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Designship における "Conference Identity" について

こんにちは。ブランドデザインチームのオオカワラ(@o_kwr)です。

2日間に渡る様々なスピーカーやスポンサー・パートナーによるセッションはいかがでしたでしょうか?
全ての人にとって明日からのデザインを考えるきっかけや原動力になればと思っています。

少々前に「Designshipスタッフ紹介 Vol.1」の記事で紹介させていただいたように、ブランドデザインチームではDesignshipのコンセプトを体現すべくあらゆるクリエイティブを作成していました。その中で全てのクリエイティブにおいて柱となる「アイデンティティ」領域を私は担当しています。

やや聞き慣れた言葉で言うと Visual Identity(ビジュアルアイデンティティ)あるいは拡張して Brand Identity(ブランドアイデンティティ)にあたる領域なのですが、デザインシップにおいては「Conference Identity(カンファレンスアイデンティティ)」と呼んでいます。今回はこのDesignshipにおけるカンファレンスアイデンティティについてご紹介できればと思います。

Conference Identity とは?

Designshipではカンファレンスアイデンティティを以下のように定義しています。

カンファレンスアイデンティティとは、クリエイティブの振る舞いや哲学・スタイルの規定をメインとした Brand Identity(ブランドアイデンティティ)をさらに拡張し、スタッフの振る舞いやユーザー体験の佇まいなどより具体的にあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションに関しても明示的に定めたカンファレンスとしてのあり方です。

Designshipは日本で最大級のデザインカンファレンスです。そのコンセプトを体現するためにあらゆるクリエイティブが生まれますが、当然そのクリエイティブはブランドアイデンティティに則って作られます。

しかし、ただクリエイティブとそこに宿る哲学に関することが中心となっているブランドアイデンティティだけでは、Designshipの実現したい世界が十分に体現できないと考えました。

カンファレンスには多くのステークホルダーが存在し、そこで様々なコミュニケーションが生まれます。そしてその場で生まれるコミュニケーションこそがカンファレンスの価値であり、私たちはこのコミュニケーションの価値を最大化するためのスタッフの振る舞いや、ユーザー体験の佇まいまでをもきちんと定義しなくてはいけないと考え、カンファレンスアイデンティティとして上で述べたように定めました。

もちろん、通常のブランドアイデンティティではそうしたコミュニケーションのあり方が本来定められますが、カンファレンスという場に特化したコミュニケーションに力を入れたいという想いからあえてカンファレンスアイデンティティと呼ぶことにしました。

即ち、Designshipらしいビジュアル、Designshipらしいコミュニケーションを「カンファレンス」という切り口でブランドとして担保するための仕組みとも言うことができます。

ベースはロゴとそこに込められた想い

Designshipのロゴは運営メンバーであるほそみんさんが昨年Designshipが生まれたときにデザインして誕生したものですが、カンファレンスアイデンティティのビジュアルおよび哲学のベースとなっています。

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Designshipのロゴが生まれる当時、デザインシップ代表の広野にこんな想いがありました。

イマ・現在進行形でつくりあげている泥臭い現場の物語にこそ価値があるのではないかという考えと、だからこそ「モノづくり」を「モノがたり」で語る場所をつくりたい、という想いから、現場感クラフトマンシップを意識したアイデンティティにしたかった。

この想いは今でも考え方の根底として残っており、ロゴはDesignshipの哲学を象徴するものとして今年も引き続きこのまま使っていこうということになりました。

Designshipらしさの分解

ロゴとそれに対する想いをベースに、まずブランドデザインチームではDesignshipらしさって何だろうという部分をワーディングして分解していきました。

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その結果浮かび上がってきたものが、

・第一線におけるリアル
・一人ひとり異なる筆跡
・軌跡
・熱量

といったものでした。ブランドデザインチームで最初から共通して持っていた認識として、いわゆる「スマートなかっこよさ」ではなく「泥臭くてアツいもの」だよね、という部分はありました。その中で議論していき、我々の抱える想いをうまく体現してくれるキーワードは「筆跡・軌跡」であると収束していきました。場にいたチームメンバーたち全員の「これだ!」という感覚を今でもはっきり覚えています。

また上の画像にもあるように以下はConference Identity Guidelineにあるステートメントで、今回のDesignshipらしさのエッセンスをきれいにまとめたものです。

