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Design Scramble Cast#4 タカヤオオタさん

Design Scramble Cast」は、デザインプロジェクト『Design Scramble』が運営する参加型の音声番組です🌈 🎧 🤝

毎回様々な分野の第一線でご活躍されているクリエイターさんと、そのクリエイターさんと「お話がしたい」と応募してくださった若手クリエイターさんをお迎えして対談の様子をお送りしています。
こちらのマガジンでは、対談の内容を一部抜選してご紹介いたします。全ての内容を知りたい方は、音声番組「Design Scramble Cast」をぜひご視聴ください。

今回ご出演いただいたのは、タカヤ・オオタ(kern|DESIGNER / ArtDirector )さんと、藤本璃旺(DeNA|デザイナー )さんです。

タカヤオオタ
デザイン事務所と事業会社でデザイナーを努めたのち、2017年にkern (ケルン) を設立し、スタートアップ領域を中心にアイデンティティ・デザインの領域で活動中。2019年からはチーズケーキブランド「Mr. CHEESECAKE」のアートディレクターを兼任。その他の仕事として、「青山ブックセンター」CI、『明け方の若者たち』(カツセマサヒコ著)、「giftee」CIなどがある。立教大学経営学部卒業。
🔗:Twitter

1. Design Scramble Castへの応募のきっかけ

タカヤ:はじめまして、デザイナーのオオタと申します。主にコーポレートアイデンティティ(CI)という領域で、スタートアップの方々と協業してアイデンティティの制作を行っています。最近だとMr. CHEESECAKEというブランドで中長期的なブランド作りの取り組みをしています。

藤本:株式会社ディー・エヌ・エーでデザイナーをしております、藤本と申します。2019年に新卒で入社しまして、現在はGOというタクシー配車アプリのチームに所属しています。

大学は京都精華大学という美術大学に通っていたのですが、実は大学1年生の頃からツイッターでタカヤさんのことをフォローしていました。憧れの存在だったので、とても恐縮ですが今回お話ししてみたいと思ってお願いしました。よろしくお願いいたします。

タカヤ:こちらこそ恐縮です。僕もDesign Scrambleが開催されるたびに、ツイッターで「今年も登壇できなかった」って呟いていたので(笑)。こういう形で参加できてすごく嬉しいです。ありがとうございます。

2. CI / BI領域のデザイナーになった理由

藤本:はじめに、タカヤさんがCI / BI(ブランドアイデンティティ)という領域で仕事をしようと思ったきっかけをお伺いしたいです。

タカヤ:今の事務所を立ち上げる前に、株式会社ペロリ (現在の株式会社MERY) でアートディレクターをしていて、そのときから新しくブランドを作りたいというお話をたくさん聞いていました。ただ当時のスタートアップでは、組織の中でデザインチームを強化して独自のクリエイティブを作っていこうっていう動きが、まだまだ走り出しのタイミングだと思っていたんです。黎明期みたいな感じですかね。
MERYは、デザインを使ってどういう風に「らしさ」を作っていくかという部分にかなり力を割いている印象がありました。そのとき、おそらく今後はブランドの側面にも力を入れていく、若い会社がたくさん出てくるんだろうなと思いました。それで自分が独立して、それをサポートできるデザイナーになりたいと思ったのがCI / BI領域で仕事をすることになったきっかけですね。なのでまだ四、五年くらいしか経っていないんです。それまではずっと、色んなデザインをとにかくやっていました。

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▲MERY BI (2015) : スタートアップでデザインをするきっかけとなった

藤本:これから「らしさ」を大事にする組織がたくさん生まれてくるだろうという予測に基づいて、CI / BIという領域を選んだという感じでしょうか?

タカヤ:はい、その通りです。僕自身がもともと、ちゃんとした志があってデザインをやっているようなタイプじゃないんです。自分が好きなデザインというものを、どうすればちゃんとお金を伴ってやっていけるんだろうかって考えたときに、自分が参加して勝てる見込みがあるのかという打算的なことも結構考えていました。予測した需要に基づいてやりたいことを決める、というような生き方です。

藤本:個人的にはすごく意外です。あるデザインや他の人への明確な憧れみたいなものがあって、それに対して邁進しているからこそクオリティが高かったり心を掴まれるようなCI / BIを作られているのかなと思っていました。そうではなく、ある種の戦略として CI / BIの領域をやられているということですもんね。

タカヤ:そうですね、もちろん100%打算的というわけではなくて、まだデザイナーが十分にいない領域に対して自分のやりたいことを重ね合わせたっていうのもあります。でもどちらかというと、ちゃんと世の中に需要があることをやっていきたいタイプではありますね。もちろん憧れのデザイナーもいるけど、自分とは全然無関係として見ていたのが正直なところです。ただすごいな、みたいな(笑)。

3. デザインの正義

藤本:CI / BI領域のデザイナーさんとして色々なご経験をされていると思うのですが、タカヤさんにとっての、デザインの正義みたいなのはありますか?ちょっと正義という言葉は大げさかもしれないんですけれど、お話を聞いていてそういうものがもしかしたらあるのかなと感じました。

