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英語で読むアマンダ・ゴーマンの詩「The Hill We Climb(私たちが登る丘)」全文(1/20 バイデン大統領就任式)

人の心を掴んだ22歳のスピーチ技法

弱冠22歳の詩人アマンダ・ゴーマンさんが、バイデン新大統領の就任式で披露した詩「The Hill We Climb(私たちが登る丘)」が話題です。

スピーチ終了後に、思わず中継キャスターが「Wow!」と呟いたのが印象的でした。それほど力のあるメッセージでした。彼女のこのパフォーマンスのインパクトを報じる記事見出しも英語的に面白いです

Amanda Gorman stole the show at Biden's inauguration: Meet the 22-year-old poet laureate who gave a historic 5-minute speech that's gone viral
- Allana Akhtar, Business Insider

"大統領就任式でアマンダ・ゴーマンが話題をさらう。歴史的に残る5分スピーチがバスった22歳の桂冠詩人をご紹介"

steal the show=(ショーを盗む→)ショーの主役になる
inauguration=就任式
poet laureate=桂冠詩人(最も優れた詩人)
*勝者へ送る冠には月桂樹が使われる(ノーベル賞受賞者、オリンピアン、マラソン優勝者など)
go viral=バズる

厳密には詩(ポエム)であり、スピーチではないのかもしれませんが、聴衆の耳に残りやすく説得力を増すと考えられるRepetition(繰り返し)のスピーチ技法がちりばめられています。「韻を踏む」というポエムの性質と相性抜群ですね。有名なところでは、故ケネディ大統領や故キング牧師などが用いたスタイルです。

文字上ではわかりませんが、実際のスピーチでは、かのキング牧師のスピーチを彷彿とさせるような言葉の繰り出し方が印象に残りました。文章と文章の切れ目で聴衆に息をつく暇を与えずに、即座に流れるように次の言葉を投げかけて、それを繰り返すことで聴く者のSpiritをどんどん高揚させ圧倒していく手法です。

(Standfmで英語系ラジオ配信をやっている著者は、出来るだけゆっくりかみ砕くように話そうと努力しているので、ある意味、目からウロコです)

これ、多分死ぬほど練習されたのだろうと思いますが、自作の詩とはいえ、こんな大舞台でほとんど噛まずに、5分間の朗読を貫徹した彼女の精神に脱帽です。
(普通なら、気絶レベルの緊張だと思います)

この素晴らしいスピーチをパートに分けて、学習単語付きで訳します。中級~上級向けですが、聴きながら目で追うだけでもとても勉強になると思います。

(ご注意)
この記事に掲載する翻訳は、あくまでも、英語学習用としてできるだけ意訳を最小限にするよう心掛け、著者が独自に翻訳するものです。よって、訳文はご参考までにとどめていただき、転載、転記はご遠慮願います。また、著者の現在持てる英語力(と辞書)を駆使して翻訳していますので、内容には責任を負いかねます。予めご了承の上、ご参照ください。

パート別翻訳解説

スピーチはこちらです。

原文と翻訳文で呼応する部分を太字にしています。
(聞き取りのため、実際の原書とは違う可能性があります)

00:00
When day comes we ask ourselves where can we find light in this never-ending shade.

一日の始まりに、私たちは自らに問いかける。この終わりなき翳りの中に光は見つかるのだろうかと。

00:24
The loss we carry asea we must wade. We’ve braved the belly of the beast. We’ve learned that quiet isn’t always peace. In the norms and notions of what just is isn’t always justice。

失ったもの、我々はそれを背負い海へ歩み続ける。我々は危険な野獣に勇敢に立ち向かってきた。沈黙が必ずしも平和ではないのだと学んだ。何が正しいかを説く規範や概念がいつも正義であるとは限らないのだ。

00:42
And yet, the dawn is ours before we knew it. Somehow we do it. Somehow we’ve weathered and witnessed a nation that isn’t broken, but simply unfinished

それでもいつの間にか夜明けは我々のものになっている。どうにかやってきたのだ。困難を乗り越え、そして目撃してきた。国は壊れたのではなく未完成なのだと。

We, the successors of a country and a time where a skinny black girl descended from slaves and raised by a single mother can dream of becoming president only to find herself reciting for one.

