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映画で英語学習「ドゥ・ザ・ライト・シング」~BLMを考えるシリーズ⑤

ニューヨークはブルックリンの下町で繰り広げられる人種間の対立と暴走。重いテーマをラップに乗せてむしろコミカルに描く異色作。アーティスティックな映像で描かれるブルックリンの人々の日常描写もまた魅力。

同じ地域に住む若者たちや住民たちが、自分たちを正当化するために排他的な考え方に陥り、徐々に人種ごとにいがみ合っていく様子が、恐ろしくも生き生きとしたセリフで描かれます。

ジョージ・フロイド事件から発展した2020年のミネアポリス暴動を予言するかのようなシーンもあります。

ののしり言葉満載で、ちょっと教材として問題はありますが、生きたアメリカの姿を垣間見て、きれいごとでは語れない人種問題の根深さを思い知らされる秀逸な作品です。

作品データ

原題:Do The Right Thing(1989)
監督・脚本:スパイク・リー
キャスト
  サル:ダニー・アイエロ
  ムーキー:スパイク・リー
  ピノ:ジョン・タトゥーロ
  ラジオ・ラヒーム:ビル・ナン
  ラブ・ダディ:サミュエル・L・ジャクソン

あらすじ

猛暑のブルックリンの黒人が住民の多くを占める界隈。イタリア人が経営するピッツアリアや韓国人が経営するコンビニもあり、異人種が微妙なバランスで共存している。

恋人との間に赤ん坊もいるのにプータロー的な生活を送る黒人のムーキーは、イタリア系の白人サルが2人の息子ヴィトとピノと経営するピッツアリアでデリバリーのバイトをしているが、暇を見つけてはサボってばかりいる。

サルの店は地元の黒人の若者のたまり場。しかし、集まるのは一癖も二癖もある若者ばかり。「黒人相手の商売なんだから、壁にはロバート・デ・ニーロじゃなく、マイケル・ジョーダンをのポスターを飾れ」と難癖をつけるバギンアウト。でかいラジカセをかついで爆音でラップを鳴らしながら店に来るラジオ・ラヒーム。

ある日とうとう、ラジオ・ラヒームの爆音ラップにサルがキレ、彼のラジカセを叩き壊してしまう。それに対して黒人の若者の怒りが爆発し…

心に残るセリフ

Radio Raheem: Let me tell you the story of Right Hand, Left Hand. It’s a tale of good and evil. Hate: it was with this hand that Cain iced his brother. Love: these five fingers, they go straight to the soul of man. The right hand: the hand of love. The story of life is this: static. One hand is always fighting the other hand, and the left hand is kicking much ass. I mean, it looks like the right hand, Love, is finished. But hold on, stop the presses, the right hand is coming back. Yeah, he got the left hand on the ropes, now, that’s right. Ooh, it’s a devastating right and Hate is hurt, he’s down. Left-Hand Hate KOed by Love.
Imdb

ラジオ・ラヒーム:右手と左手の話をしよう。これは、善と悪の話だ。まずヘイト。カインが弟を氷に変えた手。次はラブ。この五本の指。まっすぐにソウルに届く。右手はラブ、愛だ。人生の物語はこう。静寂。一方の手がもう一方と闘う。左手がケツを蹴り飛ばす。右手のラブはもうやられちまった。 だが、もうちょいまて。右手はまだいける。いいぞ、奴の左手はロープの上だ。そうだいいぞ。破壊的な右が入った。ヘイト、傷んでる。ダウンだ。左手ヘイト、ラブにノックダウンされたぞ

注目の英語表現

このシーンでラジオ・ラヒームというキャラクターは、両手にKnuckle Dusterという金属のメリケンサック(?)を付けていて、右手のデザインが「LOVE」、左手が「HATE」の文字をかたどっています。

「LOVE vs HATE(愛と憎しみ)」を「左右」そして「善と悪」に見立てて対比、格闘技の試合をさせる体で、試合の様子をアナウンスしています。

登場するCain(カイン)は、アダムとイブの二人の息子で、カインはアベルを逆恨みで殺害し、しかも問われると「弟はどこへ行ったかなんて知らない」と言ったそうです。これが人類がついた最初のウソとされています。このスピーチでは、HATEの象徴にされていますね。

学習単語

tale=(名詞)物語
evil=(形容詞)邪悪の
ice=(他動詞)凍らせる(名詞)氷
static=(形容詞)静寂の
fight=(名詞)闘い
devastate=(他動詞)荒廃させる
hurt=(他動詞)傷付ける
KO=(他動詞)ノックアウトする

鑑賞レベル

英語難易度★★★★☆
言語・暴力・性★★★★★
おすすめ度★★★☆☆

アフリカ系の訛りのある英語がほとんどのため、少し聞き取りにくいかもしれません。また、映画を通して、ずーっと誰かが何かの文句を言っていて、相当にののしり合いますので、ご承知おきのうえご覧ください(この件についての苦情は受けかねます・笑)

ちなみに、主人公のムーキーを演じているのが、この映画の鬼才監督であるスパイク・リー本人です。

映画を英語学習に取り入れる効果的な方法は以下の記事で紹介しています。


英語を習得したい、上手くなりたいというのは多くの人の普遍的な希望ですよね。こうすればいいよと言葉で表現することのむつかしさをかみしめています。楽しくて自然に英語が身に付いていくような、そんなコンテンツの発信を目指しています。