1日で終わるデザインを10日かける理由

一人で完結する仕事などはない。クライアントや同僚、外部の事業者など誰かしらと関わりながら仕事は進んでいく。
その中で自分に与えられた仕事の納期を守ることは、関係者にご迷惑をかけることなく仕事を進め、良好な関係を築いていく上で最重要事項である。

しかし、インハウスでデザイナーをしていると、制作物に対しての納期が少し長いかなと感じることが多々ある。依頼者の経験が浅く、工数の見積りが甘いのだと思う。

だけど依頼者が10日でお願いしますと言うのなら、1日で仕上げても、指定された一週間後に提出するようにしている。依頼者の経験不足につけ込むわけではないが、口が滑っても「すぐに仕上げることができますよ!」なんて、言わない理由が3つある。

1つは、1割の時間で完成形まで持っていき、残り9割の時間をダラダラ使って制作物のブラッシュアップをしていくと、結果、クオリティが高くなることが多いから。

2つ目は、与えられた時間の1割で仕事を仕上げても、依頼者の求めるクオリティを満たし、給料分の価値を提供できている(と思うから)。

3つ目は、他にも案件を抱えていたり、急な依頼を受けることもあるので、常にバッファを持っていたいから。

もし、初めの1割で時間で制作物を提出したら、すぐに別の仕事の依頼が舞い込んでくることになる。そうすると、間も無く自転車操業のように常に仕事を回している状態になる。どれだけ沢山の仕事をこなしてもフリーランスのデザイナーと違い、会社員デザイナーは給料は据え置きである。

余った9割の時間は、デザイナーにとっての生命線であると思っている。ただ早く作業をするだけにあまり市場価値はない。この余った9割の時間は自分への投資に使い、爪を研いでおくのが得策である。


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