海外ハイク#7 「悲劇と絶景の渓谷」 Truso Valleyの行き方/楽しみ方 @ジョージア
Truso Valley(トゥルソー渓谷)。
ジョージア北部のカズベキ地区を起点に、南オセチアという地域に11KM伸びる渓谷ハイキングコースです。広大な地形が織りなす絶景に言葉を失います。キリスト教のモニュメント、古代の城壁、極彩色の温泉などといった、ハイカーを飽きない魅力を持っています。
それに加えて、このハイキングでは、ジョージアの人々にとって悲劇的な側面を感じることができます。このコースの先には、南オセチアという地域があります。もともとこの地域は、ジョージアの一部でしたが、分離独立とロシアの支援をきっかけに、2008年、ジョージアと南オセチア+ロシアが衝突しました。この戦争により、民間人を含めた死傷者を出ただけではなく、この戦渦が理由に数万人の人々が棲家を追われました(このリンクより)。ジョージアの人々にとって、21世紀に起こった傷がまだ新しい戦争のきかっけとなった、複雑な場所でもあるのです。
何度も言わせていただきます!!
ジョージアは登山/ハイキング好きにとって最高の国です。
コーカサス地方の小国でありながら、世界中からアウトドア好きが足を運びます。
今回の記事はTruso Valley(トゥルソー渓谷)コースを紹介します。多様な自然美&歴史的側面が垣間見える見どころたくさんのコースです。
本記事では、
Truso Valleyとその周辺の見どころ、
登山の概要や難易度、
装備や注意点(天候など)、
実際の行程(体験記)
アクセスや宿泊について
シェアしていきます。
本記事では
①Truso Valley(トゥルソー渓谷)ハイキングに挑戦したい方が
無事に帰って来れるような役立つ情報を提供する
②ジョージアの魅力が伝わる
③これから旅をしたいな思っている人にも少しでも参考になる
ことが目標です。
最後まで読んでいただければ幸いです!!
これ先から下線が引かれている地名は、
クリックするとGoogle Mapに飛ぶようになっています。
是非、参考にしてみてください。
また地名の()内にMapsMe内の名称も記載しておきます。
Truso Valleyとその周辺の見どころ
[Truso Valley(トゥルソー渓谷)。]
Kvemo Okrokanaという村を起点に片道10.5KM伸びる渓谷。広大な地形が織りなす絶景に言葉を失います。キリスト教のモニュメント、古代の城壁、極彩色の温泉などといった、ハイカーを飽きない魅力を持っています。
10.5KM以上は進むことができません。南オセチア(ロシアの援助によって分離独立させられた地域)の国境警備があるからです。南オセチアという21世紀の戦争という地に向かう、歴史的に興味深いハイキングコースだと思います。
[南オセチア]
本記事に紹介するハイキングコースの先には、南オセチアと呼ばれる"国"があります。先述したように、ロシアによる軍事支援のもと、ジョージアより分離独立した地域です。2008年に独立戦争に発展し、ジョージア、ロシア、南オセチアにて、死者や怪我人がでたただけではなく、数万人もの人々が故郷をを追われました。
私のジョージアの友人の父も、この戦争で戦友を一人失っています。復讐に燃えた友人の父は、現在もなお続くロシア-ウクライナ戦争にて、ウクライナ軍に従軍しました。洗練された狙撃手であることから、ウクライナに従軍した外国人兵のトレーニングを担当していたそうです。ミサイルの爆撃により、聴覚を失い、現在はジョージで療養しているそうです。この戦争の連鎖も、南オセチアを舞台にした悲劇の断片です。
私はジョージアの友人がいて、何方かと言えば、ジョージアよりの発言になっていますね。もちろん、ロシアでも南オセチアでも、家族や友人を失った人はいるでしょう。
ちなみに、ハイキング自体は安全なので、ご安心ください!!
