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科研費基盤Cに採択されました

ものとものがたりのデザイン研究会」と題して、ACTANT南部が、愛知淑徳大学の宮田雅子さん、名古屋芸術大学の水内智英さんと共同で進めてきた研究が、引き続き科学研究費助成事業の基盤研究Cに採択されました。題目は、「アクターネットワークセオリーを用いたデザイン理論構築:脱人間中心デザインへ向けて」です。

デザイン思考等々のメソッド的実学や技術中心主義的な観点からのデザイン言説はたくさんありますが、この研究はその系譜には属していません。一言でいえば、人文科学・社会科学的視座から再構築する文化系デザイン批判理論の構築といった研究になります。特に僕の専門であるビジュアルデザインに関していえば、批判理論が近年あまり発展していないように感じます。対して、社会科学諸領域では、いたるところでポストモダニティを乗り越えようとする新しい批判理論が模索されており、それらの動きが実を結び始めています。であれば、その動きを参照しながら、デザインという領域においても現在性のある視点を見出したいという思いが、この研究活動のベースにあります。具体的には、アクターネットワークセオリーという科学技術社会論や人類学領域で議論されている概念を敷衍した、デザイン批判理論の構築を目指しています。

見渡せば僕たちの身の回りに存在するものでデザインされていないものはありません。日々の暮らしを営む生活環境も、常に手のひらの中で参照するようになったメディア環境も、すべてが誰かの手によってデザインされています。近年では、体験さえもがデザインの対象になっています。私たちは常にデザインされた状況の中で暮らしており、それほどにデザインという行為は重要なものなのです。

例えば、テクノロジーや政治をはじめ、あらゆる領域で近代という状況が再考される中で、その状況をつくりだすことの一端を近代に根をおろすデザインが担ってきたとすれば、そのデザインという概念そのものが、他の領域と同じように異議申し立ての対象になるべき事柄なのではないでしょうか。

前フェーズでは理論のリサーチ、有識者インタビュー、東京郊外をフィールドにした仮説の検証、シンシナティ大学でのパネル発表をおこない、それらを研究報告書にまとめました。今フェーズでは、より進んだデザイン理論の構築と、その理論をわかりやすく噛み砕いて実践へと応用できるような手法まで落とし込みたいと企んでいます。乞うご期待。(南部隆一)
(2018.6.12)