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Tattoodoが切り拓くタトゥー業界のデジタルな未来

本記事は北欧のデザインメディア DeMagSign の翻訳記事です。
元記事はこちら:Tattoodo Brings The Tattoo Industry Into The Digital Age

コペンハーゲンに本拠地を置くTattoodoは、タトゥーカルチャーとライフスタイルを紹介する世界最大のデジタルプラットフォームです。20億を超えるコンテンツのビュー回数を引っ提げて、これまで同様の関連オリジナルコンテンツや新しいサービスを発信しつつもTattoodoは、タトゥーというアートへの理解の集積地、そして発信地になるというミッションを掲げています。インスピレーションに満ちた厳選されたギャラリーから、技術に関する記事、そしておすすめなアーティストまで、Tattoodoはこれからタトゥーを始めようとしているユーザーに重要な情報をワンストップで提供しています。

私たちはTattoodoのコミュニティマネージャーであるHannah Smellie氏と、製品責任者であるBrady Mason氏に、Tattoodoがどのようにしてタトゥー業界をデジタル化し、世界中の何百万人ものアーティストをサポートしているのかについてお話を伺いました。Tattoodoがパンデミック下においてどのようにタトゥーアーティストを支援してきたかや、対面での予約から完全なデジタル体験への移行をどのように実現したかということについて見てみましょう。

Hannah Smellie氏とBrady Mason氏

──Tattoodoのビジョンとはどんなものでしょうか?

Hannah:一言で言うと、私たちはタトゥー業界のライフスタイル、そして文化的な側面に注目し、そこに携わる人々をサポートすることを目的としています。業界が変化し、発展するのに合わせて、私たちのプロダクトがアーティストの力になれるように挑戦を続けています。

Brady:私たちのスローガンは「Everything tattoo(すべてはタトゥーのために)」です。コミュニティをサポートすることは非常に重要です。しかし私たちはまた、クライアントとアーティスト、そしてスタジオの間における体験を作り出すためのデジタルプロダクトや、予約用プラットフォームを構築することにも力を入れているのです。

──Tattoodoがタトゥー業界をよりポピュラーなものにし、業界自体の発展に寄与してきたということでしょうか?

Hannah:Tattoodoによってタトゥー業界がよりメジャーなものになったことは間違いないと思います。業界は長い間その扉を閉ざしていました。多くの人が、足を踏み入れると困惑してしまうような、タトゥーを入れることが怖くなるような「昔ながら」のタトゥーショップのイメージに怯えていたのです。この状態に対して私たちは、厳選された質の高いタトゥーに関するコンテンツを紹介することで、ユーザーに業界のことをよく知ってもらい、距離を縮めてもらおうとしています。

また私たちはソーシャルメディアにも配慮しています。ソーシャルメディアでは以前よりも多くのタトゥーに関するコンテンツが扱われています。レベルの高いアーティストを私たちのプラットフォームで紹介することで、ユーザーは質の高い作品を認識し、クオリティーの低い作品を見分けることができます。

Brady:私たちのソーシャルプラットフォームはアーティストとクライアント、どちらの立場の人にも役に立ちます。アーティストにとっては、多くのアーティストがその価値を認めるコミュニティであるTattoodoで取り上げらえることで、アーティスト自身の価値が高まり、リスペクトされることになります。一方でクライアントにとっては、著名なアーティストの上質な写真を見られる、刺激的なプラットフォームであると言えます。私たちはいま、ユーザーが自分たちのスタイルに合うようなアーティストを見つけ、直接予約を取ったり、相談をしたりできるような独自のプラットフォームを導入しようとしています。またアーティストに対しても、彼らがこうした体験のために必要とするあらゆるツールを提供しています。つまり私たちは、このプラットフォームをワンストップのデジタル体験ができるようにしようとしています。

──タトゥーはそもそもフィジカルなものですから、作品をデジタル「プラットフォーム上で実物と同じように魅力的に展示することは難しいのではないかと思います。プラットフォーム上の写真をできるだけ本物に近く、魅力的なものにするためにどのような工夫をしていますか?