タカヤ:正義ですか。そうですね、常に意識していることは、どういう立場や考えを持ってこのデザインをしているのかということですね。自分もちゃんとそのクライアントさんに対して共感している、その上でこういう意思をデザインとして表現させていただきたいという芯を持って作っていきたいなという気持ちがあります。それは、デザインに込められたロジックとかそういう話とはまた少し別なんですけどね。

藤本:ユーザーに届くまでを、責任を持って制作するということですね。

タカヤ:そうですね。でもこれが現時点で100点満点できているかというと、そんなことはなくて。毎回作るたびに「ここはこうしておけばよかったな」とか、反省点のほうがむしろ多いんですけどね。ただ、最低ラインは常に高く持ちつつ、更にそれよりも高い理想を持つことや、その時自分ができるベストを尽くせているかを考えています。なので単純に過去と比較しての良し悪しというよりは、現在の自分自身との比較のなかで物作りをしていきたいなという意識が最近は強くなってきています。

藤本:なんだかすごく、アスリートみたいな熱いものを感じます。

タカヤ:全然運動はできないんですけどね(笑)。でもそうですね、歳をとったのもあるんですけど、最近は斜に構えるのをやめました。ちょうどいま31歳でデザインを初めて約10年経つんですけど、20代前半の頃はあらゆるデザイナーの方を仮想敵にしてデザインをしていたんですよね。デザインを教育として受けていないなかで勝っていかなきゃいけないっていう圧を自分にかけていくときに、誰かを敵としたほうが燃えたので。
それはそれでよかったんですけど、25、6歳を過ぎたちょうど独立する手前くらいから、果たしてその気持ちだけで更に10年、20年突っ走れるのかなっていう疑問がでてきました。否定する訳ではないですが、何かに敵意を抱いて作り続けるより、もう少し自分自身が何を考えているのかに目を向けたほうがいいなと思いました。あとはそういう特定個人ではなくて、社会課題とかに厳しい目を向けながら作ったほうが世のため人のため自分のためになるんじゃないかなって。

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▲青山ブックセンター (2020) : 20代最後の制作

藤本:僕はまだデザイナーとして始めたばかりなのですが、今の言葉はすごく刺さりました。

タカヤ:あ、でもこの言葉を鵜呑みにしないでください。多分デザインを始めたときに一番大事なのは誰かがこう言ってたからこうするってよりも、自分はこういうことがしたいから、自分はこういうふうに思いたいから、という感情を優位にしてあげることだと思うんです。そうしながらある節目ごとに「このままでいいのか」「この部分は少し変えてみよう」っていう、振り返りと先を見据えることの両方をやっていけばいいと思うので。今の僕の話は、2日で忘れるくらいでいてください。

藤本:2日はちょっと...。もう少し覚えています(笑)。

タカヤ:はい、それくらいでいいと思います(笑)。


4. 自分らしさにこだわらない

藤本:最近すごく、「自分らしさ」というものを、大学や社会全体で問われることが多いように感じています。でもそればかりを気にすると結構しんどくなってしまうなと思っています。

タカヤ:僕はその「自分らしさ」っていうのが全然ないんです。他のデザイナーの方って、繰り返しの表現を武器として使っている方が多いと思うんです。色使いや、描き方だったり。でも僕はむしろ、そういうものを世の中に擦り合わせていきたいと思っているタイプです。
そもそもCI / BIっていうものは、僕らしさじゃなくてその企業らしさになるものなので。そういう意味でも、自分らしさを持たずとしても表現というものは色々と落ちているんじゃないかなと思っています。あまり相対的に自分を際立たせるものはなにか、ということを考え過ぎずとも大丈夫だと思っています。

藤本:一概には言えないですが、その「自分らしさ」に答えがあるのかというより、そこにある課題のためにどういう解決策をとるのか、ということを冷静に見ていけば正しい答えにたどり着けるのかもしれないと今聞いていて思いました。

タカヤ:そうですね。世の中の意見とそれに対する自分の意見を考えの中でうまく分けていくと、軸が作られていくのかなと思います。そうすると、自分らしさっていうのは個人からできるだけではなく、色んな社会にあるものの影響を受けて作り上がっていくものなのかなと考えています。なので気にし過ぎずとも、おのずと出来上がっていくのかなと思いました。

藤本:ありがとうございます。今日お話を聞いて、僕が思っていたタカヤさんの印象といい意味で全く違っていたところもありました。でもそういうところからタカヤさんの制作物が生まれたのかって考えたり、作品の制作過程に思いを巡らせたりしていました。自分のこれからの制作にも反映したいようなお話を聞けて、本当に最高の時間でした。本日はありがとうございました。

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▲Mr. CHEESECAKE (2019) : チームや購入者の声を反映させながらブランドらしさを模索している最中

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タカヤさん、藤本さんありがとうございました!🎉
Design Scramble Cast」ではその他に以下のようなお話をしています。
興味のある方はぜひこちらから聴いてみてください。

💭  デザインの原体験
💭 今後のビジョン
💭 表現力を磨くためのルーティーン
💭 UIデザインからCIデザインへのキャリアパス

📮 Design Scramble Castへの参加者を募集しています

「Design Scramble Cast」では毎月1つの対談を配信しています。
憧れのクリエイターさんと「お話ししてみたい」「相談してみたいことがある」という若手クリエイターの方も募集しています!
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それではまた、お会いしましょう👋🌈

Design Scramble Cast 公式サイト:https://designscramblecast.jp/

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