【短編小説】寝台特急に揺られて - 遠い夏の日々
子どもの頃、毎年夏休みになると、家族で祖父母の家に向かうのが恒例だった。祖父母の家は遠く、寝台特急に乗って深夜に到着するまで8時間もの旅路が続いた。その旅は、私にとって特別な時間だった。
列車に乗り込むと、独特のガタンゴトンという音が響き渡る。鉄の車輪がレールに触れる音は、まるで子守唄のように心地よかった。列車が出発する前、車内に流れるあの素朴なメロディーが鳴り響く。そのメロディーは何度も耳にしたもので、懐かしさが胸に広がった。アナウンスが流れ、旅の始まりを告げるその瞬間が