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事業に貢献するデザインを実現。ネクストビートのデザイン組織づくりの挑戦

第一線で活躍するデザイナーやデザインマネージャーを取り上げ、事業や組織の成長をデザインの切り口からお伝えするdesigner’s story by Cocoda。

今回はライフスタイル領域など、複数の領域で事業展開を行う株式会社ネクストビートのデザインマネージャー吉野さん、コミュニケーションデザイナーの岩瀬さんにお話を伺いました。

ジョインしてすぐデザインチームの運営に問題意識を覚え、組織改革の挑戦を始めた吉野さん。岩瀬さんという経験豊富なデザイナーを加え、経営や事業にインパクトを与えるための組織づくりを進めてきました。「小さな動きから始めて、取り組みを本格化させていった」と話す吉野さん。具体的にどのような手順で組織づくりを進めてこられたのか、詳しくお話いただきました!

今回登場するデザイナー

吉野直樹さん
(デザインチームマネージャー / エクスペリエンスデザインユニットリーダー)
大手ITベンチャーや有名アパレルブランドのECサイト、人材系サービス等、多数の事業会社でインハウスデザイナーとして従事。新規事業のバイアウトやスタートアップベンチャーの役員経験を積んだ後、ネクストビートのデザインチーム設計を手掛けるため入社。デザインマネージャーとしてチームビルディングとチームコントロールを担当。

岩瀬雄一郎さん
(デザインチームプリンシパル / コミュニケーションデザインユニットリーダー)
ITベンチャーや大手広告代理店、大手サービス企業などで10年ほどデザイナー、アートディレクターとして経験を積んだあと、社会課題にコミットする企業やサービスのブランディングを手掛けたいと入社。デザインチームのクオリティコントロールや各事業のブランド整理などを担当。

「個人の集まり」から「チーム」へ

ー本日はネクストビートのデザイン組織づくりについてお話を伺えたらと思います。よろしくお願いします。

吉野:よろしくお願いします。デザイン組織づくりの挑戦は現在進行形ですが、今までのことをお話して、少しでもお役に立てたらと思います。

岩瀬:僕は6月にジョインしたので、出てくるのは後半になるかもしれませんが(笑)、コミュニケーションデザインの観点でお話させていただきたいです。よろしくお願いします。

ーまずはネクストビートがどういう会社か、簡単にご説明いただけますか?

吉野:はい。弊社は「保育士バンク!」という保育士の求人転職サービスをはじめとするライフイベント領域、あとはグローバルや地方創生領域で複数のプロダクトを開発・運営している会社になります。

ー吉野さんは今年の1月にジョインされたということですが、当時のデザイナーの状況をお聞かせください。

ネクストビートには全部で8つプロダクトがあるんですが、各サービスに1人デザイナーが所属していました。当時はデザイナーが全員で6人だったので、1人が複数プロダクト担当するケースもありましたね。

私がジョインした1月時点で、デザイナーのチーム自体はあったんです。ただデザイナーが8つのプロダクトごとに散らばっていたので、コミュニケーションも少なく一体感もなかった。チームというよりは、フリーランス的な動きをする個人の集まりになっていて、「これはなんとかしなきゃ」と問題意識を持ちました。

ーその問題意識についてもっと詳しくお話いただけますか。

ジョインしてすぐ前任のマネージャーから引き継ぎを受け、その後デザイナー全員と1on1を行い、状況を回収しました。そこで感じたのが、「デザインチームの運営が形骸化している」ということ。

誰がどのプロダクトのデザインを担うかも、なんとなくリソースが空いてそうな人がアサインされていました。アサイン後はプロダクトごとに縦割りのマネジメントがされるため、デザイナー同士の交流もなく、個人として動く。なので、デザインマネージャーとして彼らをマネジメントすることが難しかったんです。情報共有も薄く、ナレッジシェアなどチームとして成長していく仕組みもありませんでした。

ーなるほど。そういった問題に対して、どのように解決に動かれたのでしょうか。

吉野:まず僕が着手したのが「個人の集まり」を「チーム」にすること。一応同じデザインチームだけど、担当プロダクトがバラバラ、属人化された状態で運営されている状況だったので、チーム内の情報共有、コミュニケーションの活性化を目指し動き始めました。

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チーム意識を高めた3つの「小さな動き」

ー具体的にどのような取り組みをされたんですか。

吉野:まずはデザイナー同士のデザインレビュー会を開き、ブレスト文化を作りました。組織づくりという中長期的な取り組みである且つ、お互いのデザインを見てレビューすることでクオリティを上げるという即効性の高いメリットもあったので、最初に取り組みました。

ーデザイナーたちの反応はいかがでしたか?

吉野:第1回はほとんど誰もしゃべりませんでしたね(笑)。今まで個人でデザインすることがほとんどだったので、ブレストを初めてする人が多かったんです。なので最初は「ブレストとはこうやる」ということを説明し、全員の目線を合わることから始めました。

回数を重ねるうちにデザイナーのみんなもメリットを感じてきて、積極的に発言する人が増えていきましたね。それに応じてデザインのクオリティもどんどんよくなっていくという好循環ができ、徐々に定例化していきました。

ーデザインのクオリティも上がり、チーム間のコミュニケーションも増えるいい取り組みですね。

吉野:そうなんです。だんだんとみんなに「僕たちはチームなんだ」という意識が芽生え始めているのがわかりました。

次に僕が着手したのが「個人の強化」。学習の機会を増やすために、チームで輪読を行うことにしました。デザインに関する本を教材としてピックアップし、章ごとに担当を決める。デザイナーは自分の担当の章を読み込んで、講師となり全員に対してプレゼンテーションを行う。

