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庭に春時雨


 この一週間は北九州でも不安定な天候が続いた。暖かくなったと思えば急に気温が下がり、強風が吹き荒れ、雨が降る。晴れて静かになったと思ったら今度は黄砂。黄色く霞む空を見上げる度に自ずと呼吸も浅くなりがちだ。
それでも雨が降ると無性に草花の写真を撮りたくなるのは、目の前の光景が突然輝き始めるからだ。春時雨はるしぐれは庭の春色をいっそう際立たせてくれる。




 我が家の庭は、とても全体をお見せできるような大層なものではないが、先月の梅の花を皮切りに所々春らしい花が一斉に咲き始めている。
12月で終わるはずだったマリーゴールドはとうとう3月上旬まで咲き、今はその後を引き継ぐように、ビオラの花が急に勢いを増している。
昨年植えたユスラウメは枯れてしまったかと思っていたら、小さな花が咲き始め、隣の沈丁花と並んで日本的な春らしい雰囲気を周囲に漂わせている。

ツワブキやカラー、アイビー、南天、紫陽花など以前からこの庭で暮らしている先輩たちも揃って新葉が伸びてきた。芽キャベツ、葉牡丹はじっくり地道に達磨大師のように座っている。
チューリップとダッチアイリスが仲良く同じ日に咲き始めた。気付かないうちにスノードロップはミニ薔薇の茂みの中からひょっこり顔を出していた。フリージアは小さい割にまだ蕾のままだ。

先日裏庭に植えたばかりのブラックベリーとラズベリーは根付いたようで、早くも新葉が伸びている。瘦せた土地でも育つ強さを秘めているようだ。
若い頃に住んでいたアパートのベランダにもブラックベリーの鉢植えがあった。フェンスいっぱいに蔓が絡み、小さな花が咲き、たくさん実をつけた。先に見つけた者勝ちという野鳥との熾烈なバトルが結構楽しかった。

数か月前にご近所から花月(カネノナルキ)の小さな苗を頂いた。鉢植えにして雨の当たらないベランダに置き、まったく水をやらずに放置していたら、かわいい花を咲かせたので驚いた。空気中から水分を吸収するので水やりはいらないそうだ。
市内のバラ園で頂いた4種類の薔薇たちはすべて品種が異なるにも係わらず、小さな葉が一斉に芽吹いた。あと1カ月半もすれば咲き始めるだろう。




    植物園や公園の草花も綺麗だが、庭で育つ草木はたとえどんなにありきたりなものであっても、じっと見入ってしまうような親しみを感じる。
特に視点を地面近くに下げた時に見えてくる雨上がりの庭は、普段見慣れた風景とはがらりと様相が一変し、天と地が織り成すドラマティックな小宇宙が現れるのが面白い。

植物たちは一年中休むことなく刻々と変化する天候に身を委ね生きている。冬を乗り越えたご褒美のように、天の恩寵はすべての草木に平等に届けられる。埃や黄砂も綺麗に洗い流され、魔法をかけられたように瑞々しく蘇り、再び逞しく成長する季節を迎えた。

そこには「待つこと」の美しさがある。













































































































Here's That Rainy Day
ゴンサロ・ルバルカバ



ありがとうございます






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