[ザカゴリ要塞(Zakagori Fortress)]
標高2243M、Truso Valley(トゥルソー渓谷)の最終地点に鎮座する要塞です。Zakagori(ザカゴリ)という村に位置し、昔から国境防衛の見張りの拠点として使用さていたようです。要塞内の観光は無料です。帰路に備えて、日陰でランチを食べるのがおすすめです。
[アバノ村/廃墟の村々]
このハイキングコースでは、無人の、または、ほとんど人が住んでいない過疎の村が点在しています。ジョージア伝統の石造の家や、昔からこの地を見守ってきた要塞などを見ることができます。
アバノ村では、とんがり屋根のかわいい建物も楽しむことができます。アバノ村では、観光客のために飲み物や軽食の販売をしています。ザカゴリ要塞(Zakagori Fortress)に到着する前にある村なので、必ず通過すると思います。
[アバノ湖]
ミネラル豊富な温泉が湧き出ているため、色彩の豊かな湖の写真をとることができます。遊泳禁止とのことです。
[セパンツミンダ(Sepantsminda)の町探索]
Truso Valley(トゥルソー渓谷)最寄りの起点となる町です。4000〜5000M級の山々に隔たれた、まるで鳥籠のような町です。この町から数キロ北に運転すればロシアの国境にたどり着くことができます。この町の見所は、登山、ゲルゲティ・トリニティ教会でけではありません。ただ、ぼうっとするんです。ただ、ぼうっと、孤立した田舎で山をただただ眺めてみるのも一興だと思います。また、ジョージア独特の石作りの家もまだまだ点在しています。
[縦長ハチャプリ]
みなさん、お待たせしました。ジョージアといえば爆食をそそるグルメですね。その中でも一際人気なハチャプリと呼ばれる食べ物。この言葉を翻訳すると「チーズパン」です。様々な形を持つハチャプリですが、このセパンツミンダ(Sepantsminda)では、世に珍しい縦長のハチャプリが堪能できます。町でたった一つのパン屋があります。地元民やロシアとジョージアを行き来する運ちゃん、そして観光客からも愛させる至極のハチャプリを味わってはいかがでしょうか。ちなみに、登山後の熱々のハチャプリは、天に昇る味でした。
登山の行程と注意点
これ先から下線が引かれている地名は、
クリックするとGoogle Mapに飛ぶようになっています。
是非、参考にしてみてください。
また地名の()内にMapsMe内の名称も記載しておきます。
概要
ハイキング日:2023年9月5日
合計所要時間:約7時間40分
トレイルスタイル:アウト&バック
歩行距離: 22km
歩行時間: 約6時間
最高標高: 2251M
開始標高: 2040M
歩行開始地点: Truso Valley Start Point
往路終点:ザカゴリ要塞(Zakagori Fortress)
歩行終点:Truso Valley Start Point
9:15:Moutain Freak事務所出発
↓車移動
9:40:Truso Valley Start Point(ハイキング開始地点)
↓
10:40:十字架の彫刻(Historic Wayside Shrine )
↓
11:30:教会のゲート(St. 12 Apostles Monastery of Abano)
↓
11:40:アバノ村(Abano)
↓
12:10:ザカゴリ要塞(Zakagori Fortress) (30分お昼休憩)
↓
13:00:アバノ村(Abano)
↓
14:00:アバノ湖(Abano Lake)
↓
15:40:Truso Valley Start Point(ハイキング開始地点)
16:00:Mountain Freak スタッフが迎えに来る
↓車移動
16:40:Moutain Freak事務所
難易度
体力 :★★★☆☆
技術 :★☆☆☆☆
アクスセス:★★★☆☆
(★が多ければ多いほど難易度が高くなると考えてください。)
(体力/技術はYAMA HACKの基準を参考にしています。)
・体力面
登り降りが少ないもコースで、絶景を楽しめるのが本コースの見所です。一方で、留意点としては、合計22KMの距離をふむことになります。また、今回のハイキングでは、タイムリミットがあります。公共交通機関がないため、車をチャーターすることになります(詳しくはアクセスにて紹介します)。9:40からハイキングがスタートして、16:00に車が迎えにきてくれます。22KMを約8時間以内に戻ってくる必要があります。
・技術面
単純明瞭な道を進んでいきます。技術が必要なセクションもありません。
・アクセス
すべて公共交通機関+ツアー会社がチャーターする車でアクセスが可能です。詳しくは、下記の「アクセス」にて紹介します。
ハイキング前に知っておきたいこと
・おすすめのシーズン
どの季節にいっても、楽しめます。天候が安定していて、もっとも温暖な時期である5月下旬から10月上旬がいいかもしれません。冬場は、渓谷の両側の山が雪化粧になるので、幻想的な風景が楽しめます。
・気温と天候
渓谷に挟まれた地形のため、天候が変わりやすいです。念のため、春秋用のダウンがポンチョや耐水性の高いアウターを用意しておきましょう。
・ロシア国境
ザカゴリ要塞(Zakagori Fortress) を終えると南オセチア(実質ロシア領)です。ザカゴリ要塞(Zakagori Fortress) 以降は先に進まず、引き返してください。本コース自体に危険はありません。しかし、ジョージアと南オセチアの関係を考慮すると、ザカゴリ要塞(Zakagori Fortress) 以降に進んでしまうと、トラブルに巻き込まれる可能性があります。とにかく、先に進まないこと!!
