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観戦記: 2024 J2 第7節 山形 vs 清水

アウェイ山形戦のレビューを書いていこうと思います。現地では写真のように遠くてピッチ全体を見ることは難しかったですが、DAZNで見直して、両チームの戦術面の工夫がいろいろ見えましたので書いていきたいと思います。
サッカーは本当に「ポジショニング」のスポーツだなということがよくわかる試合でした。


2-0での悔しい敗戦

まずはハイライトをご覧ください。

この試合、報道にあった乾・北川に加えて、カルリまで欠場。前線のキーマン3人を同時に欠くという非常事態になりました。代わりには、トップに郡司選手、左に白崎選手、トップ下には松崎選手が入りました。
郡司は、Jリーグデビュー戦でいきなりスタメン。高校選手権の得点王、大型ルーキーの突然の初スタメンに試合前、私も大きな期待を抱きました。
一方で、現実はそこまで甘くないですね。特に前半は、これまでのような前線からのプレスがハマらず、ビルドアップもスムーズにいかず、終始苦しい展開になります。特に前半は、1-0で折り返したのが、まだ1点差で良かったというほど山形にやられてしまいました。
後半、清水もシステムの変更を行い(後述します)、息を吹き返しましたが、後半15分までの決定機を活かせなかったのが痛かったですね。その後山形も交代選手によって盛り返し、一進一退の攻防に。AT間際に、清水側のミスもあり、後半43分の高橋選手のゴールで2-0で敗戦。清水にとっては初の無得点試合での敗戦となりました。
こちらのゴール期待値を見ても、後半の開始から15分までの時間を除き、終始山形が優勢で、まさに力負けとなりました。

山形 vs 清水のゴール期待値推移

昨季のアウェイ山形戦も現地観戦でしたが、リベンジなりませんでした。山形自体は本当にいいところなんですけどね。このNDソフトスタジアムには苦い思い出が残る形になりました。
一方で、清水が、選手が変わっても今季の戦術コンセプトを貫こうとしたことハーフタイムできちんと修正ができていたこと、何より千葉・郡司・西原・成岡といった若手、西澤にプレーする機会を与えられたことは、今後連戦を行う上でポジティブに捉えています。

山形のシステムは公式発表と実は違った

まずは両チームのスタメン及びシステムを見ていきましょう。

清水のスタメンと狙いは?

山形 vs 清水の清水スタメン

清水は選手こそ変わりましたが、システムは4-2-3-1とこれまでと同じ。ボランチから後ろの布陣はこれまでと変えず。ブラガは吉田の前に置き、スペースを与える・守備の負担を軽くする白崎は中村・山原と絡みながら左起点で試合を組み立てる松崎は右に流れながらブラガとの連携でチャンスメイクをする郡司は最後のフィニッシュの部分に加え若さを活かして前線からプレスをかけ続ける、そうした狙いがあったように思います。
ちなみに前半の25分過ぎからは、2列目のポジションを入れ替えていましたね(後述)。

山形のスタメンと実際のシステムは?

山形の公式発表上のスタメンは以下の通りでした。

山形 vs 清水の山形スタメン(公式)

去年の戦い方から、氣田及び杉山が両WGとして高い位置でワイドに広がり、攻撃をしてくるものと思いました。また最終ラインも「おや」と思ったのですが、公式上は、本来CBの熊本が右SB、左SBで起用されることの多かった左利きの安部がCBに入っています。
でも実は山形の実際のシステムは以下の形でした。

清水 vs 山形 山形のスタメン(実際)

試合が始まった驚いたのですが4-2-1-3といいながら、実際には左WG登録の氣田が中に入り、左SBの吉田が高めの位置で、変則的な3-4-2-1のようなシステムを取ってきました。氣田選手・安部選手・熊本選手の特性を考えてもこのシステムは理に適っています。「本当?」と思われるかたもいると思いますので、山形が最も機能していた前半15-30分の時間の平均ポジションを見て下さい。

山形 vs 清水 山形の前半15-30分の平均ポジションとパスネットワーク

上記の3-4-2-1のシステムとほぼ同じ形になりました。これどう見ても4バックじゃないですよね。
試合後のインタビューでも氣田選手がシステムについて話しています。やはりきちんと用意していた戦術であることがわかります。

--立ち位置は、攻撃の際は3CBのような形になって、左SB吉田 泰授選手が外に張る形でした。どんな狙いがありましたか?
相手の最終ラインに対してウチが5枚取って、その最終ラインにアタックに行けるようにという狙いがありました。そこの部分と、ビルドアップでいろいろな場面で数的優位を作りながら対処できたのが良かったかなと思います。

試合後 氣田選手


これには清水の選手たちも混乱したことは間違いありません。特に吉田豊選手からしたら、自分がマークするつもりだった相手の10番の氣田選手が自分の目の前にいない。
両チームのスタメンを実態に合わせて表示すると以下の形になります。

山形 vs 清水 両チームの基本システム

これは清水を研究し、個々の選手の特徴まで踏まえた、システムだったように思います。山形の攻撃時、守備時のそれぞれの視点で解説をしていきましょう。今後はこちらのシステムをベースに解説していきます。

山形の清水対策は何だったのか?

