見出し画像

ACTANT DRINKS #2 「いろんなボードゲームを試してみよう!」

もう先の5月のことになってしまいましたが、第二回 ACTANT DRINKSを開催しました。第二回のテーマは、ボードゲーム師匠であるK社のNさんとMさんをお呼びして最新のボードゲームを試してみよう、です。DRINKSなんて名前をそれらしくつけましたが、内実は「久しぶりにボードゲーム大会やりましょうよ」、「いいですねぇ、おすすめのゲーム持って行きます!」、「了解、こちらはビールと軽食を用意しときます!」という感じのゆるい集まりです。要するに仕事をさっさと切り上げて、ビールでも飲みながらワイワイとボードゲームを楽しもうってことです。

とはいえ、ゆるいながらも、なぜボードゲームに興味があるのかという僕なりの理由があります。まず、iPadやスマホを利用して電車やデジタルなゲームができるようになったのに、一部では未だにボードゲームというアナログな形式が流行している、それはなぜだろう、という純粋な興味。おそらく、野外フェスやレコードの盛り上がりのようなデジタル音楽への反作用と同様、デジタルメディアでは体験できないなんらかの価値があるのでしょう。普段、ACTANTではワークショップを実施する業務が多々あるのですが、ボードゲームのような実際の場で最大限に効果を発揮するアナログツールを試すことで、そこからゲーム性のようなものを抽出できないだろうか、今後のWSツールデザインの参考にならないだろうか、という狙いもあります。小さい画面をひとりでみながらプレイするのではなく、食卓を囲んでみんなで共有しながら場を生成していく楽しみがボードゲームにはありそうです。

そして、そのことは僕のデザイナーとしての興味にもつながっています。それは、グラフィックデザインの役割は問題解決や情報伝達だけではなく、共に場を形成し価値をつくっていくための媒(なかだち)としての可能性があるだろうということです。このような問題意識を頭の片隅に、そしてビールとピザを片手に、ボードゲーム大会を楽しんでみました。

バッグに山程のゲームを詰め込んでやってきたNさんとMさん。一晩だけではプレーしきれないほどの紹介してもらったのですが、特に印象に残った3つだけ簡単に紹介します。

01. おばけキャッチ(右脳系)

画像1

卓上におかれた5種類のコマうちどれが正解かを察知すべく、ランダムに選ばれたカードに描かれた色や形を瞬時に判断し、コマを素早く掴(つか)み取るゲームです。色で判断するのか、形で判断するのか、やっているうちにどんどん混乱していきます。主に右脳が強い人が勝つ傾向にありました。色彩把握能力、形状把握能力、情報整理、瞬発力というグラフィックデザインには欠かせない能力が試されます。

02. フォー・セール(左脳系)


画像2

物件投資のプロセスを簡単にしたようなカードゲーム。建物の価格を吊り上げ、それを売却していきます。2ターンにわかれた競りとなっていて、まずは与えられた資金で不動産を落札し、その不動産を高く売って、より高額な小切手を手に入れることを目指します。プレイ感覚としてはモノポリーに似ていました。左脳と度胸の試される投資ゲームです。この人は普段物静かだけど結構大胆な投資するんだとか、ワイルドキャラのくせに予想以上に慎重だなとか、普段接している近しい人の意外な一面が見え隠れし、それをうまく引き出す仕組みがあるようでした。チームビルディングにはいいかもしれませんし、もしかすると仲が悪くなるかもしれません。わかりません。

03. ディクシット(右脳&左脳系)

画像3

これは以前から大好きなボードゲームですが、必ず盛り上がるのでこの日も再度プレイしました。想像力をかきたてる不思議な情景が描かれた美しいイラストカード84枚を使って遊びます。まずは親プレイヤーが手に持っている抽象的なイラストカードから想起するイメージを言葉で表現して子のプレイヤーに伝えます。各プレイヤーはその言葉を連想するようなイラストカードを自分の持ち札から類推し場にオープンします。並んだカードの中から、どれが親がはじめに選んだカードかを推理して当てるというゲームです。結構複雑なルールですがやってみると意外と簡単。ポエティックな表現スキル、他の人の正確や想像力の癖を把握して、選びそうなカードの傾向を読み取る論理性等、右脳と左脳を駆使して遊ぶゲームでした。他プレイヤーの表情や熱量や創造性を5感で感じ取って情報として利用しながら戦略を練るあたりがデジタルでは味わえない醍醐味かとおもいます。

その他にもたくさんのゲームを紹介してもらいましたが、今回はこのへんで。そもそもサイコロ的なゲームや囲碁や将棋も視野に入れると、おそらく太古の時代から遊ばれていたゲーム形式ですし、すこしネットで調べるとこの数年ボードゲーム市場は史上最高ともいえる成長率だそうです。ドイツでは教材としても重要視されていて、思考することのトレーニングや一定のルールに従った社会的なコミュニケーションの喜びと能力醸成に役立つものとして利用されているようです。

実際のデザインワークにどういかしていけるのか。この日の数時間ではまだまだわかりませんが、コミュニケーションを円滑にする効果があること、シンプルな構成要素なのに複雑なゲーム性があること、共創ではなく競争のほうで集中力を高めて取り組む効果など、いろいろと実践に取り込むべき種を発見できた大変有意義な会でした。NさんとMさん、どうもありがとうございました!(南部隆一)

参考サイト
Gigazine ”紀元前から現代まで続く「ボードゲーム」の歴史、爆発的人気の理由とは?
The Guardian ”Board games’ golden age:sociable,brilliant and driven by the internet

(2016.11.15)