我々は国と時代の後継者祖先が奴隷で、シングルマザーに育てられた痩せぽっちの黒人少女が将来大統領になることを夢見ることができ、そして気付くと、実際に大統領のために詩を読めんでいる自分がいる。そんな時代を受け継ぐのだ。
(Lilyの独り言:主語は冒頭のWeで動詞がない…。We areとすればOK)

01:10
And yes, we are far from polished, far from pristine, but that doesn’t mean we are striving to form a union that is perfect. We are striving to forge our union with purposeTo compose a country committed to all cultures, colors, characters, and conditions of man.

そう、確かに我々は洗練からは程遠く清廉とは言えない。けれど、完璧な団結を作ろうと努力しているわけではない。我々は、目的をもって団結を練り上げようと努力しているのだ。すべての文化、人種、特性、いかなる状況の人にも報いる国を作ろうとしているのだ。

00:38
And so we lift our gazes not to what stands between us, but what stands before us. We close the divide because we know to put our future first, we must first put our differences aside.

そして瞳を上げて見つめるのは、仲間同士の間に立ちはだかるものではなく、我々皆の前に立ちはだかるものなのだ。亀裂を塞ぐのは、未来を最優先すべきと知っているから。お互いの違いなどは脇に置いておくべきなのだ。

We lay down our arms so we can reach out our arms to one another. We seek harm to none and harmony for all. Let the globe, if nothing else, say this is true.

一人また一人お互いの腕に届くよう、自らの腕を横たえる誰も傷ついて欲しくない。求めるのはすべての人の調和なのだ。他でもないこの地球に、これだけは言わしめよう。それが真実なのだと。

02:05
That even as we grieved, we grew. That even as we hurt, we hoped. That even as we tired, we tried that will forever be tied together victorious. Not because we will never again know defeat, but because we will never again sow division.

哀しみに暮れつつも成長してきた傷つきながらも希望を捨てなかった疲れ果てて努力を続けることで永遠に団結する。

(Lilyの独り言:grieved-grew, hurt-hoped, tired-tried-tied をうまく訳したいが難しい)

02:25
Scripture tells us to envision that everyone shall sit under their own vine and fig tree and no one shall make them afraid.

聖書の教えは、思い浮かべよと説く。我々が自分たちの葡萄と無花果の木の下に皆が座し、何も恐れるべきものは何もない、そんな光景を。
(*ブドウ園に植えてある無花果の木陰は涼しく、最高の「安息の場」として聖書に書かれているそうです)

02:35
If we’re to live up to our own time, then victory won’t lie in the blade, but in all the bridges we’ve made. That is the promise to glade, the hill we climb if only we dare.

我々の時代を生きていくのであれば、勝利は刃の上ではなく自分たちが作り上げた橋の上にあると言える。それこそが約束場所立ち向かう気持ちさえあれば我々はその丘を登ることができるのだ

It’s because being American is more than a pride we inherit. It’s the past we step into and how we repair it.

なぜなら、アメリカ人であることは我々が受け継ぐ誇りだから。過去へ立ち返り、過去の過ちをどう修復していくのかということ。

02:57
We’ve seen a forest that would shatter our nation rather than share it. Would destroy our country if it meant delaying democracy.

我々は分かち合うのではなく国を粉砕する力を見てきた。民主主義を遅らせることで、我々の国を破壊してしまう力を。

03:07
And this effort very nearly succeeded.
But while democracy can be periodically delayed, it can never be permanently defeated

そしてその努力成功するまであと一歩のところへ来ている
民主主義の成就は、時として遅れをとっても、永久に打ち負かされることはない

03:18
In this truth, in this faith we trust for while we have our eyes on the future, history has its eyes on us. This is the era of just redemption. We feared it at its inception.

この真実、この信仰により、我々は信頼する。なぜなら我々が未来を見つめている間、歴史が我々を見ているから。今は贖罪の時代なのだ。それを始まりの時点で恐れていた。

03:32
We did not feel prepared to be the heirs of such a terrifying hour, but within it, we found the power to author a new chapter, to offer hope and laughter to ourselves so while once we asked, how could we possibly prevail over catastrophe.

そんな恐ろしい時代後継者になる準備などできてはいなかった。しかし、その中にあっても新しいページを綴り、自分自身に希望と笑顔を与える力を見つけたのだ。どうすれば困難な惨状から救われるのかを問うたけれど

03:51
Now we assert, how could catastrophe possibly prevail over us.
We will not march back to what was, but move to what shall be a country that is bruised, but whole, benevolent, but bold, fierce, and free.

