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学校の「当たり前」をやめた。(探究演習)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。春休みなので今回は本の紹介です。

今日とりあげるのは、工藤勇一さんの本です。

教員の方です。麹町中学校の校長のときにいろいろな教育改革を行った方であり、現在も横浜創英中学校・高等学校の校長として教育現場に携わっている方です。ウェブ上にいろいろなインタビュー記事を読むことができます。

たくさんの本も出ていますが、その中でガツんと頭に入ってくる本を2冊紹介します。1冊目はこちら。

学校の当たり前を見直す

この本の中では、次のような「当たり前」を変えたエピソードが紹介されています。

  • 宿題を全廃した

  • 中間テスト・期末テストを全廃した(単元テストは実施)

  • クラスを全員担任制にした

  • 運動会のクラス対抗をなくした

  • 服装を自由にした

内容ももちろんですが、これを実施した麹町中学校は公立学校というのがさらに驚きです。ですがフォーカスすべきは個々の内容ではなく、なぜこのようなことを行なっているのか?という点です。

本書の中では「学校の最上位目標は何か?」ということが繰り返し述べられています。学校は何のためにあるのか?という問いです。

最上位目標を徹底する

勉強して賢くなるためでしょうか?それであれば塾で十分かもしれません。友人同士のつながりをつくるためでしょうか?全員が密な交流関係を持ちたいわけでもありません。では社会規範を身につけるためでしょうか?いや、社会に出ない環境で規範を学ぶことはできません。

この本の中では最上位目標を「世の中まんざらでもない、大人って結構素敵だ」と教えることに設定しています。そのために学んでほしいことブレイクダウンして施策につなげています。

最上位目標から考えると、宿題やテストの廃止はやらされる学習からの解放で、担任の廃止は学級王国をなくしてチーム医療のように機会の公平性を生徒に提供するためであり、クラス対抗や服装の自由化は生徒自身で考えた結論の結果となります。

最上位目標から納得解を見つける

改革的な内容が多いので校長の独断で決めたように見えますが、実際はその逆で、生徒たちの話し合いを何よりも重視しています。

クラス対抗をやめた背景には、クラスの1割の生徒が嫌だったという意見がありました。そこを多数決で決めるのではなく、運動会の最上位目標「全員が運動を楽しむこと」に立ち返り話し合い、みんなが納得できるあり方として決めたことだということです。

独断でもなく多数決でもなく妥協でもなく決める。このような検討過程が学びとしてどれほど大事であるかはわかると思います。

最上位目標に基づいて指導する

中学校であれば、風紀が乱れたりやケンカやいじめなど学校生活での心配はいろいろあります。そんな中でも最上位目標から考えることが大切です。

生活指導で教員がすべきことの最上位目標は次の2点に集約されます。

  • 命を大切にすること

  • 差別をしないこと

この考えに基づくと、例えば柵にまたがって危ないことをした、というのは命を大切にしない行為なので強く叱るべきことになります。

他の生徒の傘を盗んだりいやがらせをした、というのは差別であり人権や犯罪につながる行為なので、これも強く叱るべきことになります。

では、授業中に寝た、学校にお菓子を持ち込んだ、髪型を2ブロックにしたなどはどうでしょう?これらは2つのどっちにも関わらないので、ある意味どうでもよいことです。なので必要に応じて軽く注意する程度でよいとしています。

なのに多くの学校ではこういったことばかりで叱っています。2ブロックにして命や差別に関係があるのか、目的はなんなのでしょう?風紀とか規律とかで片付けてしまうのは思考停止になっていないか、もっと直接的にいえば気に入らないから叱っているだけかもしれません。

教える側である教員は、学校はなんのためにあるのか?教えることの最上位目標はなにか?を常に問いつづけなければいけない、ということがよくわかります。

学んだこと

僕はデザインの仕事をしていますが、デザインの仕事をするうえで常に起点となる考えは次のようなことです。

ユーザーのため・社会のためになるか?

ここに自分のエゴや、ビジネスの数値目標などは入れません。徹底してデザインに関わる相手のために何を追求するかを意識しています。

学校や学習でも同じように、生徒を機械のように扱うとテストの点数を上げるためという手段に陥ってしまいますが、生徒のために大切なことは何か?を考え続けることが学習の本質につながる、というものごとの見方には共通する点があるのではいかと思いました。(自分がどれだけ実践できているかはさておき)

少し重複する内容もありますが、こちらの本もおすすめです。15歳からのリーダー養成講座は、クリティカル・シンキングの実践、対立を解決するための対話、伝わらない人に伝える話し方など、大人でも十二分に学べることがたくさんあります。

今日はここまでです。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。