「あいだ」こそが大事だとわかる中範囲理論(実践と理論の融合)
大学院で学ぶ「学習のデザイン」。前回につづけて理論について、今回はレイヤーの観点から整理してみます。
理論の階層
まず、すごく大きな話から入ると、理論の枠組みはこんなレイヤー分けで成り立っています。
哲学レベル:概念・存在論・世界観などメタ的な問い
理論レベル:理論のなかでの階層
実証レベル:方法論・アプローチ
上位はWhyで下位がHowのレイヤーですが、どれも〜論と呼べるような項目になっています。この上下の関係に対して、左右が実践の関係と考えると、関係性がわかりやすいかと思います。
そして、理論レベルの中にも3つの階層があります。
大理論
中範囲理論
小範囲理論(実践理論)
今回はこの中で、中範囲理論に着目します。
大と小のあいだの中範囲理論
中範囲とは真ん中のことで、大理論と小範囲の間ということになります。
例えば学校について、考えてみましょう。
学校での大理論は、「人は学ぶ必要がある」だとします。かなり広くて概念的で、これだけだと具体的な議論ができないので、「学校で教わる算数は何の役に立っているのか?」を考えてみます。
今度は具体的なので話はできるけど、ここだけを話していると「計算機がこれだけ進歩したのに、何で自分の力で問題を解けなければいけないの?」といった、本来の目的との距離が遠くなることがおこります。
ここで必要になる考え方が「人はいま学ぶべきことは何なのか?」といったことだと思います。これが中範囲の理論になります。
あいだに着目したマートン
中範囲理論はロバート・マートンという1900年代の社会学者によって提唱された理論です。
その当時、社会学では人間社会全体を捉える、マクロレベルの考えが普及していましたが、それだとわからんという批判もあがってました。(社会学の授業で前にまとめましたが、ここではマクロへの批判という位置付けで書いてます)
細かく考えれば階層はもっと多段階あるのかもですが、それこそあまり具体的にしすぎず、かといって極論にもならない3つという分け方はとても、理論的に考えやすい整理方法だと思います。
別の授業で、パターン・ランゲージを考える機会があったのですが、そこでも言葉を設定するときに「中空の言葉」を意識することを学びました。
抽象と具象のあいだのちょうどよいレベルは、日々の仕事とか会話などでのトレーニングで身につけられるので、意識しておきたい思考法です。
中範囲理論と実践
中範囲理論のよい点は、予測できる理論になることであり、実践に役立てられるということです。
「天気は移り変わるものだ」という大理論は、世の中の普遍性を説いているけど、そんなこと知ってても、明日雨が降るのかが分からなければ役に立ちません。でも気圧や雲と雨の関係が理論かできていると、明日は雨だから傘を持って行こう、というように予測が立てられます。
小範囲の理論だと、すごく限定的な範囲でしか使われないので、発展させることが難しくなります。北海道出身の僕にとっての適切な服装と気温の関係といった小理論があっても、他人にとっては、僕の服装を予測できたところでほぼ何の役にも立ちません。
なので、理論を理論で終わらせず、自分だけの暗黙知に閉じないためには、中範囲の理論と実践の行き来が大切だといえます。
学んだこと
理論というと概念的すぎて、実践とは対立関係にあると思っていましたが、融合する領域があることに気づいたのが、今回の学びです。
話がそれますが、僕は2x2より3x3で整理する方が、両極端ではない間を拾うことができるので、ものごとを考えるときによく使っています。
デジタルだったら0-1で考えられるけど、人とか社会の成り立ちはその間にグラデーションがあって、でもそれを1つ1つ見てたらキリがないから、間の1つに位置付ける考えこそ、まさに中間の理論です。真ん中の存在は大事です。
今日はここまでです。