろうから持ってきました。私はSFゲーム小説しか書けないので、この作品をメインに書いています。続きが早く読みたい方は、こちらからどうぞ