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映画で英語学習「ラビング 愛という名前のふたり」~BLMを考えるシリーズ①

映画は生きた英語の宝庫です。
映画から学べることはたくさんあります。発音やリズムだけではなく、総合的に英語を学ぶメリットがいっぱい。そんなメリットについては以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

さて、昨日6月12日が「Loving Day」ということで、「ラビング 愛という名前のふたり」という作品をご紹介します。1967年の6月12日に何が起こったか…それは映画を観てのお楽しみです。

ラビング 愛という名前のふたり

愛する人と結婚する。そんな当たり前のことができなかった時代がアメリカにはありました。1960年代のアメリカ南部には、異人種間の結婚を認めないという法律があり、結婚できなかったカップルも多かったことをご存じでしょうか?
「Loving」という姓の白人男性と黒人女性の夫婦が「愛することに肌の色は関係ない」ことを主張して、州を相手に結婚の権利を闘った実話です。

作品データ

原題:Loving(2016)
監督:ジェフ・ニコルス
キャスト
リチャード・ラビング:ジョエル・エドガートン
ミルドレッド・ラビング:ルース・ネッガ
バジル判事:ウィル・ダルトン

あらすじ

1960年代のバージニア州、白人の大工リチャード・ラビングは幼ない頃から顔なじみであったミルドレッドと恋に落ちます。やがてミルドレッドが妊娠し、若い二人は結婚することに。しかしひとつ問題がありました。ミルドレッドが黒人であるということ。当時のバージニア州では異人種間の結婚が州法で禁じられていたことから、二人はそれが認められているワシントンD.C.まで出向き結婚の誓いを立てます。
家を建て、子供も生まれ、幸せな結婚生活を送っていたある夜、突然に二人は保安官に逮捕されてしまいます。州法違反です。離婚するか、故郷を捨てるかという選択を迫られた二人は、故郷で愛を貫くためある行動を起こすことに…

心に残るセリフ

何が罪なのか?愛する人と結婚したかった、それだけなのに、このような判決が裁判所で下される。今の時代を日本で生きている私たちには想像もできませんが、事務的なシーンゆえに、考えさせられ胸が締め付けられるセリフです。

COURT SECRETARY:…the said Richard Perry Loving, being a white person and the said Mildred Dolores Jeter being a colored person, did unlawfully and feloniously go out of the state of Virginia, for the purpose of being married in the District of Columbia on June 2nd, 1958, and afterwards returned to and resided in the County of Caroline, State of Virginia, cohabitating as man and wife against the peace and dignity of the Commonwealth.
JUDGE BAZILE:Stand.
JUDGE BAZILE (CONT’D):How do you plead?
RICHARD:Guilty.
MILDRED:Guilty.
JUDGE BAZILE:The court doth accept the pleas of guilty and fix the punishment of both accused at one year each in jail.
(scriptslug.com)

裁判所書記官: …白人であるリチャード・ペリー・ラヴィングおよび、有色人種であるミルドレッド・ドロレス・ジェターは、1958年6月2日、法に反する重罪であることを知りつつ、ワシントンD.Cにおいて婚姻を結ぶことを目的に、バージニア州を脱出した。その後州内に戻ると、バージニア州キャロライン地区に居を構え、州内の平和と尊厳に反する行為として、夫と妻として同居生活を送ったものである。
バゼル判事:起立。被告らの申し立てを述べよ。
リチャード:有罪を認めます
ミルドレッド:有罪を認めます
バゼル判事:裁判所は、有罪の申し立てを受け入れ、被告両名それぞれに禁固1年の刑の確定を言い渡します。

注目の英語表現

a colored person=有色人種の人

「黒人」という表現は「black」ですが、アフリカ系のみならず、ラテン系やアジア系、ネイティブなど、つまり「白」でない人という意味。白人至上の考え方が反映された表現だということです。

How do you plead?=どのように申し立てますか?

裁判用語で「plead」がよく使われます。「申し立てる」「弁護する」「言い訳する」という意味になります。このフレーズの後でラビング夫妻は二人とも「 guilty(有罪)」と言っています。「plead guilty」つまり「有罪と認め、裁判を争わない」という司法取引のような駆け引きが後ろにあるということです。

学習単語

secretary=(名詞)書記官、秘書
colored=(形容詞)有色人種の
unlawfully=(副詞)違法に、法に反して
feloniously=(副詞)重罪を犯して
purpose=(名詞)目的
afterwards=(副詞)後ほど、後になって
reside=(動詞)居住する
cohabitate=(動詞)同居する
Commonwealth=(名詞)州(←米国バージニア、マサチューセッツ、ペンシルバニア、ケンタッキーの場合)
plead=(他動詞)申し立てる、弁護する(米:pled、英:pleaded)
guilty=(名詞)有罪
doth=(助動詞)する=do
accept=(他動詞)受け入れる
plea(s)=(名詞)嘆願、懇願
fix=(他動詞)定める、確定する(自・名あり)
accused=(名詞)被告人(形容詞)告発された
jail=(名詞)刑務所

鑑賞レベル

英語難易度★★★★☆
言語・暴力・性★★★★☆
おすすめ度★★★★★

まとめ

愛する人と一緒にいたい、そう熱望した実在の夫婦の闘いを描いた実話「ラビング 愛という名前のふたり」は、根深いアメリカにおける人種差別問題の歴史を辿れる秀作映画です。

南部訛りがあって標準語慣れしている人には少し聴きづらいかもしれませんが、主人公二人の語り口は落ち着きがあり、比較的ゆっくりです。静かでありながら芯に炎を感じる熱い演技に、つい物語に引き込まれます。

1950年代の終わりから60年代にかけてのお話ですから、ほんの60年前のことです。人種の「常識」はまだ根深くアメリカ社会に残っていることを感じつつ、差別を受ける当事者として闘ってきたごく普通の人々の姿を通し、そういった歴史背景に心を砕いてみる良い機会になればと思います。

映画を取り入れた英語学習方法のヒントを解説した記事はこちらです。



英語を習得したい、上手くなりたいというのは多くの人の普遍的な希望ですよね。こうすればいいよと言葉で表現することのむつかしさをかみしめています。楽しくて自然に英語が身に付いていくような、そんなコンテンツの発信を目指しています。