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西洋の教育史(教育学基礎理論)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」、今回は教育の歴史についてです。

前に「教育と社会はすごく関係あるよ」ということを書きましたが、教育の歴史は社会の表れそのものだったりします。ここでざっと西洋の古代から近代までを通して見てみましょう。

古代1. 外と戦うのための教育

古くは古代ギリシアに教育の記録が残っています。このころは隣国と戦争をたくさんしていました。戦争で勝つためには強い軍隊を必要とします。軍隊を育てるために教育が登場します。

ポリスの1つであるスパルタが代表的です。スパルタ教育という言葉がありますが、軍隊育成のための徹底した訓練機関です。

どんなものだったかは、コテンラジオを聞くのがよいです。脳筋集団と言ってますが、まあそうだったんだろうなと。良いか悪いかは別として、教育の力を知ることができる歴史的事実です。

教育と社会の関係に注目すると、この時代は、国家の発展や維持のために、資源である国民に教育が用いられていた、といえます。

古代2. 内政のための教育

戦争が一段落して国が安定すると、教育が変わってきます。国家のために知識を持つことが必要とされます。

この時代には学者がたくさん登場します。アリストテレス、ソクラテス、プラトンなどの哲学者や政治学者、ピタゴラス、アルキメデスなどの数学者や物理学者たち、誰でも聞いたことのある名前です。

教育はおおきく知識と技能に分けられていました。

  • パイデイア:子どもを訓練して成人にするという意味で、芸術・体育・読み書き・弁論術などをはぐくむ教育

  • テクネ:職人や奴隷が技術をまなぶ教育

古代で注目すべきは、国が主導していた公教育であるという点です。また、教養などを重視していたことも興味深いです。なぜなら、このあとしばらく公教育は存在しなくなり、学問が市民には還元されるものではなくなるからです。

中世1. 宗教と権力のための教育

4世紀ごろに新しい要素が登場します。キリスト教です。

西洋の中世は長らく16世紀まで、キリスト教と国家が一体となった社会でした。そうすると国にとっては、神の存在を国民に浸透させることが、教育での一番の関心ごとになります。

この時代に大学が誕生しますが、それは貴族や富裕層が神学や騎士道を学ぶための場でした。身分の低い人は大人・子ども問わず労働力とみなされ、職人としての技能を身につけさせられました。子どもに教育の機会はありませんでした。

だからなのか、この時代には名を残す学者が出てきません。神学が頂点なので、哲学者は必要とされなかったはずです。

現代社会からすると、古代ギリシアのころより教育環境は退化しています。

中世2. 人権のための教育

14世紀頃になると少し情勢が変わり、教会中心から人間的なものへの復興に関心が高まります。ルネサンスとは再生を意味しますが、古代ギリシアやローマの文化復興に着目し、教育思想もその1つに含まれます。

前よりも少し自由になったことで、詩人のダンテ、芸術家のレオナルド・ダ・ヴィンチ(解剖学、土木工学、科学などの分野で創造力を発揮した)、後期には作家のシェイクスピアなど、知が社会に現れ始めます。

そして、宗教改革が大きな変化を生み出します。

当時の一般市民の識字率は低く、これも教育機会が奪われていた1要因ですが、宗教改革でイノベーションを起こしたキッカケは印刷技術です。量産できるようになったことで、文字を読む機会が爆発的に広がり、市民一人ひとりが神学や他の学問を学ぶことへのブレイクスルーにつながります。

これも詳しくはコテンラジオで。(本当に素晴らしい番組です)

この時代に、コメニウスという教育学者が登場します。まだキリスト教がベースとなってはいますが、教養・道徳・敬虔という学校思想をつくり、子どもが安心して教育を受けられるよう、社会から隔離した「学校」という場所をつくりはじめます。

なぜ学校が必要だったのか。それは、子どもが労働力として連れさらわれることが日常茶飯事だったからです。これは必ずしも遠い過去の話ではなく、現代の貧しい国などでも(日本でも)みられます。学校という概念を理解するうえで、このことはとても大切です。

前近代. 子どものための教育

17-18世紀に「子ども」の概念が確立されます。

思想家のルソーは社会契約論で、自由で民主的な社会を実現するためには、教育が欠かせないという思想を打ち立てます。エミールという教育論の書籍は現代の基盤となっています。

ルソーの最も大きな功績は、子どもの発達段階に着目したことです。今では当たり前ですが、乳児・幼児・学童期・青年期それぞれに応じた大人の接し方や教育やしつけは、このころに定義されました。これによって、子どもを学校に集めて教育の対象と位置付けられました。

思想を浸透させたのはルソーですが、実践で広めたのはペスタロッチです。すべての人は教育をうける権利をもっている、と考えたペスタロッチは教師や学校をつくり、現在の公教育の土台を確立させました。

当時はフランス革命などが起こっていて、民主主義の意識が芽生えた時代でもあります。このような社会背景が教育にも大きな影響与えています。

学んだこと

歴史のながれの中で教育を見ていくと、古代は国の繁栄のため、中世は神と統治のため、そこから個人や子どものため、という社会的な情勢によって、教育のあり方が変わってきたことがわかります。

そうすると、現代の教育観が普遍的なものではないことにも気づけるし、社会が変わると教育観も変わるということがわかります。最近であれば、グローバル化、地球環境、テクノロジーに対する関心が、現代の教育に表れています。

次は日本の教育史を見て、西洋との比較から相対的に自分たちの教育の位置付けを学んでみたいと思います。

今回はここまでです。


デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。