今まで自分の担当プロダクトの業務にいっぱいいっぱいで、インプットの機会が圧倒的に少なかったんです。「インハウスのデザイナーとして知識を増やそう」をメッセージングをしたうえで、業務の負担にならない範囲でこういった取り組みを進めました。

ー個人のインプットに留めず、チーム間で学び合いを進める素晴らしい取り組みですね。

吉野:ありがとうございます。最後に、デザインツールの統一を行いました。今までSketchやZeplinといった複数のツールを使っていたのを、AdobeXD一本に絞ったんです。使いやすさはもちろん、ツールを揃えることで相互でフィードバックを行いやすくなりました。

この3つの取り組みはどれも外部を巻き込むというよりは、チーム内でできたことなので、小さく始めることができましたね。

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2つのデザインユニットで、事業への貢献を高める

ーなるほど。今の組織体制が確立したのはどのタイミングですか?

吉野:現在のエクスペリエンスデザインとコミュニケーションデザインの2つにユニットを分ける体制の構想はずっと頭の中にはありました。ただいきなり変えるとなってもハードルが高かったので、下準備として先ほどお話した3つを実行したんですね。

ある程度取り組みを継続し、チームの雰囲気もよくなった3月のタイミングで、動きを本格化させました。具体的には現行の2ユニットに分かれた体制づくりのために採用を始めたんです。

本格的に体制を分けるとすると、全体のマネージャーである僕とデザイナーの間に1人経験豊富な人を入れる必要がありました。エクスペリエンスデザインは僕のほうで持つイメージは持てていたので、まずは専門性の高いコミュニケーションデザインのリーダーとして岩瀬に目をつけたんです。

ーここでようやく岩瀬さん登場ですね!

岩瀬:はい(笑)。3月段階で、吉野と面談をしました。その時、ユニットに分ける構想を話してもらったのを覚えています。

ーなるほど。どういった背景でその2つに分けられたんですか?

吉野:今までは1人のデザイナーが、UIUX設計やグラフィック作成など複数の業務を担当して、リソースが足りなくなっていました。日々のタスク消化でいっぱいいっぱいでアウトプットの質も下がっていたんです。

こういった課題を解決するために、UIUX設計やデザインガイド作成などの仕組みをつくるエクスペリエンスデザイン、広告などのビジュアルコミュニケーション、ブランディングの部分を担うコミュニケーションデザインにユニットを分けることにしたんです。それぞれ専門性つけて協業すれば、全体の生産性は間違いなく上がります。アウトプットの質も向上するし、チームとしてのスキルも上がる。

3月からこの構想を形にし始め、岩瀬が正式にジョインした6月のタイミングで完全に体制が完成しました。

ーわかりやすい分け方ですね。ただ組織構造からアプローチするとなると、経営を巻き込む必要があると思います。具体的にどのようなコミュニケーションを取られていたんですか?

吉野:1月に私がジョインした時点で、経営陣に対して新しいデザイン組織の構想を話していました。「おお、こんなことするんだ」と驚かれたのを覚えています(笑)。先ほどお話した3つの取り組みも、リアルタイムで状況を随時共有していました。チームとしてまとまりが出てきて、アウトプットの質が高まったという効果も伝えていたので、終始応援してもらえていると思っています。

岩瀬:やっぱり成果物としてわかりやすく伝えることが重要だと思います。体制が確定して、走り出しの時期に、僕はコミュニケーションデザインの責任者として、ブランドガイドラインといった成果物をちゃんと経営に見せていました。特性に合わせた成果物を常に見せて、デザインという一見わかりづいらい領域を「こういうことをやっているんです」と解像度高く伝えることが大事な気がします。

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ーありがとうございます。一連のデザイン組織づくりの効果を教えてもらえますか?

吉野:ユニットで動けるようになってきて、デザインから施策の提案ができるようになってきています。エクスペリエンスデザインでいうとUX改善といった提案ですね。専門性を高めることで、提案の質も上がって、事業に貢献できるようになりました

岩瀬:コミュニケーションデザインの文脈でいうと、クリエイティブブリーフを取り入れたり、ブランドガイドラインを作ってデザインコンセプトを規定したりすることで、デザイナーがただ単に作る人ではなく会社、そして事業に貢献する人になってきました。あとは単純に綺麗なものをつくるんじゃなくて、プロダクトらしさ、ネクストビートらしさを出せるようになってきています。行き当たりばったりではない、ストーリーに乗ったデザインができていると思っています。

ー最後に今後のデザイン組織の展望をお聞かせください。

岩瀬:日本を代表する会社、そしてプロダクトを作っていくためにデザインチームとして貢献していきたいです。そのためにも、デザイナー1人ひとりが強くなる、そしてチームを大きくして影響力を増やすことは必須です。とはいえ、ユニットを分けたことでデザインチーム内の分断も起こり得る可能性があるので、チームとしての一体感を持つための取り組みも忘れずやっていきたいですね。

吉野:デザインでプロダクトの課題解決をし続けたいです。そのためにも、事業への影響力を持ったデザインチームづくりを引き続き頑張っていきます。

ーネクストビートのデザインチームづくりをこれからも応援したくなりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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終わりに

今回取材にご協力いただいた株式会社ネクストビートではデザイン組織のコアメンバーを募集しています!

ちょっと話聞いてみたいという場合でもお気軽にご連絡ください。

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