Hannah:アーティストと、彼らが自身のプロフィールにアップロードする写真によります。私たちにはこれらを承認するプロセスがあります。私の仕事の一部なのですが、アーティストに異なるレベルの認定をするのです。私は彼らのプロフィール上の作品をレビューしてしっかりしたスタジオで作品を作っていることを確認し、そのうえでランキングを付けます。ですから、レベルの高い作品は他の作品よりも上位に表示されることになります。ですが私たちはまた、写真にタグを付けて整理するためにAIを使っています。

Brady:私たちは登録アーティストのすべてに目を通した上で承認し、彼らの専門性を確認します。また私たちは「アンバサダー」という制度を設けており、アンバサダーには異なるランキングを付けます。そうすることで、Airbnbのスーパーホスト制度のように、認証済で評価の高いアーティストをユーザーが見つけやすくなるのです。

私たちにはユーザーがプラットフォームにアップロードした130万を超えるコンテンツがあります。内部にあるAIツールのおかげで、私たちはコメントに付けられたあらゆるハッシュタグを拾うことができますし、写真の品質をユーザーに認証してもらうことができます。また、すべての写真がパーセンテージランキングを持っています。もしユーザーが猫と人魚(あるいはその2つが合わさったもの)を検索したら、システムがその写真の集合を作成し、1枚1枚の写真にランキングが付与されます。最近ではAmazonのMechanical Turkを使って、特定のスタイルによるタトゥーのタグ付けもできるようになりました。

非常に正確なわけではありませんが、たとえば対象がタトゥーなのかそうでないのかの判断のような基本的な作業は可能です。私たちのプラットフォームには多くのコンテンツがアップロードされますから、露骨なコンテンツが紛れ込んでいないか、また参加しているアーティストやスタジオの身元がきちんとしているかを確認しなければなりません。

去年1年を通してデータの整理はかなり進みましたが、まだまだ作業は続いています。1年半前までは何のシステムも無かったので、私たちはデータに対してしっかりしたコントロールができていませんでした。いままでのところ数千のアーティストのデータを整理しましたが、全体の10%というところです。デザインを含むすべての体験が高く評価されているので、より良いデジタル体験を求めてどんどん多くの人が集まってきているのです。

(出典:Tattoodo.com)

Hannah:露骨なコンテンツがプラットフォームに上がる前に差し止めるシステムはあるものの、私たちはどんなものが「露骨なコンテンツ」と見なされるのかについて考える必要があります。タトゥー自体が体に描かれるものなので、線引きが難しいのです。お尻やその他の際どい場所にタトゥーを入れる人はいますし、さらにはそのタトゥーのモチーフ自体が露骨なコンテンツであることもあります。たとえば乳癌を啓発するためのコンテンツなど、プラットフォーム上で人々が見るのにまったく問題ないものもあると考えています。

Brady:かつては、私たちのコンテンツがGoogleに問題視されたことがありました。ですがいまでは、Google、Instagram、Facebookのいずれからも、私たちの広告やキャンペーンにおいて肌が露出していたとしてもそこに適切なメッセージがあれば許容されています。私たちのチームは、キャンペーンや写真が適切なメッセージに見合うように常に確かめています。

─新たなテクノロジーを導入することを検討したことはありますか?

Brady:はい、まだ市場に出ていないARツールでいろいろなことを試してきました。デモが可能な状態になっているので、ユーザーに見てもらうことはできます。このツールを使えば、ユーザーは自分の体の一部の写真を撮って、そこにモチーフを置いてみることができます。モチーフはドラッグして位置を変えることができますし、大きさを変えることもできます。手首に合わせた小さなデザインから背中全体を覆う作品まで、さまざまなモチーフを扱うことができます。こうすることで、タトゥーがどのような見た目になるか、あたかもスタジオで相談しているかのように確認することができるのです。

(デザイン:Stef Bastian)

──Tattoodoが直面している課題はどんなものですか? それはどうすれば解決できるものでしょうか。

Brady:1つは間違いなく、アーティストからお客様までの体験を円滑にするために資格を持ったアーティストと質の高い画像を用意し、コンテンツとデザインが美しさの観点から満足行くレベルになるようにすることです。

Hannah:もう1つの課題は、新しい時代への対応を進めている人々だけでなく、デジタル化を行っていない昔ながらの関係者をサポートすることです。アーティストの中には、現金以外お断りで、デザインは紙に描き、予約は手帳で管理すれば十分という人もいます。しかし時代が変わり進化していく中で、多くのクライアントはもっと時代に合った新しいやり方を求めているのです。また、Instagramを始め多くのプラットフォームの登場がタトゥーをメインストリームに押し上げていく中、アーティストの多くは昔ながらの、特定の知識にしか得られない師匠の下でのつらい修行を経て一人前のアーティストになるという伝統的な道には囚われなくなってきています。Tattoodoのコンテンツを通して、私たちはそうしたアーティストに、従来まったく接点が無かったであろう世界中の優れたアーティストの作品を見て自分のスキルを磨く機会を提供しているのです。たとえパンデミック下であっても、私たちはアーティストに常に刺激を与え続け、興味を掻き立て続けることができます。私たちのサービスの中で重要な点は、アーティストが業界全体の流れから逸脱することなく思い切ったタトゥーの実験をしやすくするということです。誰もがChris Garver氏のような作品を作れるわけではないでしょうが、少なくとも最高の作品から学ぶ機会はあるのです。

最後に、世界的なパンデミックに象徴されるような、この時代とうまく付き合うための方法を見出すということが私たちの根底にあります。パンデミックが起こったことで、このことは私たちにとってより重要なものになりました。

──パンデミックがタトゥー業界、そしてあなた方のビジネスに与えた影響はどんなものでしたか? また、それに対してどのように対応されたのでしょうか?