Designshipは、あらゆるデザイン領域において第一線で活躍している方々からリアルな物語とデザインナレッジを学び、その壁を越えて創造性を高めるカンファレンスです。そうした第一線で活躍している方々が歩んできた、一人ひとり異なる経験の積み重ねを「軌跡」として捉え、今回のIdentityの中心と置いています。

もちろん、「軌跡」はDesignshipに参加する全てのステークホルダーに言及できるものです。参加者がこれから創る自分の「軌跡」にDesignshipが何か影響を与えられたらそれは非常にうれしいことですし、Designship自身も様々なステークホルダーから影響を受けてカンファレンスとしての「軌跡」を創っていきます。

このステートメントを念頭に実際にビジュアルに落とし込んでいきました。

ダイナミックアイデンティティによるコンセプトの体現

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今回キーワードとして「筆跡・軌跡」が挙げられており、素直にこれをビジュアルとして落とし込みました。デザインに関わる者として一人ひとりが描いてきた今までの「筆跡」がひとつの大きな「軌跡」を形作る。至ってシンプルな表現ですが、我々が表現したいことを的確に表現できていると考えています。

そして「筆跡」や「軌跡」は、誰ひとり全く同じ経験やキャリア・生き方をしていないことと同様に全く同じものは存在しません。このような性質も加味して、今回ビジュアル面では「Dynamic Identity(ダイナミックアイデンティティ)」の手法を採用しました。

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ダイナミックアイデンティティとは、利用される文脈や状況、伝えたいメッセージやイメージに応じて可変的に変化するアイデンティティです(詳しくはこちらの記事が参考になります)。

今回の場合、ひとつの大きな「軌跡」とそれを形作る様々な色による「筆跡」という枠組みであれば自由にビジュアルを展開できるようにしました。この枠組みに乗れば自由に展開しても「Designshipだよねこれ」という認知を得られるようになっているため、非常に柔軟かつ機能的なアイデンティティとなりました。

これはテクニカルな話になってしまいますが、固定シンボルでのビジュアル展開をすると、多岐に渡るノベルティグッズや資料へ落とし込むときに強い制約になってしまいます。ブランドデザインチームをはじめ全てのメンバーが存分にクリエイティビティを発揮するためにもダイナミックアイデンティティはぴったりとはまりました。

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また、基本形は領域から軌跡がはみ出すものとなっているのですが、制作物によっては適用できない場合もあり、そういった場合でも柔軟に対応できるところもダイナミックアイデンティティのいいところです。

ビジュアル面でアイデンティティを定めたあとは、他のチームのメンバーに共有してノベルティグッズや映像、空間デザインといった全てのクリエイティブに展開していきました。

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こうした実際のインターフェースとなるクリエイティブたちを通して、世界観や体験に関して全てのステークホルダーをエンパワメントできたなら幸いです。

言葉や対面コミュニケーションもアイデンティティの一部

カンファレンスアイデンティティとあえて言っている中で大事なものとして考えている部分に「言葉(コミュニケーション)」があります。参加していただく方々に対してどういった佇まいや言葉遣いでコミュニケーションを取れば気持ち良い体験をしていただけるか、ここもひとつの大きなインターフェースです。

言葉およびコミュニケーションに関してはコミュニケーションデザインチームと協力して「Voice and Tone」としてまとめました。

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コミュニケーションに関してこれはOK・NGの判断基準やチェックリスト、表記に関するルールを定めて、誰が発信・対応するときもデザインシップとして同じ人格を保てる仕組みとなっています。

また、今回のために準備したスタッフ衣装に関しても、実際に参加する方々とコミュニケーションを取るスタッフがしっかりとデザインシップという人格を持ってインターフェースとして機能するための一部と言えます。

アップデートこそが重要

以上のようにカンファレンスアイデンティティというものを定義して、実際にDesignship 2019の開催にあたり運用しましたが、正直まだまだアップデートの余地はあります。むしろ、来年再来年の開催に向けてアップデートしていくことが重要だと考えています。

アップデートを続けていき、デザインというドメインを扱っているにふさわしいクオリティの体験やコミュニケーションのカンファレンスとしてトップラインを走る足がかりになればと思っております。

また来年はさらにパワーアップして帰ってくるので、楽しみにお待ち下さい!

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