装備
1.服装(9月上旬)
20Lバックパック/フリース/ダウン/ウィンドブレーカー/Tシャツ/長ズボン/ショートパンツ/山ぐつ/靴下(秋冬用)
2. 飲食物
水/軽食/お菓子
3. ガジェットやアプリ
スマートフォン / オフラインマップ(MapsMeなど)/Windy(おすすめの天気アプリ)
写真で眺める実際の行程
9時5分Mountain Freaks集合
カズベキ(セパツミンダ)に到着した3日前に、Moutain Freaksにて、シャトルバスを予約しました。ハイキング当日、9時5分に同オフィスに到着し、9時15分のシャトルバスを待っていました。
レセプションに行くとチケットがもらえます。このチケットが購入の証拠になるので、なくさないように!!9時15分定時に出発しました。隣に座ったポーランドから来た人とフィルムカメラで盛り上がり意気投合しました。風景写真をフィルムカメラでおさめているそうです。私は何方かと言えば人を撮る方が好きなので、品評会をしました。
9:40に到着。初っ端で道を間違えてしまう人がいるようなので、ここでもいちよう道を紹介しておきます。到着したら、最初の橋を渡っておきましょう。
序盤は、常に川(Terek River)が左側にありように歩きます。
右側にはなんだかかわいい村があります。子豚を育てているお家があって、ちぎれんばかりに尻尾をふっていました。
しばらく歩いていくと、いよいよきりたった山に挟まれた狭い渓谷があわられます。
この道をずっと進むと橋があるのでそれを渡ります。橋を渡って、次は川(Terek River)が右手側にある状態で歩きます。
比較的平坦の道を進むので、天気がいい時は本当に気持ちのいいコースです。川の音と、狭い谷から開けて見えてくる風景に、高揚感が増していきます!!
途中この川を渡る橋(Truso Cafeの近く)が見えてきますが、まだ渡らないで!!その橋は帰り道です。ずっと川を右手に歩いていきましょう。
とにかくまっすぐ歩き続けると、キリスト教を思わせるモニュメントがみえてきます。その先にはただただ高原と山々が連なっています。ポツンとそこにあるモニュメントからは、誰かに作られてから、何年もここで吹き抜ける谷の風を浴びてきた寂しさを感じました。
電線
さらに道を進んでいくと、私のお気に入りの風景に巡りあいました。
この先には戦争で失われた南オセチアがあります。その方向に向かって、広大な渓谷を縫って電線が続いていました。私はなぜか、だだっ広い場所に、ずっーと電線が続いている風景が好きです。なぜかはいまいち分からない。
この電線を辿っても、誰一人住んでいない村があるだけでした。それでも先に、電線がつづている。
アバノ村
この橋を渡り終えたら、アバノ村ももうすぐです。この橋を渡る前に、小さな村があり、その村おじいさんに、チャイを飲むか誘われました。帰りのシャトルバスの時間が気になるし、現金もあまり持ち合わせていなかったので、断ってしまいましたが、今思えば、あのおじいさんのチャイを飲めなかったこと、少し後悔しています。人生変える劇的な瞬間よりも、なんだか不思議と記憶に残る瞬間を欲している私にとって、あのチャイを飲めなかったのが痛ましく思えます。
さて、橋を渡り終えると、ゲートがありその先には教会がありました。
電線はさらに西に伸び、いよいよアバノ村が見えてきました。かわいい家々と、その近くに旅人に飲み物を売るお店などがありました。また、黒い服に身をつつんだ僧侶らしきもいまいした。険しい面持ちのため、話しかけられませんでした。
そして、この村から1時間も歩けば、このハイキングの終点のザカゴリ要塞です。いつ建設されたかも特定されていないようです。
この要塞内でランチ休憩をしている、スイス/ドイツのカップルと会話になりました。世界を自転車で旅をしているとのこと。なんだか、また会えそうだね、と向こうが言ってくれてました。連絡先を交換しませんでした。確かに会えそうな気がしたからです。
この要塞の先には、南オセチアとの国境があります。2008年に勃発した
帰り道(アバノ湖へ)
帰り道は、少し別の経路で帰ります。先程アバノ村に来るために渡った橋を渡らず、まっすぐ進みます(つまり、川が右手にある状態)。アバノ湖に向かうためです。車が通った跡があるので、迷いづらいと思います。
ザカゴリ要塞から歩くこと1時間半。アバノ湖に到着しました。源泉は鮮やかな青で、そこから流れ出た跡の水底は深い赤色です。
アバノ湖からは、下の写真のように細い道が続いているので、そのまままっすぐ進みます。
いずれ、序盤でスキップした橋(Truso Cafeの近く)を渡れば、狭い渓谷まで戻ってくることができます。あとは、元来た道を戻るだけです。16:00出発のシャトルバスバスに間に合うように、歩いていきましょう。22KMという距離でしたが、様々な風景、動物、気持ち、人に巡り会えて、あっという間に感じました。
その夜、宿泊先のオーナーのお母さんが、翌日のパーティーに向けて食事の準備をしていました。私も彼女の料理作りを少し手伝いました。といっても、手慣れていないので、ちょっと迷惑だったかも。それでも、お礼としてハチャプリとヒンカリをいただきました。ハイキング終わり+母の手作りということもあり、天に登る味でした。
アクセス(行き方/帰り方)
首都トゥビリシからの行き方を記載しておきました。電車とマシュートゥカを通して移動が可能です。是非参考に!!