Brady:Covid-19がタトゥー業界に与えた影響は甚大で、多くの事業者が閉鎖せざるをませんでした。また多くの規制が適用されたため、多くのスタジオは事前予約が必須となりました。スタジオが来店予約から遠かったことは、アプリでコンサルティングの予約を取ることができるというデジタル体験を提供する私たちにとっては、ある意味では良いことでした。

私たちはパンデミックの間、タトゥー業界に対して多くの支援を行ってきました。最終的には、4ヶ月に渡ってすべてのアーティストとスタジオに私たちのサービスを無償で提供することができました。

私たちはまた、特定のアーティストとその依頼作品の特集を始めました。アーティストにとって収入を得る唯一の方法であるアートワークを支援するためです。また、スキルアップのための講座も立ち上げました。Chris Garver氏や彼のような著名なアーティスト20名と組んで、ライブのZoomセッションを通して彼らが持つ技術、たとえば伝統的な日本の虎を描く方法などをコミュニティに共有してもらうのです。さらに、より小さな、細かい点を取り扱う収録によるセッションも行いましたが、これは非常に業界内でとても重宝されました。最後に、インクやローションなど、タトゥーに必要なアイテムを提供する業者と組んで、アーティストにこれらを安く提供しました。

──タトゥー業界をデジタル化するためにどんな取り組みを行っているのですか?

Brady:デザイナーとしてもっとも重要なことは、業界の流れに敏感になることです。私たちTattoodoのデザイナーは、常にユーザーに対する共感とユーザーリサーチを大切にしています。私がTattoodoで仕事を始めたときには、New Yorkに3週間滞在してスタジオとアーティストを訪ね、彼らと個人的な関係を築くと同時に、彼らの日々の仕事の流れを理解し、どのようにビジネスを行っているのかを知るようにしました。タトゥーを扱うデザイナーである以上、必要以上に技術を追求する必要はありません。タトゥーと言うコンテンツ自体が非常に奥深く、それがすべてだからです。私たちの仕事はそれをただシンプルに扱うこと、どんな体験を届けるべきか理解することであり、すなわち、クライアントとアーティストの間にあるギャップを埋めるべく努力することなのです。

根本的に重要なことは、アーティストがデジタル化のもたらす変化に適応できるように、そして世界が直面している変化に適応できるようにサポートすることです。昨今ではパンデミックによって、この点がいままでにないほど明白になっています。

Hannah:重要なのは場所です。ユーザーはInstagramでお気に入りのタトゥーを見つけるかもしれませんが、そのアーティストは韓国にいるかもしれません。私たちがTattoodoでやろうとしているのは、ユーザーが近くにいる優秀な、自分の好みに合うアーティストを見つけやすくすることなのです。

(出典:Tattoodo.com)

Brady:素晴らしいデジタル体験を提供することも重要です。Tattoodoではユーザーがタトゥーの概要を作ることができます。サイズ、入れる場所、タトゥーの簡単な説明と参考資料をユーザーが用意すれば、その内容がユーザー指定のエリアにいるすべてのアーティストとスタジオに送られ、特定のスタイルを持つアーティストとのマッチングが行われます。マッチングはオンラインデートに限らず、あらゆる種類の業界で使われています。特に最近の人々は、現実の社会で誰かに話しかけることにためらいを感じることが多いですが、もし自分と誰かを繋げてくれるアプリがあれば、相手との距離を縮めることはもっと簡単でしょう。タトゥー業界にも同じことが言えるのです。初めてスタジオに行ったら、なにを聞けば良いか、なにをすればいいかわからないでしょう。しかしこの場合はアーティストの方が自分たちの売り込みをしてくれて、クライアントから信用してもらえるような情報を提供してくれるのです。これは、業界に世界規模での変化をもたらすチャンスです。

──タトゥー、そしてデジタルプラットフォームは将来どうなると思いますか?

Hannah:業界がデジタル化することは間違いありません。Tattoodoはその先頭を走ることになるでしょう。いまでは多くのデジタルプラットフォームやWebサイトが出てきており、タトゥーのカタログやコミュニティを持とうとしています。これらのプラットフォームはあくまでサポートツールであって、業界を変えようとしているものではないと思います。

Written by Giorgia Lombardo (Design Matters)
Translated brought to you by Flying Penguins Inc. 🐧

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