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【#ハイつま】番外編:ヒットの種は【0.5歩先】に埋まっている

ハイカジ遊んでますか? どうも、浮雲です。

今回の【#ハイつま】は、またまた番外編です。気を付けないと、番外編がメインみたいになりそう。
それはさておき。
今回のテーマは、『ヒットの種は【0.5歩先】に埋まっている』です。

前回書いた『ヒットする』ということにも繋がる内容になっているので、よろしければそちらもご一読ください。

『オリジナリティ』という罠

ゲームに限らず【ものづくり】をしていると、必ずといっていいほど出てくる『オリジナリティ』という概念。似たものとして、『新規性』『独自性』『新感覚』なんてのもありますが。

これらはすべて、いわば【危険物指定の概念】です。

もちろん、『オリジナリティ』が大事なのは間違いないですし、うまくやればヒットに繋がるものであることは確かです。ただ、扱い方を間違えると大事故になる【諸刃の剣】でもあります。
事実、皆さんも身の回りや過去に目を向けてもらうと、思い当たるものがチラホラあるのではないでしょうか?

では、何がそんなに【危険】なのか。それを説明していこうと思います。

『新感覚』は、誰も知らない

分かりやすいところで、『新感覚』を例にとってみます。

私自身、ディレクターやプロデューサーとして、これまでたくさんの企画書をチェックしてきたのですが、そういった企画書のコンセプトなどに『新感覚ホニャララ!』みたいな文字が踊っているのをイヤというほど見てきました。

うん、分かる。気持ちはよく分かる。

見た人の気を引くために、そりゃあキャッチーなフレーズ入れますよね。
『新』とあるからには、今までにない画期的なアイデアなのかもしれない。

でも、落ち着いて考えてみてください。
「今までにない」ということは、まだ誰も知らないということでもあるのです。つまり、その「面白さ」も誰も知らないということです。

これでは、魅力を伝えるのはなかなかに難しい。

『痒い所に手が届く』くらいがちょうどいい

ところで、『オリジナリティ』は、なにも無から有を産むような【ゼロメイク】ばかりではありません。むしろ【ゼロメイク】はその新しさ故に、前段で書いたようなユーザーに届かず消えていくリスクも孕んでいます。

これは、自分の視点をユーザー側に切り替えてみると分かりやすいですが、「よく分からないものにお金を出したくない」という、ごくごく自然な消費者心理が働くからです。これを回避するためには、どうすればよいか?

ときに私は、ポテトチップス大好き人間だったりします。
昨今いろんなフレーバーが増えましたよね。コンビニで新商品を見つけるとワクワクします。

コンビニで新商品を見つけたときに、それが例えば

『コンソメワイルドパンチ』

というフレーバーだったなら、「『コンソメパンチ』美味しいし、ワイルドってことはさらにガツンとくる味なのかな」みたいに、『既に知っている味プラスアルファ』で美味しさのイメージが出来ますよね。

またその隣にある新商品が、

『(どっかのすごい)岩塩味』

というフレーバーであったとしたら、「『うすしお』ですら美味しいのに、どっかのすごい岩塩なんてそらもうすごそう」といった感じで、こちらも『知ってる味の進化系』として美味しさのイメージが出来ます。

ところが、さらにその隣の新商品が、

『(知らない国)風(知らない料理)味』

というフレーバーだったとしたら、どうでしょうか?
どこかの国の何かの料理をベースにしたのはわかるし、確かにその料理は美味しいのかもしれない……でもわからん。さすがに見たことも聞いたこともない料理の味は想像がつきません。
これだと、ちょっと手を出すのをためらっちゃいますよね。

人は、基本的には「損をしたくない」と思っています。それは金銭だけでなく、「不味い」とか「楽しくない」とかの心理的な損失でも同じです。そして逆に考えるならば「得をすれば嬉しい」ともいえます。
そこで、個人的に一番狙うべきだと考えているのは、「ゼロを1にする」ア
イデアよりも、「マイナスをゼロにする」アイデアです。

なぜなら、「ゼロ」の状態であれば特に不満も生まれず、満足してしまっているひともいるかもしれませんが、「マイナス」の状態はすでに損をしているので、それが解消されれば確実に「得をする」からです。

つまり、不満を解消する、『痒いところに手が届く』ようなアイデアが、最も『ヒットする』可能性を秘めていると考えています。
そしてそういうアイデアのことを、個人的に『0.5歩先のアイデア』と呼んでいます。

歩幅2歩3歩分では、先を行きすぎる。
1歩でも、一部のひとには大きすぎて伝わらないかもしれない。
0.5歩先くらいが、多くの人に伝わるちょうどいい新しさ具合なのだろうと。

踏み出すならば『0.5歩先』

私が好きな『0.5歩先のアイデア』のエピソードのひとつに、高尾慶二さんという方の『写メール開発秘話』があります。
メルモさんという方がnoteにキレイにまとめてくださっていたので、ぜひそちらを読んでいただければと思うのですが。

(一部抜粋)
観光客が皆、絶景を目の前にして窓の外を見ているのに、一人の女性が景色を見ずに、携帯でメールを打っている人がいたこと。
「あ、うちの商品だ。あれ?この人は何故、景色を見ずに携帯ばかり見ているのかな?」
その時、
「もしかしてこの人は、今見た景色の感動を、誰かに伝えようとしているのかもしれない!もし携帯にカメラが付いていて、今伝えたい感動を誰かと共有できたら最高じゃないか!」と。

つまり、「伝えたいのにぱっと伝えられない」というもどかしさを解消(マイナスをゼロに)するアイデアだった、というわけです。

この高尾さんという方は他にも、

・未読メールを知らせる「封筒マーク」
・電池残量が一目で分かる「電池ピクト」
・メール送信時に紙飛行機が飛んでいる画像を表示

などを生み出されており、どれも素晴らしい『0.5歩先』ばかりで本当にすごい方だなぁと思います。

高尾さんがこれほど『0.5歩先』に行けた理由は、『写メール』のエピソードにも表れているように機能よりも人(ユーザー)を見ていたからではないかと推察します。

「伝えられなくてもどかしい」
「メールが来てるの気付かなかった」
「いつ電池が切れるかわからなくて心配」

そういったユーザーの不満や不安を見逃さず、多くの人に分かる形で解消する『0.5歩先のアイデア』を出す達人だったのではないかなと。

ゲームの企画書作成やゲームデザインにおいて、『ターゲットユーザーを決める』ことが重要だと言われるのは、そこから『0.5歩先のアイデア』が生まれてくるからなのです。

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以上、前回の『ヒットする』ということからもう0.5歩踏み込んで、『ヒットの種』の見つけ方について深堀してみました。

このままだとハイパーカジュアルゲーム関係なさすぎなので、最後に少し触れておこうと思います。
ハイパーカジュアルゲーム市場においては、『0.5歩先』どころか『0.1歩先』くらいのものがバンバン出ているのが現状です。要は、『ヒット』したタイトルはすぐに真似されて、クローンで溢れかえります。

ただその中でも、近すぎて「同じやん」となるわけでもなく、遠すぎて「なにこれ?」になるわけでもない、ちょうどいい『0.5歩先』のアイデアを見つけたタイトルが、次の『ヒットする』タイトルになっている印象です。

まさに「生き馬の目を抜く」ような世界ではありますが、「次はこう来たか!」と思いながら、日々アプリストアのランキングを眺めております。

それでは、次回の【#ハイつま】をお楽しみに!

※何か質問や聞いてみたいテーマがあれば、以下の質問箱からどうぞ!


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