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より良いリモートコラボレーションの秘訣とは

本記事は北欧のデザインメディア「DeMagSign」の公式翻訳記事です。
元記事はこちら:Remote for Good?: An Interview with Kea Zhang about the Future of Collaboration

オスロを拠点に活動するプロダクトマネージャーであるKea Zhang氏が、リモートによるコラボレーションの未来、そして私たちが次のレベルに進むためのツールや戦略について考察します。

UserTesting(旧Teston)のプロダクトマネージャー及びUXディレクターであるKea Zhang氏は、コラボレーションの達人です。ブレインストーミングやデザイン思考に関するワークショップ、ユーザーテストの振り返りミーティングなどは皆さんご存知でしょう。彼女は、Covid-19による混乱よりも前から、デジタルコラボレーションへの世界的な移行の最前線にいたのです。彼女は、Design Matters 20のバーチャルプレゼンターとして、「ワークショップの未来」と「リモートの方がうまく行くプロセスについて」というテーマで講演を行いました。

Kea Zhang氏

私たちはバーチャルでKea氏と対談し、リモートと対面のコミュニケーションの違いについて、また参加者の関心を引くワークショップの進め方についてのヒントについて話をしました。Kea氏はリモートでの仕事における悩みを解決するために、まだ発明されていないデジタルツールについていくつか紹介してくれました。また、シャイな人でも、リモートコラボレーションのプロセスに平等に参加できるようにするためのアドバイスもしてくれました。

──リモートでのコラボレーションに関する思い込みや思い違いにはどんなものがあるのでしょうか?

素晴らしい質問ですね。私は、リモートでのコラボレーションには目に見えない壁があると感じています。なぜなら、多くの人がリモートでのコラボレーションは対面でのコラボレーションよりも難しいものだとという思いを抱いているからです。もちろん、その通りであることもあります。私たちは対面のコミュニケーションに使うツールに慣れ親しんでいるので、リモートに慣れていない人にとっては新たなツールを使うのは億劫でしょう。ある意味では、ビデオ会議の方があらゆる点で難しいと言えます。人と繋がることも、フィードバックをもらうことも、一般には関係を構築することもすべてが難しくなります。ですから真実であることも多いのですが、こうした思い込みが強固な壁になっているのです。ですが、リモートでのコラボレーションは思っているほど難しくありません。

確かに皆さんには物理的なホワイトボードもポストイットも無いでしょう。ですが私たちにはそれに代わる素晴らしいデジタルツールがあります。そして参加者を巻き込み続けることはもちろん難しいことではありますが、不可能ではありません。実際、これらの問題は対面でのコラボレーションの方法やフレームワークにもよくあることなので、解決するためのヒントも多くあります。リモートでのコラボレーションへの移行の多くは、すなわちその壁を飛び越えるためのエネルギーを見つけ出すことに尽きるのです。きっとうまく行きます。

Design Matters ‘20でプレゼンテーションするKea Zhang氏

また、リモートでのコラボレーションのために適切な行動パターンを用意することがもっと重要です。同じ場所にいて対面のミーティングを行っていれば、他の人の表情や仕草を見ることができるのですから、誰かが居心地悪そうにしていればすぐにわかるでしょう。このレベルで考えれば、誰もが等しくチームに貢献し、また話について来るようにメンバーの関与度合に気を配るのは対面のコラボレーションの方が簡単です。オンライン会議の方がずっと難しくなります。

オンライン会議では、メンバー紹介やアイスブレイクはスキップするものだという、間違った思い込みをしてしまいがちです。私が言いたいのは、そうしたステップを省略したり、そのような思い込みをしてはいけないということです。一番始めの段階から、メンバーの誰もが「参加している」という気分になるように真剣に取り組んでください。そうすることで、リモートコラボレーションの成果に大きな影響を与えることができるのです。

私たちの多くは今年、新たなことに挑戦し、新たなプロジェクトに取り組み、新しい人たちと一緒に仕事をしています。長期的な成果と関係を得るためには、まず誰もが参加しているという気分を確実に作ることが非常に重要です。

──そうした思い込みがリモートでのコラボレーションに与える悪影響についてはすでに多少お話しいただきましたが、逆にコラボレーションの役に立つような思い込みがあるとしたら、それについてはなにか考えをお持ちですか?

