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映画で英語学習「それでも夜は明ける」~BLMを考えるシリーズ⑥

Black Lives Matterの運動に関し、参考になる映画をご紹介しています。

アメリカの人種差別問題は簡単には語れません。差別意識の根本、その起源は奴隷制度(slavary)です。16世紀から始まったとされる奴隷貿易により、アメリカでは、ヨーロッパ人がアフリカの地から強制的に連れてきた人々を労働力として売買する奴隷制度が行われていました。この明らかな主従関係を強固なものとして維持するため、黒人奴隷たちは過酷な労働を長きにわたり強いられたのです。「白人=主人、黒人=従う奴隷」の概念は定着し、現在に至るということなのではないでしょうか。

実際の統計を見たわけではありませんが、とあるアメリカ人医師が、「アメリカの医学生やインターンの半数以上が、黒人は白人より皮膚が厚く痛みを感じにくい、と信じている」というにわかに信じがたい調査結果を紹介していました。その理由を「奴隷制度の時代からそう信じたほうが、奴隷を扱うときに罪悪感を感じず都合がよかったので、そのような考えが常識となり、それが感覚として根付いてしまった」と言っていました。

私たち日本人は、このように文化的に根深いアメリカの奴隷制度についてどれだけ理解することができるでしょうか? 深く学ぶには時間が必要ですが、まずは奴隷制度について近年話題となった映画「それでも夜は明ける」を観てみましょう。

それでも夜は明ける

1840年代、奴隷の身分ではなく「自由黒人」であったにもかかわらず拉致され、12年の長きにわたり奴隷として生きざるを得なくなったある実在の音楽家ソロモン・ノーサップの体験記「12 Years a Slave」の映画化です。

作品データ

原題:12 Years a Slave(2013)
監督:スティーヴ・マックイーン
原作:ソロモン・ノーサップ
キャスト
  ソロモン・ノーサップ / プラット:キウェテル・イジョフォー
  エドウィン・エップス:マイケル・ファスベンダー
  ウィリアム・フォード:ベネディクト・カンバーバッチ
  パッツィ:ルピタ・ニョンゴ
  サミュエル・バス:ブラッド・ピット

あらすじ

奴隷ではない「自由黒人」であった黒人音楽家ソロモン・ノーサップは、愛する妻と子供と暮らしていたが、ある日突然に拉致され、奴隷として売り飛ばされてしまう。

最初に売られた先の農場主フォードは温厚で、ソロモンの広い見識を尊重するが、それを周りから妬まれてソロモンの立場が悪化し、フォードの資金難から別の農場主エプスのもとに売られてしまう。エプスは厳しいノルマを奴隷たちに課し、達しないと容赦なく鞭を振るうなど陰湿で残忍な性格で、エプスの農園での奴隷生活は過酷を極めた。

妻や子供に再会することを強く願い、ソロモンは、何とか状況を脱する方法を模索するが……

心に残るセリフ

Patsey: I went to Massa Shaw's plantation!
Edwin Epps: Ya admit it.
Patsey: Freely. And you know why?
[she produces a piece of soap from the pocket of her dress]
Patsey: I got this from Mistress Shaw. Mistress Epps won't even grant me no soap ta clean with. Stink so much I make myself gag. Five hundred pounds 'a cotton day in, day out. More than any man here. And 'fo that I will be clean; that all I ax. Dis here what I went to Shaw's 'fo.
Edwin Epps: You lie...
Patsey: The Lord knows that's all.
Edwin Epps: You lie!

パッツィ: あたしはショウ様の農園へ行ってたんです
エプス: 認めるんだな
パッツィ: そうです。なせだかおわかりですか?
[パッツィは服のポケットからせっけんを取り出す]
パッツィ: これをショウ様の奥様からもらったんです。エプス様の奥様は体を洗うせっけんをくださらない。ものすごく自分が臭くて、もう吐きそうなんです。200キロ以上も綿花をとってるんですよ。来る日も来る日も。だれよりもたくさんです。体をきれいにしたっていいでしょう。ただそれだけなんです。だからそのためにショウ様のところへ行ったんです。
エプス: 嘘をつけ...
パッツィ: 主は全部ご存じです
エプス: 嘘だ!

このシーンはこちら。

奴隷のパッツィ役を熱演したのは、両親がケニア人という女優ルピタ・ニョンゴ。この映画でアカデミー助演女優賞を獲得しました。

注目の英語表現

黒人特有の発音と表現が多く、少しわかりにくいかもしれません。(カッコ)で標準的な英語表現を加えました。

Patsey: I went to Massa (Master) Shaw's plantation!
Edwin Epps: Ya (You) admit it.
Patsey: Freely. And you know why?
[she produces a piece of soap from the pocket of her dress]
Patsey: I got this from Mistress Shaw. Mistress Epps won't even grant me no soap ta (to) clean with. Stink so much I make myself gag. Five hundred pounds 'a (of) cotton day in, day out. More than any man here. And 'fo (for) that I will be clean; that (that's) all I ax (ask) . Dis (this) here what I went to Shaw's 'fo (for).
Edwin Epps: You lie...
Patsey: The Lord knows that's all.
Edwin Epps: You lie!

学習単語

plantation=(名詞)農園
admit=(動詞)認める
produce=(動詞)生み出す、取り出す
grant=(動詞)与える、授与する
gag=(動詞)吐く、猿轡をする
pound=(名詞詞)ポンド(1ポンド=約0.45kg)
(Five hundred pounds=約227キロ)
cotton=(名詞)綿花、コットン
day in, day out=一日中、毎日
lie=(動詞)うそをつく(横たわる)
Lord=(名詞)主、領主、主人

鑑賞レベル

英語難易度★★★★★
言語・暴力・性★★★★★
おすすめ度★★★★☆

黒人訛りと南部訛りがあるため、英語の聞き取りは少し難しいです。しかし、その分、スクリプトなどを見ながら聞き取り練習すると、幅の広い英語に対応する練習にもなります。

なにより、現代にも根深く残る差別意識の根底を垣間見ることができ、アメリカの歴史の重要な一部分を学ぶ貴重な時間になると思います。


英語を習得したい、上手くなりたいというのは多くの人の普遍的な希望ですよね。こうすればいいよと言葉で表現することのむつかしさをかみしめています。楽しくて自然に英語が身に付いていくような、そんなコンテンツの発信を目指しています。