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小1の女の子交わしたある約束

つい二週間前ほどだ。

妹の友達とその家族が家に遊びに来ていた。

親同士で親交もあるぐらい仲が良いらしい。

俺は繋がりが無いので勝手にやってくれと思い、隣のリビングに突っ伏していた。

30分後『おーい』と甲高い声で呼びかけてくる女の子が居た。妹の友達の妹、つまり次女にあたる子。

小1という幼さを加味しても無垢すぎる表情で話しかけてきたあの子は、『何をしてるの?』と尋ねてきた。

分かるだろう、突っ伏しているんだ。
隣の部屋で楽しそうにしているのを羨ましく思っているものの、それを悟れるのが恥ずかしいから突っ伏してるんだよ。

と答えず『寝ているよ〜』と返す。

あの子は申し訳なさそうに部屋の方に消えた。

小1相手に気を遣わせてしまったと少し申し訳なくなった。

あの子は年齢の割にというと失礼だが話を聞く限り、陽気で歳を気にせずコミュニケーションを取るし、その上凄い気配りができる珍しいタイプだと俺の母親が言っていた。

納得しているとまたこちらに来て、今度は即座に俺の手元の違和感に気付く。

『ネイルしてるの?』

『そうだよ、男なのにキモい?』

(妹達がそんな大人げない質問をするなと苦笑)

『そんなことないよ、似合ってるよ。男の人でもしてる人いっぱいいるし』

『手なんて誰も見てないから気にしない方がいいよ』

すごい気配り力。俺が小1の時なんか話にならない。

いや、今年23にもなる男が、10歳以上離れた子に気を遣わせたとも言える。

ますますこの子の気配り力と知性に興味が湧いた俺は自分の力量の無さを横目に、学校の話や家族の話など、たわいも無い会話をしてみた。

するとあの子からまたネイルの話題を振られる。

『ネイル屋さんになれば?わたしが大人になったら毎日通うよ』

『まじ?頑張るから来てね』

『シナモンのネイル作れるようになって!チップはどのサイズがいい?』

あの子の眼は完全にネイリストの卵として俺を捉えている。

しかもよりによって、キャラデザインを作れるタイプのネイリストだ。

軽く冗談で言っただけなのにハードルが高すぎるよ。

あの子が帰ってから、布団に着き寝るはずも

『今から急にネイリスト目指すとなれば学校か?

学校って費用どのくらい?

男のネイリストって需要あるのか?

O型ですけど大丈夫ですか?』

などと自問自答を繰り返す。

その日ネイリストの道を本気で考えているうちに日を跨いだ。

完全に凌駕された1日だった。

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