今年はいろいろなことがあって疲れ果ててしまって、壁を乗り越えられずに終わってしまった人が多いのではないかと思います。しかし、実際に壁を越えた人、越えるためのリサーチを行った人は、新たなことを学び、挑戦することに対して非常に前向きな人です。ですからそのような人たちは、私たちの業界が本当にリモートでのコラボレーションのプロセスをより良いものにするために役立つようなフィードバックを受け入れる準備ができていると言えます。より良いリモートでのコラボレーションのためには、私たちがお互いからそして自分たち自身から学べることがたくさんあります。

──多くの国が最初のロックダウンに踏み切った3月以来、リモートでのコラボレーションに対する考え方や対応はどのように変わったのでしょうか?

今私が感じているのは、より多くの人がリモートでのコラボレーションに賛同しているということです。はじめのうちは、多くの人がきっと短期的なのものだろうと非常に楽観的でした。ですから誰もが「なんとか乗り切ろう」というような考え方でしたし、余計な仕事が増えそうだという考えからリモートでのワークショップも行わなかったかもしれません。今年も終わりに近づき、まもなくワクチンもできあがるのではないかという状況ですが、この状況がいつ終わるのかは誰にもわかりません。だから私は、多くの人がリモートでのコラボレーションに対してもっと前向きになっており、その経験を共有し、さまざまな実験をするようになっていると思います。

──Design Matters 20の冒頭で、あなたはMentiでの投票を行い、人々がリモートでのミーティングやワークショップの間にどんなことに気を取られているかを遊び心たっぷりに示されました。歯を磨いている人や、Netflixを見ている人もいましたよね。参加者をもっとコラボレーションのプロセスに巻き込むためにあなたが見つけられたヒントについて、あるいはご自身が実行されていることについて、もう少し説明していただけますか?

Design Matters 20でのMentimeterの投票結果

まず最初に言いたいのは、そんなことはおそらく不可能なのだということです。全員に完全に関与してもらい続けることはできません。対面でのミーティングですらほとんど不可能だと思いますから、リモートの場合はさらにその期待値は下げる必要があるでしょう。「本当に集中してほしいときに集中してもらうためにはどうしたら良いか」というふうに考えるべきです。これを踏まえると、色々な手を打てると私は思います。たとえば、Mentimeterも有効なツールのひとつです。様々な質問を設定できますし、それにインタラクティブなツールなので、たとえ全員が積極的に参加していないとしても彼らにはそれが見えていて、意見を反映させることになります。

自分にとって本当に必要な関与度合がどのくらいなのか、自問自答することもときには重要です。ここでの目標はなんですか? 参加者からの積極的なレスポンスが必要なのでしょうか、あるいは参加者は受動的に情報を受け取ってもらえれば十分なのでしょうか? 自分の目指すものが何なのかを明確にすることが非常に重要です。

また、全員の気持ちを引き締め、参加者全員が正しいマインドセットを持てるようにウォームアップを行うことも重要です。全員が楽しい気持ちで、ミーティングの始めの段階で前向きな姿勢で参加していれば、その勢いがそのままミーティングの残りの時間に良い影響を与える可能性がぐっと高くなります。

他にも、デザイン思考の典型的な手法を取り入れています。ワークショップやグループでのブレインストーミングを行う際には、まず始めに個人ワークの時間を設けます。これはインクルーシブなアプローチのひとつで、個人の考え方や働き方の好みを考慮しています。グループとして行うアクティビティでありながら個人でも行えるアクティビティも数多くあります。たとえば、アフィニティーマッピングは典型的なグループでのアクティビティですが、デジタルにおいては個人ワークとしても成立します。

──もう少し論理的に考えたときに、現在のリモートでのコラボレーションに不足しているツールはなにかあるでしょうか?

私が足りていないと思うのは、実際のワークショップを補完するような、アクティビティをうまく進めるためのツールです。たとえば、場の空気を整えて議論を活性化させるような観点をツールに組み込んだら良いと思います。いまでも素晴らしいツールが数多くありますし、それらを組み合わせて使うのは簡単ですが、私としてはただのホワイトボードではなく、もう少しコラボレーションを総体的に捉えたツールがあれば良いと思っています。もし私が「夢のツール」を考えるとしたら、アイスブレイクやウォームアップのためのアクティビティをランダムに作り出すようなツールでしょうか。Slackの拡張機能であるGiphyのようなものかもしれません。欲しいものはどんなものか、望む成果はどんなものか、何人で使うのか、所要時間はどのくらいか、というような情報を与えると、相応しいアクティビティが得られるというようなものです。そんなツールがあったら素晴らしいと思いませんか。特に、今まで一緒に仕事をしたことがない人たちと一緒に働くような場合には、ミーティングが劇的に変わることになると思います。さまざまな場所からこういったアイデアを取り入れて、インスピレーションを得ることはとても素晴らしいことだと思います。

Design Matters 20でワークショップの楽しさについて語るKea Zhang氏

──Design Mattersの中でまず第一にあなたがおっしゃったのは、カメラをオンにしたくない人に強制してはいけないということでした。個人的には、これまで経験してきたビデオ会議とは真逆の考え方だったので非常に新鮮でした。反対意見を聞くこともあるのではないでしょうか?

