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オンラインワークショップで築く、フラットな関係性

こんにちは、ACTANTの伊集院です。以前取り組んだプロジェクトで、通信学校の先生とひきこもりがちな高校生を対象にしたオンラインワークショップを実施しました。

一般的に、Zoomなどのビデオチャットツールを使用したオンラインでのコミュニケーションは、細かい表情や抑揚が伝わらなかったり、あいづちや合いの手を入れた談話形式の会話進行ができなかったりというデメリットが語られることが多いです。

今回は、新型コロナ対策ということもあって、リアルな対面ではなくPC越しでのワークショップとなったのですが、オンラインで実施しつつも、活発な議論から多くの重要な意見を聞き出すことができ、また、参加者にもワークショップに対して予想以上に高い満足度を持っていただけました。

良い結果につながったポイントとして、オンラインだからこそ、主催者と参加者、あるいは参加者同士の「フラットな関係性」が築けたのではないか、という気づきがあったので簡単に共有します。

概要:DixitとMiroを活用したワークショップ

「在宅学習時のウェルビーイングを高めるためのアイデア」をつくることを目的として、今回のワークショップには先生2名と生徒4名に参加いただきました。

高校生にも内容を理解した上で重要な意見を語ってもらうために、設計に応用したのが「Dixit」というボードゲームです。Dixitで使用するイメージカードの絵柄は見る人によって解釈が変わることが特徴で、同じカードが選ばれても、そこから抱くイメージは人それぞれ異なります。その人の想像力や本心を引き出す効果があるので、ACTANTではゲームという場ではなく、デザインリサーチ時のインタビューやワークショップ時にも活用することが多いツールです。

まず、先生や生徒さんに抽象的な絵が描かれているカードを見てもらい、その中から直感的に「心地良い」と感じる絵や「モヤモヤする」と感じる絵を選んでもらいます。絵柄をフックに内容を深掘りして重要な話を聞き出し、その後、引き出した要素から在宅学習時のウェルビーイングを高めるアイデアを検討する、というのが全体の流れです。

また、最近オンラインワークショップによく使われている「Miro」というホワイトボードツールも活用しました。実際のホワイトボードのように文字を記入したり、画像や付箋を貼り付けることができるので、DixitのカードもMiro上に貼り付け、参加者に自分で拡大したり俯瞰したりしながら見てもらい、リアルな場に近い感覚で選べるようにしました。

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オンラインならではの「フラットさ」

物理的な身体差や社会的関係を和らげる
リアルな場で開催するワークショップでは、身長や服装、相手の目線や人との距離感など、様々な要因がその場のコミュニケーションに影響します。対面することによって得られる情報は、コミュニケーションをより円滑にし、議論を白熱させることもあれば、逆に社会的な関係性を強調し、結果的に萎縮や緊張を作り出してしまい、議論を収縮させてしまうこともあります。

しかし、オンラインでは、共有される身体的情報はカメラ越しの上半身とマイクを通した音声に限られるため、立場がフラットになり、萎縮や緊張を緩和することができます。

例えば、今回のように「大人と子ども」あるいは「先生と生徒」のような関係性があったとしても、ビデオチャットのオンライン空間では、体格差からくる威圧感はなくなります。

また、マイクを通じて発言できるので、複数人が同時に会話している時でも、声量を上げて意見を述べる必要がなくなり、一人ひとりの声をしっかり聞くことができます。

心理的安全性を確保し、精神状態を安定させる
参加者から重要な意見を聞き出すためにも、忌憚なく発言できる心理的安全性が確保された空間を用意することが重要です。

オンラインのワークショップでは、Miroを利用することで、リアルな場で開催するワークショップと同様の内容を再現することができるので、参加者は居心地の良い自室に居ながらワークショップに参加することができます。

また、リアルな場でのワークショップとは異なり、パソコンを閉じればパーソナルな空間に戻ることができるという要素も、心理的安全性を高める要因です。今回は、生徒の急な気分の変化にも対応できるように、個別に先生と連絡が取れる状況を用意し、ワークショップからもいつでも抜けられる状態にしていました。

このように、オンラインでは実施体制を柔軟に設定できるため、参加者それぞれが心理的安全性を保つための対策を講じやすく、良好な精神状態でワークショップに参加できるようになります。

フラットな関係性が活発な議論を生む

上記のように参加者間の身体差や心理的な状況をなだらかにすることで、今回のワークショップでは、「先生と生徒」という関係性をフラットにして活発な議論の場をつくることができました。

当然、参加者のパーソナリティーにも左右されますが、特定の領域ではリアルなワークショップよりもオンラインのワークショップの方が積極的な議論が生まれ、結果的に参加者の満足度にもつながっていくのではないかと思います。

例えば、ワークショップの参加者に「先生と生徒」、「大人と子ども」、「上司と部下」といった関係性が含まれ、かつ、コニュニケーションをとる上でそれが障害になりそうな場合は、関係性をフラット化することを目的に、まずはオンラインで開催して心理的安全性を確保することは有効な選択肢かもしれません。