[トゥビリシ市内→Didube駅]
手段:地下鉄
価格:1Gel
所要時間:乗る場所による
出発場所:トゥビリシ市内の地下鉄駅
到着場所:Didube駅
市内の地下鉄であれば、どこから乗っても同じ1GELで乗ることができます。朝6時からかなりの頻度ででています。決済はすべてMetroMoney cardと呼ばれる交通ICカードで行われます。カードの購入やチャージはすべて駅内で可能です。どの駅からの乗車しても一律1GELです(2024年8月時点で)。カズベキ山に早い時間に到着したい場合は、朝6時に乗れるように準備をしましょう。
[Didube駅→Didube Bus Terminal]
手段:歩行
所要時間:10分(迷わなければ)
出発時間:朝7時から1時間1本の頻度
出発場所:Didube駅
到着場所:Didube Bus Terminal
駅から、地下に向かうように進みます。とにかくに地下に!!地下にでたら左に曲がります。それ以降はとにかくまっすぐ進みます。下の写真から順路を参考にしてみてください!!
[Didube Bus Terminal→セパンツミンダ(Sepantsminda)]
手段:マシュートゥカ
価格:15GEL(現金)
所要時間:3時間〜4時間
出発時間:8am, 9am, 10am, 11am, 12pm, 1pm, 2.30pm, 3.30pm, 5pm, 6pm & 7pm
出発場所:Didube Bus Terminal
到着場所:カズベキ(セパンツミンダ(Sepantsminda)の町のバス停
夏は混み合います。マシュートゥカに着いたら、運転手さんにすぐにお金を払い、荷物を席に置いて確保します。私の場合は時間通りに出発しました。大きい荷物は車の後部や足場に置かれます。汚くなってもいいバックパックを持っていくといいですね。ちなみに、マシュートゥカ乗り場付近に、マーケットがあるので小腹が空いてもいいようにバナナなどを買っておくといいです。トイレ休憩あり。
到着場所はカズベキ(セパンツミンダ(Sepantsminda)の町のマシュートゥカ乗り場で下車します。同じ場所から帰りのマシュートゥカに乗るので、場所を覚えておいてください。
また、セパツミンダの下町から登山口までも20分から30分ほど歩きます。もしも登山する予定があるなら、前日に、登山口付近の宿を取っておくといいでしょう。ただし、登山口付近には、ハチャプリのお店やスーパーマーケットがありません(あるけど割り増しの値段です)。つまり、セパツミンダの町に着いたら、食べ物の買い出しを済ませることが先決です。マシュートゥカを降りたら、このパン屋さんに行ってみてください。ハチャプリやロビアニをまとめ買いするのをおすすめします!!また、スーパーはこちらのリンクから!!
[セパンツミンダ→Truso Valley Start Point(ハイキング開始地点)]
手段:シャトルバス
運航日:5月1日〜10月30日まで 毎日
価格:45GEL(往復の価格)
所要時間:25~40分
出発時間:9:15 または 11:15(帰りの時間はそれぞれ16:00 / 18:00)
出発場所:Moutain Freaks
到着場所:Truso Valley Start Point(ハイキング開始地点)
5月1日〜10月30日まで 毎日、ジョージアでアウトドア企業Moutain Freaksがシャトルバスを運行しています。予約はこちらのリンクから、または、Moutain Freaksで直接予約することができます。返金ルールが厳しいので、天気を確認した後に予約をしましょう。Moutain Freaksの事務所は、セパンツミンダに到着して、5分以内の場所にあります。マシュートカから降りて、直接向かって予約してもいいでしょう。また、携帯ガスタンクも購入可能。そも他にも有名なJuta(私も次回は必ずいきたい!!)へのシャトルバスのサービスもしています。
帰り方
帰り方は以上の逆をやれば大丈夫です。トゥビリシ→へ帰るためのマシュートゥカの時間は、7am, 8am, 9am, 10am, 11am, 12pm, 1.30pm, 2pm, 3.30pm, 5pm & 6pm(2024年8月時点)です。バス停は、こちらのリンクから。このバス停の運転手に直接お金を払います。
この度も本記事を読んでいただきありがとうございました。
ようやく、パソコンが手元に戻ってきたので、タスマニアからジョージアの記事に切り替えました。
次回は世界のトレッカーが憧れるジョージアの伝説のコースを紹介します!
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