6年目、私たちは存在意義を変えます。Designship 2023 始動。
こんにちは、一般社団法人デザインシップ代表理事の広野 萌です。
あなたの存在意義はなんですか?
……この質問に、ひとりの人間としてすぐに答えるのは難しいですね。
しかし、法人や団体やイベントの存在意義は、「ミッション」や「コンセプト」として定義されている場合が多いです。
かくいう私たち Designship も、法人としての「ミッション」とカンファレンスとしての「コンセプト」を掲げていました。
今回は、そんな存在意義ともいえるコンセプトを、初開催からたった6年目のカンファレンスが刷新した苦悩と軌跡を描いた物語をお届けします。
Designship 2023
デザインカンファレンス「Designship」は年に一度、最前線のデザイナーたちにそれぞれのデザインに関する物語をお話いただくデザインの祭典です。
今年の 9/30-10/1 に渋谷ヒカリエで開催される Designship 2023 は、第6回目の開催となり、本日チケット販売開始です。
また、キーノートスピーカーも一部公開しました。
佐藤卓さん(グラフィックデザイナー)
山中俊治さん(デザインエンジニア)
遠山正道さん(スマイルズ代表)
などスペシャルな方々にご登壇いただきます。
本当にありがたいことです。
なお、昨年の Designship 2022 はオンライン配信がメインだったこともあり、なんと 5万人弱の方々に視聴していただきました!
5万人……身が引き締まりますね。
ここまで一見するとコンセプトを変える理由がないように思えます。
しかし、私たちはデザイン業界のことを考え続ける上で、どうしてもDesignshipの存在意義を変えなければならないと強く感じていました。
「デザインの壁」はもうない?
2018年に初めて開催してから今まで、Designshipのコンセプトは「物語の力でデザインの壁を越える」でした。
記載のとおり、次世代の産業に貢献するデザインとして特に取り沙汰されるデジタル・プロダクト・グラフィック領域のデザイン同士の壁を越えて、それぞれの領域のデザイナーが一同に会すカンファレンスがあってもいいじゃないかということで、Designshipは始まりました。
おかげさまで5年間、それぞれの業界の第一線で活躍するデザイナーたちや、もはや伝説といわれるデザイナーたちにご登壇いただきました。
そこから実際にコラボレーションが生まれたり、登壇した企業に興味をもって就職した学生もたくさん見てきました。
参加者にとっても登壇者にとってもスポンサーにとっても、大変有意義なカンファレンスを実施できたなと自負しております。
しかしながら、うすうすと感じていたことながら、私たちはあるデータに気づいてしまいました。
Designship 2022において、メインコンテンツである公募セッションのカテゴリー分類をみてみると……
もはやほとんどが「その他デザイン」!!!
デジタル・プロダクト・グラフィックのデザインの壁を壊したいと思っていたのにも関わらず、今やこの時代、そもそもその枠にとらわれない「デザイン」の領域で活躍している人が、私たちが思っているよりもずっと多かったのです。
実際、2022年に採択されたセッションもほとんどが「その他デザイン」枠からでした。
そしてそのセッションはどれも「○○デザイン」という枠に当てはまらず、かつそれぞれが全く異なる物語で、ひとつひとつの素晴らしいセッションをいまだに覚えています。
しかしそうなると……つまり……
もしかして、デジタル・プロダクト・グラフィックの壁、
「デザインの壁」は、もうない?
Designshipを初開催してから5年、当初感じていた課題である「デザインの壁」はいつの間にか、しかし確実になくなりつつあったのです。
特に第一線で活躍するデザイナーたちは、その壁を取り払わないと仕事にならない時代になったのかもしれません。
であればこのままグダグダと同じコンセプトで続けても仕方がありません。
惰性で何かを続けるのが一番キライな自分の性格もあって、ここはDesignshipというカンファレンスの新しい存在意義を考えなければならないと決心し、2022年の秋から2023年の春までずっと悩み続けることとなりました。
現代のデザイン業界の課題
私の新卒入社した会社がヤフーだったため、何かを考えるときに「課題解決」を軸にするクセがついています。
いままでのDesignshipのコンセプトも「デザイン業界同士に壁がある」という課題をもとに、カンファレンスの内容を組み立てていきました。
では、2023年。
こんにちデザイン業界が抱えている課題とはなんだろう?
(最近のデザイン業界か。そもそもデザイナーはどうなっていくべきだろうか? AIが劇的に進化している時代の中でデザインの役割を考えて、手を動かすデザイン以外にもコトのデザインが重要になって、それでも手を動かすデザインも絶対に必要で。そういえばデザイナーに倫理が求められるようになったとよく聞くな。そうなると社会学や心理学や人類学などの知識も必要になるかもしれなくて、デザインリサーチやインクルーシブデザインのことも勉強して………)
あれ?
