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天川キュイジーヌと現代イタリアン イベントレポート 前編

「非常に繊細で、ここまで集中して料理を一緒に考えたことは、今までのイベントの中でも初めてかもしれませんね」

ジャンルの異なるトップシェフ同士が、華麗なるタッグを組んでひとつのコースを作り上げ、ワインのペアリングとともに提供する。西麻布のクリエイティブイタリアン「サッカパウ」を舞台に繰り広げられる、限定コラボレーションディナー。

これまで、アジアNo.1を幾度も獲得したタイ・バンコクのインド料理レストラン「ガガン」(現在は閉店)や、九州・宮崎という地でありながら、国内外からフーディーたちがが多く訪れる「一心鮨 光洋」など。さまざまなコラボを経験してきたシェフ田淵にして、冒頭のセリフを言わしめたのは、砂山利治さん。

都内ホテルを経て、渡欧。スイス・ジュネーブの1つ星「Le Buffet de la Gare des Eaux-Vives」に勤務。2010年に渡仏し、フランス・ムジェーブの3つ星「Flocons de sel」など、数々の星付きレストランで研鑽を積んだのち、2019年帰国。石川県・金沢に「Les Tonnelles」を立ち上げ、最年少最速でミシュラン2つ星とグリーンスターを獲得。

と、なんともうやうやしい経歴を持つ氏だが、本人はいたって軽やかで、爽やかな笑顔が似合うさっぱりとした好青年。

「金沢で働いて思ったのは、食材が間近にある、猟師さんや農家さんたちがま隣にいる、彼らとコミュニケーションが取れること。その環境は、本当に贅沢だなぁと」

食材の作り手と、料理の作り手。両者が近くにいることでもたらされるメリットとは、なんなのだろう。

「農家さんが思っていることと、僕らが思っていることって違うんですよ。例えば『この野菜は実は美味しいけれど、市場には出せない』とか『こんな食材があるけど、どうやって使っていいか分からない』というのが、けっこうある。ただ僕はそれを生かすためのお手伝いができるし、お互いに理解できたら、少しずつですけど、信頼が生まれる。向こうも考えてくれるようになりますし、僕も提案もしやすくなる。そういうコミュニケーションは、本当にクオリティが上がるしかないので」

地に根を張り、互いを敬う心を交わし、関係性を耕していくことで、豊かな食のかたちが育まれるということ。

現在は金沢をはなれ、パートナーの故郷である奈良県・天川村に移住。今は新たなコンセプトのオーベルジュを立ち上げる準備のまっ最中だという砂山さん。

「金沢から奈良の天川村に移ったばかりでちょうど転換点に当たるので、今日は両方の食材を使ってできたらなと思っています」

まさに“今”しかできない、“シェフ砂山”しかできないコースが堪能できる、またとないチャンスだということ。

加えて、もうひとつある。そう、“ここ”でしかできない、だ。

「田淵シェフと今回ご一緒することができて、僕は楽しいです」

かねてより、田淵のことは知っていたという砂山さん。「サッカパウがオープンした時に撮られた料理の写真を見た時から、ものすごい技術力だなと思っていました。ここまで正確に仕事をされる方は本当に珍しいですし、ずっと貫かれていることも素晴らしい」

今回、最もそれを感じたのが「何でも自分で作る」ところ。

「ソースを魚の形にするんですが、その型紙まできれいに自分で作ってるんです。こういうところまでやれるのは、本当に好きな方だから。

あと体幹がすごいから動きがきれいですし、全然ぶれない。またチーム作り、人への対応もぶれない。恐ろしい、自分にはないものだなと」

一方、砂山シェフにしかないものは?

「やっぱり食材ですね。ここは東京だからこそ手に入る食材で作る料理だと思うんですが、地方だからこそ手に入る食材もあって、僕はその使い方に慣れているので、アプローチが全然違うんですよ。僕は食材を見て、食べて、自分が感じたもので調理する。『自然な料理だよね』って言ってもらえるのは、そういう環境にいたからなんでしょうね。ただどっちがいいとか悪いとかではなく、役割が違う。それぞれの得意なもの、好きなものが合わさったことによる、ストーリーを楽しんでいただけたらなと思ってます」

いよいよコースが始まる。

<後編に続く>


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