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蜜蜂とドライブ

俺:蜜蜂の言葉がわかる男。
ハッチ:「でやんす」が口癖の蜜蜂。
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俺:突然だが俺は、”喋る蜜蜂”の「ハッチ」を飼っている。
俺:何でこの蜜蜂が話せるのかはわからねぇ。
俺:俺にわかることと言えば、「ハッチ」の声は俺にしか聞こえないことだ。

ハッチ:「ご主人、天気が良いからドライブに行きたいでやんす!」

俺:「ドライブ?ハッチ、お前と?
俺:やだね。俺がお前を連れて出掛けると思うか?
俺:大体、お前と会話してるところを見られたら……俺が変人に思われるじゃねぇか。
俺:だから、やだね。」

ハッチ:「刺すでやんすか?」

俺:「それ止めろ。」
俺:コイツはすぐ何かあると尻にある針で刺そうとしてくる……。
俺:「俺は刺されるのが苦手なんだよ。
俺:それに蜂なんか連れてたら……お前、誰かに駆除されるぞ?」

ハッチ:「ぐぬぬ……!!
ハッチ:どうしてもドライブ行きたいでやんすー!!」

俺:「あー!うるせぇな、(SE:蜂の羽音)ブンブンと飛び回るな!!
俺:ったく、わかったから!連れてきゃいいんだろ、連れてきゃあ。」

ハッチ:「わーい!!でやんす!!
ハッチ:早速車に乗るでやんす!!行先はお花畑!!」

俺:「言っとくが俺は免許取り立てのホヤホヤのペーペーだから、
俺:違う花畑に逝くことになるかも知れねぇな。」

ハッチ:「マジでやんすか!?」

俺:「あぁ、免許取ってから……2回しか乗ってない。」

ハッチ:「Oh……。」

俺:「まぁ、多分大丈夫だろ。さ、乗れ。」

ハッチ:「急に不安になって来たでやんす……。」

SE:車の音。

俺:「しかし、花畑っつっても……何処があるか……。」

ハッチ:「ハッチセンサーで確認でやんす!ブブブブ……ブーン!
ハッチ:東京から埼玉、約1時間!”ポピー・ハッピースクエア”が見つかったでやんす!!」

俺:「ポピーか、良いな。初夏らしくて。」

ハッチ:「甘い蜜を吸いたいでやんす……じゅる……。」

俺:「おっし、飛ばしていくか!」

ハッチ:「制限速度は守るでやんすよ!」

SE:車を飛ばす音。
間。
SE:渋滞の音。

ハッチ:「渋滞に巻き込まれたでやんす……。」

俺:「しょうがねーよ、今日休日だしな……(欠伸)ねみぃ。」

ハッチ:「寝られたら困るでやんす!顔の周りを飛ぶから起きるでやんす!!」

俺:「うぉ!?あぶねぇよ逆に!!針出しながら飛ぶな!目が覚めたわ!!」

ハッチ:「違う花畑にはまだ行きたく無いでやんす!」

俺:「おい!隣の人が心配そうに見てる!!隠れてろよ!!」

ハッチ:「ブブブーン!!」

俺:「(溜め息)……あ、もう渋滞は解消されたみたいだな!おっしゃ!ポピーまであと少し!」

ハッチ:「楽しみでやんすね!」

SE:車を止める音&足音。

俺&ハッチ:「「おー……!!」」

俺:「すげぇポピーの数だな。」

ハッチ:「早速吸うでやんす!!」

SE:ちゅうーという吸う音。

ハッチ:「美味いでやんす!」

俺:「ふっ……良かったな、ハッチ。」

ハッチ:「嬉しくて涙が出そうでやんす……。」

俺:「はぁ?そんなにかよ……。」

ハッチ:「だってご主人、今まで外に自分を出してくれないから……。
ハッチ:今日ご主人とこの景色見れて、美味い蜜吸えて……最高でやんす!」

俺:「ま、たまには息抜きにドライブも良いもんだな。」

ハッチ:「また連れてきて欲しいでやんすよ!!」

俺:「ふっ、気が向いたら、またドライブしてやるよ。
俺:今度はもう少し遠くだな。違う花畑に逝かないように気を付けないと、だが。」

ハッチ:「自分、まだ死にたくないでやんす……。」

俺:「ははは!」
俺:こうしてハッチと見事なオレンジ色のポピーを楽しんだ俺は、
俺:帰り、猛烈な眠気と戦いながら車を運転したのだった。


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