デザイナー、大変すぎでは?
デザインという概念、広がりすぎでは?!
本当に全部が全部、全員にとって必要なことなのだろうか?
自分たちの次の役割はもしかしたら、この広がりすぎたデザインの中で、ひとつひとつ自分にとって本当に必要なデザインと出会って、見つけ出して、いま自分がもっているデザインと結びつけることなのではないだろうか?
この半年間考えた結論が、こちらです。
シン・コンセプト
広がりすぎたデザインを接続する。
19世紀に誕生した「デザイン」はきっとこれからもその意味と対象を広げることは止められないでしょう。
だとすれば私たちにできることは、これらすべてのデザインを全デザイナーに知ってもらうことではなく、自らが必要だと感じるデザインと出会い、そして無数のデザインという名の星からまるで星座を描くようにして、自らと接続する機会を設けることなのではないか。
そういった想いが込められたコンセプトです。
広がりすぎたデザインを接続する。
「広がりすぎた」とネガティブにもきこえてうる言葉をあえて使っているのは、現状デザイン業界が抱えている課題に正面から向き合いたかったからです。
むこう何年このコンセプトが続くかは今の時点ではわかりませんが、今はこの存在意義を掲げて、生まれ変わった新しい Designship としてできることをすべてやりたいと思っています。
テーマ制への変更
コンセプトが変わったならば、内容も変わらなければいけません。
Designshipのメインコンテンツは公募セッションですが、その公募セッションの枠を、コンセプトである「広がりすぎたデザインを接続する」を実現するために、今年からテーマ制を導入しました!
数多あるデザインの中から、世界のホットトピックや今関心を持っておきたいデザイン周辺分野を選出し、毎年5つ程度のテーマを設けます。
その中から、どれかひとつを選んで応募していただくというものです。
今年のテーマはこちら ↓
1. AI(人工知能)× デザイン
2022年末頃から世界的にLLM(大規模言語モデル)が一般に広く普及しました。そんな時代の中でAI(人工知能)がデザインに与える影響や限界、デザイナーの役割や実例をお話いただくテーマです。
2. インクルーシブデザイン
社会の多様性が進み、製品やサービスのユーザーに対しても「誰も排除しない」ことの必要性が高まっています。あらゆる人がありのままで自由に利用できるデザインの考え方や実例をお話いただくテーマです。
3. DesignOps
デザイン領域の拡大により、有形だけでなく無形を対象としたデザインが求められています。優れたクリエイティブや体験・製品を生み出すために、プロセス・組織・企業・社会という様々な「システム」を対象としたデザインについてお話いただくテーマです。
4. 地域・行政 × デザイン
地方自治体や省庁にデザインの考え方が適用されるケースが日本でも増えてきました。デジタル技術の活用や、市民参加による共創の可能性など、地域と行政に対してデザインがどう入っていくべきかをお話いただくテーマです。
5. コミュニケーションデザイン
メディアから一方通行のコミュニケーションしかできなかった時代から、相互作用的にタッチポイントやブランドをデザインする時代となりました。空間・コミュニティ・社会問題などを対象に、人と人とのあいだをどうデザインしているのかをお話いただくテーマです。
オールジャンル
その他のデザインセッション枠も若干設けております。
このようにテーマを毎年変えて、参加者の方が新しいデザインと出会えるような場所にしたいと思っています。
会場とチケット
最後に、会場とチケットについて軽くご紹介いたします。
前述のとおり、Designship 2023は 渋谷ヒカリエの9F でおこなわれます。
主に4つのエリアを用意しており、チケットの種類によってアクセスできる場所が異なります。
1. Stage Area
メインコンテンツである第一線のデザイナーたちのセッション。
2. Collaboration Area
企業ブース、パネルディスカッション、グラレコ、展示企画など。
3. Meetup Area
参加者・登壇者・スポンサーの交流。
4. Workshop Area
企業や有識者によるワークショップ。
そしてチケットの種類は以下の通り。
要は「マスターチケットを買ったら全部できるし、入場チケット(無料)だけでも企業ブースやパネルディスカッションは観れるよ!」ということです。
早割や学割なども数量限定で用意してあるので、詳しくは Designship 2023 チケット販売ページ をご覧ください。
存在をかけた闘い
正直にいって、この新しいコンセプトを皆さんが本当に求めているのか、まだ自信がありません。
自分の中で絶対こうした方がいいという確信はあるものの、やはり実際のデザイナーの声や気持ちをきいてから判断しなければいけない。
つまり、今年の Designship 2023 のチケットの売れ行きや満足度という結果が、そのままその答えであると存じております。
これは私たち運営にとっては Designship というカンファレンスの存在をかけた闘いであり、必ずや皆さまを満足させてみせるという気概でスタッフ一同準備に励みますので、何卒応援(とチケットの購入!)をよろしくお願い致します。
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