NODA・MAP第23回公演 『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera

■2019/10/20 18:00 大阪・新歌舞伎座

 もう観劇してから随分経っているけど、スマホに書きかけのメモが残っていたのでちょっとだけ加筆修正して上げておこう。

 野田秀樹といったら演劇ファンでなくても普通に知っているし、実績はハンパない。メジャーどころも見ておかなければという義務感と、広瀬すずや松たか子が見られるというミーハー的好奇心もあって、新歌舞伎座に足を運んだ。

 セットや小道具の使い方が秀逸で、ラストシーンも良かったし、ロミオとジュリエットが若いときと大人になってからで役者を変えて、主人公と解説役が前後半で入れ替わる構成もとても良いアイディアだと思った。役者も多いから合戦の場面や野戦病院、強制労働の場面も迫力や説得力があった。いつも観に行く小劇団とは違うなと思ったよ。

 けど、「すげぇ演劇だな。やっぱ野田秀樹ってすごいんだな!」とはならなかった。

 この演劇を観ているとき、僕は最初、この物語がいまいち理解できてなかった。何かよく分からんなぁと思いながら、「広瀬すず、色白いなー! メイクかもしれんけど」とか「このセット、ボルダリングみたいに色んなところから登ったり降りたりできるんだ。役者は動き回らなあかんから大変だなー」とか「へぇ〜。この劇場は3階からだとセットの裏側を役者やスタッフが移動するのがわずかに見えるんだ」とか考えたりしていた。

 物語に集中できていなかった。

 そういうことを思ったり考えたりするのはいつものことで、悪いことではない。どんなに舞台に集中していても、時折ライティングに目が行ったり、ふと気になって他のお客さんの反応を見たりすることはある。ただ、そういう時間がそれほど長く続くことはない。いつもは基本は物語に集中しながら、たまに周辺のことが気になる程度だ。でもこの時は舞台上の物語をギリギリ追いつつも、ずっと舞台の周辺のことが気になっていた。

 その理由は、観劇中にはよく理解できていなかった。多少物語が入り組みすぎている感覚はあったが、何故こんなに没入できないのだろう? 舞台が終わり、皆がスタンディングで拍手を送る中、僕には違和感だけがあった。で、観劇後にストーリーを思い返したり、チラシやサイトを見たりして咀嚼しているうちに、だんだん理解できてきた。

 設定が多すぎるのだ。

 何でロミオとジュリエットを源氏と平家でやる必要があるのか。何でQUEENの曲を使う必要があるのか。サブタイトルに『A Night At The Kabuki』『inspired by A Night At The Opera』とあったりとか。これ全部なくても成立しそうなんだよね。

 つまり焦点が定まっていない。ロミオとジュリエットがやりたいなら『ロミオとジュリエット』をやれば良いし、QUEENの曲を使うならその必然性が観客に分かるようにしてほしい。一体、歌舞伎をやりたいのか、オペラをやりたいのか、どっちなんだろう?

 ストーリーも主人公がロミオとジュリエットの2人いて、しかも青年期の2人と大人になってからの2人を別々の役者が演じていて、前半は青年期が主役、後半は大人の2人が主役という複雑な構成だし。

 ちょっとやりすぎだと思うんだよね。ここまで複雑なのは、あまりにも観客に優しくなさすぎるよ。

(演劇ファンなら『ロミオとジュリエット』や歌舞伎、オペラの基本ぐらい知っとけ。知らない奴は来なくて良い! ──ってことかな?)

作・演出 野田秀樹
音楽 QUEEN

出演
松たか子
上川隆也
広瀬すず
志尊淳
橋本さとし
小松和重
伊勢佳世
羽野晶紀
野田秀樹
竹中直人

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