ビデオ会議においてはカメラをオンにしておくべきだという考え方の人も多くいるので、私としては個人の判断に任せたいと思っていますが、必ずしもオンにしなくても会議を成功させることはできる、ということは知ってほしいです。ファシリテーターであれば見られることに備える必要がありますが、逆に他の人を必ず見なければならないかというとそうではありません。ただその場合は得られるヒントがずっと少なくなるでしょう。全員がカメラをオンにすることを勧めてもいいとは思いますが、強制すべきではないと思います。どちらでも良いということを伝えればいいのです。

以前であれば、ほとんどの参加者がカメラをオフにしているようなリモート会議に参加した場合、私は「彼らは本当にそこにいるのか? ちゃんと聞いているだろうか?」と単純に不安になったと思います。しかし全員が積極的に参加するようなアクティビティを始めるとしたら、どうでしょうか。カメラをオフにしていたとしても、メンバーがきちんと会議に参加しているという手応えを十分に得られると思います。これは自分がメンバーのことをよく知っているかどうか次第ですので、あまりよく知らない場合はカメラをオンにしていた方が助かることが多いでしょう。

──リモートでのコラボレーションが次の段階に進むためにはなにが必要だと思いますか?

どれかたったひとつの要素が必要というわけではなく、私たちが今日お話ししたようなすべての要素を混ぜたものが必要だと思います。つまり、メンバーの意識であり、エネルギーであり、このような全員を巻き込むプラクティスの重要性を認めることです。私は、このパンデミックが終息したあと、どんなことが起こるのかについて非常にワクワクしています。なぜなら、リモートワークはこれからも続くと思うからです。おそらく、非同期で働くための素晴らしいアイデアや、リモートと対面の組み合わせた働き方のアイデアが生まれてくるでしょう。パンデミックがもたらした状況が終わったときこそ、さまざまな働き方を試し、作り出すためのもっと充実したエネルギーが生まれてくるのだと思っています。

──ありがとうございました。今日お話しいただいたことの他に、なにか共有いただける内容はありますか?

十分にお話しできたと思いますが、改めてはっきりさせておきましょう。リモートでのコラボレーションに際してどんな会社にとってもどんな人にとっても本当に重要なのは、各メンバーを巻き込む、取り込むというアプローチです。ワークショップの準備のためにリサーチをするときには、メンバーを巻き込むためにはどうしたら良いかをしっかり考えてください。まったく新しいチームや、お互いをよく知らないようなメンバーで仕事をするときにはより重要です。すでにあるチームと一緒に仕事をするのなら、それぞれの人との繋がりがいまでもあることを確認するためにコミュニケーションを取ることもできます。このような個人的な関係がある場合には、ウォームアップやアイスブレイクの重要性は低くなります。

私の会社は他人を巻き込むための行動についてのトレーニングに力を入れてきましたが、誰もが同じ状況を共有していることを確実にするというのは素晴らしいことでした。これはあなた自身がチームとのワークショップとして実践することもできます。自分自身の行動について振り返りを行い、「もっと良くするのはどうしたら良いのか」について話し合うのです。トレーニングから得られる気づきには非常に基本的なこともあります。たとえば、誰かをミーティングに招待する場合には必ずアジェンダを付けることなどです。そうすれば、参加者は事前に準備をすることができますし、そのミーティングのより良い成果に繋げられます。人を巻き込むための工夫をするのは難しくありませんが、その効果は驚くほど大きいのです。

Written by Tori Campbell
Translated brought to you by Flying Penguins Inc. 🐧

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Design Matters Tokyo 22が来年5月に開催

Design Matters Tokyoは世界のデザイントレンドが学べる、コペンハーゲン発のデザインカンファレンスです。次回は2022年5月14日-15日に開催予定です。GoogleやTwitter、LEGOなどのグローバル企業はもちろん、今年はWhatever、みんなの銀行など国内のデザイナーも登壇予定です。イベントに関する情報はSNSを中心に発信していきますので是非フォローください(カンファレンス参加しない方も大歓迎です)。

👇Design Matters Tokyo 22の情報はこちらから
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