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教育だってビジネスだから戦略が必要(教育コンテンツ開発)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。M2の前期に履修する2つ目の科目は「教育コンテンツ開発」です。

教育は決して普遍的なものではなく、時代や社会に適した授業や学習プログラムを提供する必要があります。このようなビジネスやサービスの視点で教育に関われることが、この授業の目的です。1

講師は、「学びエイド」で教育事業も実践している廣政先生です。

今回は、全体をさっと見通す内容で紹介します。



コンテンツとは

教育とコンテンツ、あまり親和性がなさそうですが、法律ではこのように定義されていて、教育との関わりが示されています。

「コンテンツ」とは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラムであって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するものをいう。

平成十六年法律第八十一号 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律より

1990年ごろから浸透した情報化社会によって、コンテンツが持つ無形資産としての知的財産に注目が集まるようになりました。

コンテンツの分類は省庁ごとによって少し異なります。

  • 総務省:テキスト・音声・映像

  • 経産省:動画・音楽や音声、ゲーム、静止画やテキスト、複合型

教育分野に当てはめると、スタディサプリは動画や映像などのコンテンツです。一方、対面授業はその場限りなのでコンテンツとはいえませんが、そこで使われている教材や教え方のノウハウ集などはコンテンツになります。

そしてコンテンツはメディアを通してユーザーに伝わります。メディアとは伝達を仲介する手段(メディアの語源はMidiumで、媒介する・中間といった意味になります)で、一方向的なテレビや新聞から、電話やYoutubeのライブ配信など双方的なものがあります。

なので学校の授業はコンテンツになりにくいですが、コンテンツ起点で考えると教育の提供方法はたくさんあることがわかります。

コンテンツの収益の移り変わり

話は変わって、漫画雑誌を出版している講談社や集英社などは、この10年くらいで、売上高と純利益が飛躍的に伸びているということです。紙雑誌って昔ほど買われなくなっているのになぜ?

伸びている理由は、デジタルと版権です。

漫画やアニメのキャラクターが色々なところで展開されているのは、ご存知のとおり。推し活ブームも後押しになっています。

それにデジタルメディアが加わったことで、労力に依存せずキャラクターをいろんな地域や媒体に展開できます。つまり1コンテンツを多角的に使用することで、コンテンツそのものの使用価値が高まり、ビジネスとして成功しているといえます。

へー、面白いと思いました。

教育におけるコンテンツの特徴

ここまでコンテンツと経済効果のことを書いてきましたが、教育におけるコンテンツ産業は、他産業とは違う特徴があります。

教育は長期継続が期待されている業界です。

代表例が「英検」です。英検が設立されたのは1963年と60年前のコンテンツビジネスですが、いまでも英検を受け続ける人がいるのは、その資格の価値が10年後でもすたれないからです。スタディサプリも1年しか使われないコンテンツだったら事業としては継続しません。

ちなみに、こういった資格業界では、付属する参考書や講習プログラムが高い収益性につながります。これも教育コンテンツをビジネスとして成立させるためのテクニックです。

なので、流行とは違った価値が定着できると、そのコンテンツは版権・媒体展開・付属商材などでビジネスは大きく伸びます。が、それをつくることは簡単ではありません。

教育産業

さて、日本の教育産業は全体では縮小傾向にあります。一番の理由は少子化ですが、同じ少子化でも韓国などは大きく伸びており、他の先進国と比べても日本は衰退が著しい状況です。

博士の取得率の低さや大学卒業後は学ばない傾向など、日本では教育にお金を使う余裕がなくなっているように見えます。この教育軽視の意識を変えていくことが、日本の教育産業にとって大切です。

教育産業には学校以外にも、こんな分野があります。

  • 学習塾・予備校

  • 資格検定試験、資格取得学校

  • 英会話・語学

  • カルチャーセンター

  • EラーニングやEdTech

  • 通信教育(学生・社会人・幼児)

  • 企業向け研修

この中で市場規模が拡大したのは、幼児向け教育や資格ビジネスなどです。また自己啓発に関する書籍やセミナーなどの市場も年々増えています。人口が減少しているなか、一人当たりが教育に使うお金をどこに・どのように伸ばすか?を考えることが教育産業の課題です。

学んだこと

書いていて、今回はなんだかすごく金の匂いのする文章になってしまいました。でも「お金を考えるのは汚いこと」と思わずに、ちゃんと向き合うことが大事だと思います。

教育事業でも、持続可能なビジネスの設計は必要になります。学習者と保護者・教員・事業者の三方よしのコンテンツを考えていくことが、社会で学習意識を高めることにつながります。

次回以降は、具体的な企業や教育機関の取り組みを見ていきます。

今日はここまでです。


デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。