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少しずつ夢から目覚める秘密...

まずはじめに

自分の身体を、下に置いた摩擦木(アラニ)として、聖音アウンを上に摩擦木として、互いに擦り合わす如くに静慮(ディヤーナ)を繰り返し行ずれば、隠れている火を見るに至れるが如くに、かの神様を知り得るようになるのだ。

シュヴェターシュヴァタラ・ウパニシャッド第一章第十四節より引用

まさにこのアウンなる音は、同意の際の言葉(オウ)である。それというのも、人が何かに同意する際に発するのは、単純に、『阿吽(オウ)』という言葉だからである。そして、同意された事柄は、すなわち、成就されたことになるのである。かくのごとくに、この事柄を理解している者が、このアウンなる音は、神様を讃咏する音(ウドギータ)であるとして瞑想を施せば、その者はまさしく種々の願望の成就者となるのである。

チャーンドギヤ・ウパニシャッド第一篇第一章第八節より引用

おそらく、次女がよくわからんとの感想によれば、上記の二つが特に意味不明の文章だと想像できる。確かに、私も当時はさっぱりわからなかった。そこで、今回は、クリストファー・ノーラン監督の映画『インセプション』を題材にして、できる限り、理解するための材料を提供してみたいと思う。

ヨーガにおいては、ウパニシャッドという奥義なので解説して、あーなるほどと腑に落ちるということはないし、言葉では言い尽くせないからこそ、かつての聖仙と呼ばれる方々は、物語風にしか表現できなかったのだろう。

私が、初めて、先生と直接にお会いした時に、「まー極めて優秀ならば十年だね」とおっしゃっていたので、本気に取り組むならば、最低でも十年は覚悟を決めてください!

映画『インセプション』

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とても面白い映画なので是非ご覧いただきたいのですが、簡単な内容は下記のウィキペディアをご参照してください。

インセプションの内容について

ごく簡単な内容を言えば、レオナルド・ディカプリオが扮するコブは、人が夢を見ている最中に、その潜在意識の奥深くに潜り込んで、相手のアイデアを盗むことのできる優秀な人材でした。彼は、企業スパイの世界でトップの腕前を誇っていたが、やがて国際指名手配犯となってしまいます。そんなある日、コブの元に“インセプション”と呼ばれるほぼ不可能に近い仕事が舞い込むというお話しです。

■夢か現実かを識別するための道具

トーテム

他人の夢の中に潜り込むという仕事柄、必須の道具として、「トーテム」という道具があります。この上記の「トーテム」は、廻すコマですが、現実ならば廻していたコマがいずれは止まります。けれども、夢の中ならば永遠に廻り続けるので夢の中にいることが判断できるというものとなっています。

■成就しない夢はより下層の夢へと下降する

ライバル企業を倒産へと追い込むために、会長の息子であるロバート・フィッシャーに会社を潰すというアイデアをインセプション(植え付ける)することに向けて綿密な計画を遂行するのだが、夢の中でたびたび逢瀬しているコブの亡き妻モルや謎の武装集団に襲撃されることで、その階層にて成就できない夢は成就させるためにより下層へと潜ることになる。

夢の時間の経過について、作中では、夢の機能は通常の20倍で、夢の世界では時間が現実世界の20倍もゆっくりと流れ、現実世界の10時間が夢の第1階層では1週間、第2階層では6ヶ月、第3階層では10年近くとなるという設定なのだが

寝て見る夢の中の5分は、現実の1時間に相当することもあるくらいに、睡眠時の脳は極めて低速度な処理しか行えないのが普通なのに逆になっている。しかし、このことは、ヴェーダンタ哲学的には、永遠の今から離れた、つまり、解離した夢においては時間がそれほどゆっくりと経過してしまうというのは逆でも何でもないと言える。

つまり、ここでは何を伝えたいかと言えば、私たちも寝て見る夢は、現実だと信じているこの現実世界において、成就できない現実は映画のように夢の階層にて落ちて成就するための夢を見るということ、そして、目標とする夢も叶えた叶えないに限らず、次の夢の階層へと登っているつもりでも、実は下層へと落ちているとしたらどうだろうか?

