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風景

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身の回りにある様々な風景を撮った写真は撮影者ではなく、見る人の心を映し出す鏡。
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2023年1月の記事一覧

洞海湾を渡る3分間の船旅

 北九州市北部、若松区と戸畑区は関門海峡に通ずる洞海湾によって隔てられている。この湾を横断する主要な交通路は、国の重要文化財でもある「若戸大橋」とそのすぐ横にある「若戸トンネル」の二つ。 そしてもう一つ「若戸渡船」は今も地域の「足」として欠かせない交通手段だ。毎日朝から晩まで10~20分間隔で運行されている。特に朝夕の通勤通学の時間帯は、自転車に乗った乗客などで混み合う。船を降りてから近くの駅まで行くのに便利だからだろう。 「渡し舟」という言葉には妙に懐かしい響きがある。と

優しい独り言

九州南部巡り旅⑤ (最終回)  巡り旅を締めくくるのは最終目的地、宮崎。 南国の青い海と輝く太陽。年間降水量が少なく、一年を通じて温暖。プロ野球の春季キャンプ地。星飛雄馬が日高美奈に告白した夜の日南海岸…。 いろいろなことが思い浮かんでくる。 美しい景色ばかりではない。この気候の良さが宮崎牛というブランド牛を生み出した。 ブランド牛は但馬牛や飛騨牛、米沢牛、前沢牛、仙台牛など様々。今は東京以外46道府県全てにご当地ブランド牛が存在し、銘柄数は200以上。その中でも近江牛、

庭の木漏れ日

九州南部巡り旅④ ミュートトランペットにも似たツルの歌声を背にしながら、夕闇迫る出水を後にする。その日の宿泊地は鹿児島市内。静かな山並みを走り抜けること1時間半。長崎でも見た路面電車が走る穏やかな街だった。  鹿児島に行きたかった一番の目的は「桜島」。海の向こうに噴煙を上げながらそびえ立つ活火山をこの目で見て感じたいと以前からずっと思っていた。 火山は、人々の暮らしに恩寵も災禍ももたらす創造と破壊の神の化身のような、自然界のシンボリックな存在だ。元々島であった桜島

坂と石畳の街「長崎」

九州南部巡り旅①  北九州を午後遅くに出発し、車で南へと向かう。この年末年始は長崎、鹿児島、宮崎の九州南部三県を巡った。通過する佐賀、熊本、大分を含めれば、ほぼ九州を大雑把に一周したことになる。 最初の目的地長崎に着いた時、街はすでに日が暮れていた。インター出口を抜け幹線道路に入る。するといきなり目の前に路面電車。同じ道を並走するのは初めてだ。交差点の信号機に見慣れぬ矢印のマーク。いったい何を意味しているのか分からない。信号機が青になっても前の車は発進しない。路面電車優