野火(1959年版)

 昨年、塚本晋也監督版が全国上映されていたけど、それではなくて1959年に公開された市川崑監督版の方。塚本晋也監督版は未見なので、またそのうち観てみたいと思う。

 で、これは観るべき映画。

 戦争がいかに人を狂わせるのか。どれだけの犠牲を生み出すのか。この作品の登場人物たちは、何故生きているのかが分からなくなったり、生きたいという気力すらなくしてしまったりする。味方であるはずの人間が、極限の状況では味方でなくなってしまったり、何の罪もない人間を敵と見なさなくてはならなくなったりもする。そんな環境の中で、自分を殺してもがむしゃらに生きることを選ぶべきか、それとも自己の尊厳を選ぶべきか、考えさせられる。

 戦争を始める人たちは、自分では前線に立たないんだよなァ……なんてことも、思う。

 船越英二の飄々とした感じが、主人公の田村にすごくマッチしてる。長く戦地で過ごすうちに、たくさんの苦難に遭って、ついに感情を損なってしまった、というようなバックストーリーを、船越のあの雰囲気、淡々と喋るところなんかから、勝手に想像してしまう。

 ラストシーンの、田村が取る行動に、望んだものに、心を打たれる。

製作年 1959年
製作国 日本
配給 大映
上映時間 104分

監督 市川崑
脚色 和田夏十
原作 大岡昇平

田村 船越英二
兵隊 ミッキー・カーチス
兵隊 月田昌也
兵隊 杉田康
下士官 浜口喜博
兵隊 滝沢修
無精髯の軍医 山茶花究
兵隊 稲葉義男
兵隊 星ひかる
兵隊 佐野浅夫
分隊長 伊達信
狂人の将校 浜村純
曹長 潮万太郎
兵隊 飛田喜佐夫
兵隊 大川修
兵隊 此木透
兵隊 竹内哲郎
兵隊 早川雄三
兵隊 志保京助
衛兵 守田学
軍医 伊東光一
兵隊 夏木章


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