今や断言できる。困難に我々が打ち負かされたりするものかと。過去へと後退するなどありえない。ただ前進するのだ。傷だらけでどっしりとして、優しくも、逞しく厳しくそして自由な国へと。

04:10
We will not be turned around or interrupted by intimidation because we know our inaction and inertia will be the inheritance of the next generation. Our blunders become their burdens. But one thing is certain.

脅しに遮られたり後戻りしてはならない。行動しないこと現状に甘んじていることは、次世代へそのまま受け継がれてしまうと知っているから。我々の過ちは次世代の足かせになる。しかし、一つ確かなことがある

04:27
If we merge mercy with might and might with right, then love becomes our legacy and change our children’s birthright.

もし、慈悲の心力強さ融合させ、力強さに権利融合させることができるなら、愛は我々の遺産となり、我々の子供たちが生まれ持つ権利の価値を変えて行ける。

04:36
So let us leave behind a country better than one we were left with. Every breath from my bronze-pounded chest we will raise this wounded world into a wondrous one.

だから、受け取った時よりもこの国をより良いものにして後世に残そう。私のブロンズ色に輝き鼓動する私の胸から吐き出される一息一息で、傷ついた世界を素晴らしいものに変えていく。

04:50
We will rise from the gold-limbed hills of the West. We will rise from the wind-swept northeast where our forefathers first realized revolution. We will rise from the lake rimmed cities of the Midwestern states. We will rise from the sun-baked South.

我々は立ち上がる西部の黄金に輝く丘から。我々は立ち上がる。先人の父たちが初めて革命を実現させた風吹きすさぶ北東の地から。我々は立ち上がる。湖に囲まれた中西部の町から。我々は立ち上がる。太陽の照りつける南部から。

05:05
We will rebuild, reconcile and recover in every known nook of our nation, in every corner called our country our people diverse and beautiful will emerge battered and beautiful.

我々は、国を隅々に至るまで再建し、和解させ、修復する。私たちの国と呼べる街角で、あらゆる個性を持つ美しき国民が傷ついても美しく輝くよう。

05:15
When day comes, we step out of the shade aflame and unafraid. The new dawn blooms as we free it. For there is always light. If only we’re brave enough to see it. If only we’re brave enough to be it.

時が来れば、我々は炎を燃やし恐れることなく日の当たる場所へと踏み出す。我々が自由へと解き放たれると同時に新しい夜明け花開くのだ。いつだって光はある。見る勇気さえあれば。その光になる勇気さえあれば

(スピーチは以上)

さて、最後になりましたが、ここで一つ重要な事実を一つ。

この素晴らしいスピーチを披露したアマンダ・ゴーマンさんは、実は言語障害をお持ちなのだそうです。

このスピーチは、彼女自身が自分の弱点を克服する挑戦であり、世界中の人々に勇気と希望を与える素晴らしいお手本になったと思います。

さあ、現状にうだうだ文句垂れてないで、がんばろう。私はそんな気持ちになりました。

書籍として発売されていますので、ご興味があればぜひ手元に置いて、折に触れ読み返すとよいでしょう。

Audibleも発売されました。オプラ・ウィンフリーさんが「はじめに」の部分を寄稿し、自ら朗読されています。会員ならたったの280円!

Audibleで聴けるスピーチ集

他にも、Audibleで色んなスピーチが聴けます。ちょっと目移りしてしまいますね。

こちらは、キング牧師、マザーテレサ、ガンジー氏などのスピーチが収録されています。

ケネディ大統領、オバマ大統領など歴代大統領や著名政治家のスピーチが収録されています。音声や表現からも時代の流れを感じます。

amazon創始者ジェフ・ベソスやマイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブスなど、ビジネスリーダーたちのスピーチはこちら。

こちらは、歴代ファーストレディたちのスピーチです。

こちらは音声ダウンロードで聴ける書籍です。文字があるので安心して勉強できますね。


英語を習得したい、上手くなりたいというのは多くの人の普遍的な希望ですよね。こうすればいいよと言葉で表現することのむつかしさをかみしめています。楽しくて自然に英語が身に付いていくような、そんなコンテンツの発信を目指しています。