■夢の主人(ホスト)であるドリーマー

映画において、その夢の世界は、複数人で共有することができて、その夢の主人(ホスト)のことをドリーマーと呼んでいる。そして、夢の各階層ごとにドリーマーが必要であり、なおドリーマーが死亡してしまうとその階層は崩壊してしまう設定になっています。

映画のトリビアをひとつご紹介するならば、映画の主要人物の名前を並べてアタマの一文字を抜き出すと、DREAMS(夢)という単語になります。

D(Dominic Cobb)
R(Robert)
E(Eames)
A(ArthurもしくはAriadne)
M(Molly Cobb)
S(Saito)

いかにもクリストファー・ノーラン監督らしいです。

ヴェーダンタ哲学においても、私たちは夢の世界の住人として暮らしていて、その夢の主人公として、つまり、夢の登場人物(ドリーマー)の一人となっているとも言えます。同じように、死亡することで現実世界という夢の階層はその夢のホスト(ドリーマー)にとって崩壊することになります。

■ドロステ効果について

『インセプション』で使われたドロステ効果

上記のシーンは、共有する夢の世界の構築・設計を担当するアリアドネに、夢の中では自由に構築して設定することができることを説明するために、コブが鏡と鏡を合わせて見える世界を見せました。

これはドロステ効果と言われ、ドロステ効果とは一種の「合わせ鏡」になります。「合わせ鏡」とは、鏡と鏡の間に障害物がなければ鏡の中でお互いの画像が永遠に反復されることになります。ここでコブがアリアドネに伝えたかったことは、夢とは永遠に続かせることができることなのかもしれません。

だからこそ、その夢と現実を判断する道具であるトーテムが必須になるとも言えます。

ここで、話の流れを無視するような形とはなりますけれど、私は子供の頃にこのドロステ効果のように、砂場でビー玉を見ている時に、ビー玉の中にもココと同じような世界があってビー玉を眺めている自分がいて、その世界のビー玉にもビー玉を眺めている自分がいる。また、砂場でビー玉を眺めている自分は実はビー玉の世界の中にいて、そのビー玉を眺めている自分がいたら面白いな、なんて想像して遊んでいました。

トーテムとなる“AUM”の使い方

ながながと映画『インセプション』を持ち出して、現実か夢かを識別するためのトーテムとなり得る「聖音アウンを上に摩擦木として」の解説なのですが…

■夢の階層は成就することで崩壊する

映画の中でも私たちが現実だと信じているこの世界の中でも、死亡することでこの生きている世界という夢の階層はその夢のホスト(主人公)にとって崩壊することになります。

しかし、命がけでなくても夢の階層を崩壊すること、もしくは、消失させることができます。それこそ、「聖音アウンを上に摩擦木として」その夢をオウ(AUM)と応諾することで成就して消失することができるのです。

イメージとして言えば、おそらく、高い確率で、私たちの多くは、映画『インセプション』でいうところの夢の階層をたくさん降りてしまっている、つまり、数え切れないほどの夢という幻想を廻り廻っていることと思われます。

だからこそ、自らを一人の夢の登場人物として客観視して観ることができなくなっているのでしょう。

つまり、ドロステ効果に見られる「合わせ鏡」の世界の中の夢の登場人物として、同じような問題を繰り返して経験し、解決されないままに、また違う鏡の世界の夢の登場人物として、トーテムというコマのようにグルグルと廻り廻っているのかもしれません。そうです、永遠に廻るのならばそれは夢です!

ココで伝えようとしていることは、ひとつの「仮説」です。「仮説」とは検証しない限り現実とは成り得ません。試しに、比較的些細なことやどうでも良いことから、自らの命や金銭的損失にほど遠いところから検証するならば、さまざまなアプローチから解説しているキモが初めて伝わるかもしれません。

ヨーガは、ごく身近な肉体から始めるアーサナがあります。しかし、一番に、この肉体との結びつきが強く夢の登場人物としての自覚の障害となっている現実があります。

ともあれ、本気で続けるならば、夢の主人公たる自分から離れた視点を築けることでしょう。

最後に

私は、ヒマラヤの行者さんを第一世代とすると、第四世代になります。第三世代の先生から「ヨーガを教えろ」とおっしゃっていただいているので、第四世代ならではの“note”というユニークな形式にてお伝えしております。

これを読まれている方にとって、意味不明な羅列であることは想像できます。逆に、分かるはずはないのかもしれませんし、分かりたいとも思わないとも…

でも、書く内容が次々に思い浮かぶ間はチャレンジしていきたいと思っています。

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