見出し画像

アレルギー = 体表面振動

 現代人の血液を分析すると合成化学物質が数千種類は見つかるとの雑誌記事を読んだことがある。最近の加工食品は、元来冷蔵しなければならなかったものが常温保存に可能になったり、色鮮やかだったり、いつまでもふわふわな食感だったり・・・。人々がおいしそう、食感が最高と思うような特性を食品に付与することに成功している。一方で栄養価はどうだろうか? 本来、植物は自ら栄養成分を合成・貯蔵する能力を持っている。その能力は昔の日本人が「」と言われる時期に最大に達するといわれている。したがって、昔の日本人は野菜を「旬」の時期に食べることで、効果的に栄養を摂取していたのである。しかし今では、ビニール・ハウスや植物工場など、栽培条件の均一化を実現し、年中一定の生産量が確保できるようになっている。したがって「旬」の野菜はなくなり、年中栄養価の低い野菜を食べているのである。それでも体格が良くなっているのは、肉や油をたくさん食べているからだろう。季節感の喪失に加えて、熱帯地域で育つ食品が輸入されており、地域性までも喪失している。
 このような食文化の変化の中と並行して、先進国では、さまざまな合成化学物質に暴露されていることが、アレルギーを増加させているという見方も存在する。「清潔は病気だ!」と宣言した故藤田紘一郎 (東京医科歯科大学教授) 氏は、途上国に見られる寄生虫が、先進国に見られるアレルギーを抑制しているのではないかという仮説を立てた。近年、小さい頃に犬を飼っていた人や、農家育ちの人はアレルギーになりにくいといううことが学術的調査で明らかにされている。これは。幼少期の免疫系の発達において、さまざまなアレルゲンに暴露されること (= 清潔でない環境) が健全な免疫系の発達に重要であることを示唆している。一方、私たちは幼少期の頃から、ジュース、おやつ、インスタント食品、缶詰などの加工食品を食べ続けている。加えて、ボディー・ソープ、シャンプー、整髪料、香水、化粧品など、私たちはさまざまな合成化学物質を体に浴びせ続けているのだ。近年注目されている食物アレルギーの治療法として、アレルゲンとなる食品を少量ずつ経口摂取することによって、免疫寛容つまりアレルギーに対する反応を抑制する方法がある。また、日本の漆職人は漆をなめることによって漆による皮膚アレルギーを抑制していたと言われている。同じアレルギー物質であっても皮膚から取り込むのと口から取り込むのでは反応が異なるのである。皮膚は対外と体内の境界であり、皮膚から侵入してくるものは危険物であるとして、それに対して拒絶反応を起こすことは理に適っている。一方、口から入ったものは基本的には栄養物質であり、消化管は、拒絶反応を抑制し、栄養物として取り込む。
 現代人の体表面 (皮膚、腸管) はさまざまな合成化学物質に暴露されることで、「かゆ~い」「痛~い」などの叫び声をあげているのだ。 私たちの体は合成化学のような速度で進化していないのである。ファスト・フードではなくスロー・フードは理にかなっているのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?