対策①: 攻撃時にマークのズレを作る

前半の両チームのシステムを組み合わせてみたのが下記の図です。
山形が攻撃時にマッチアップしているイメージはこうなります。

山形 vs 清水 攻撃時のマッチアップ

もちろん試合の局面でポジションは変わり続けますが、山形の視点でいうと以下のような狙いがあったように思います。

  • 攻撃力があり、清水の攻撃の起点となる山原選手には、37番杉山選手をマンマークでつける(相殺でOK)

  • 守備力のある吉田選手とは真っ向勝負を避け、左WG10番氣田選手が中に絞り、バイタルでのボールの受け手になる

  • その分、左SB2番吉田泰選手が高い位置を取り、左WBの役割をする。清水の吉田豊とブラガの間のスペースに位置し、吉田豊をけん制する

  • トップ下25番國分選手が下がって顔を出し、ビルドアップに積極的に参加する

  • 最終ラインの3番熊本選手、4番西村選手、5番安部選手は、左に少しスライドし、3バックを形成する

前半、この変則的なシステムに清水の守備は混乱し、マークのズレが幾度となく生じます。山形の選手が次々にフリーの選手を見つけて、パスを繋げたのも、清水のペナルティエリア内にも何度も進出できたのも、この「偽」システムの成果だったと思います。

対策②: 前線からのプレスで追い込む

次に山形のプレスですが、これは基本に忠実な同サイド圧縮のやり方をしてきました。特に清水から見て右サイドを切って、清水の左サイドに追い込むようなプレスの形が多く見られたように思います。

山形の前線からのプレス

清水は山原を起点とすることが多く、また両CBが右利きであるために、どうしても左周りの展開になりやすい。それなのであれば、山原あるいは白崎のところにボールを追い込んで、奪い切ろうという狙いです。
また清水のビルドアップの鍵となる中村および宮本への縦パスのコースは、高橋、氣田、國分選手が背中で消しながら、南・高江の両ボランチもしっかり見ていました。
結果的に清水は、外回りのボール回し、少し苦しい形でロングボールが目立ちましたね。
前半6分、これは山形の左サイドですが、見事な同サイド圧縮でボールを回収し、その後に12本のパスをつないで、完璧な崩しで左サイドを突破し、國分のクロスから高橋のゴール。オフサイドに救われましたが、これはまさに山形の狙い通りだったと思います。

対策③: 松崎への楔の狙い撃ち

それから山形のもう一つのボールの奪いどころは清水の松崎選手のところだったと思います。松崎選手に楔が入った場合には、ボランチの高江・南中心にかなり厳しいプレスをかけていました。松崎選手へのパスを奪われたシーン、松崎選手のところで潰されたシーンが、前半だけで、合わせて5-6回はあったように思います。上記の前半6分のピンチでもそうですね。
特に前半22分には、松崎のところで連続で奪われて、ショートカウンターを受け、杉山⇒氣田⇒高橋と繋がれて決定機を招きました。

前半22分の山形のカウンターのシーン

このひとつ前のシーンでは、松崎には、高江、南、西村が3人掛かりでプレスにいっていました。このシーンでもCBの西村選手がインターセプトにきており、山形の松崎に対する寄せの意識が非常に高いことがわかりますね。
山形は前後半を通して、ボール奪取数が清水よりも10以上多く。またボール奪取位置の平均も40mを超える41.5m。アタッキングサードの比率が8%(清水は2%)、ミドルサードは54%(同31%)と圧倒しました。

対策④: 清水を間延びさせるビルドアップ

次に、山形のビルドアップ。これも非常に良く考えられたものでした。ビルドアップの際に、山形の3バックはあえて非常に深い位置を取ります。そこで清水のサイドハーフ(ブラガや白崎)が追ってきたら、そこに空いたライン際のスペースに國分が立ち、ボールを受けて、ボランチにレイオフするというやり方が何度も見えました。
前半29分。左サイドに回ったブラガが、山形の右CBの熊本に緩いプレス。ブラガのいたスペースに國分がポジションをとり、熊本から縦パスを受けて、右ボランチの高江に落としたシーンもまさにそうでした。
そして、前半32分の山形の先制点のシーンも同じ形からです。以下がビルドアップの流れです。

前半32分 山形の先制点に繋がったビルドアップ

このシーン熊本・西村・安部の3センターバックが非常に深い位置でボールを回します。おそらく4-5回はCB間でパス交換をします。まるで、清水のプレスを誘うような形で。しびれをきらした白崎及びブラガが熊本にプレスをかけます。それをみてすかさず熊本がボランチの高江に縦パス。中村がプレスをかけにいきますが、高江はワンタッチで國分にパス。國分は、いつの間にか、ブラガのいなくなった右サイドのスペースに、ポジションを移しており、ドフリーで前を向けました。
ここから國分⇒南⇒高江⇒氣田とボールが渡り、最後は氣田選手が巧みな切り返しから、右側のポストを掠めるシュート。権田の伸ばした手もわずかに届かず、山形の先制点となりました。山形にとっては実に5試合ぶりの得点。貴重な先制点を勝ち取りました。
國分選手はトップ下中央の選手のはずですが、実際のヒートマップを見ると、以下に清水の右サイド、ブラガの裏のスペースを狙っていたかがよくわかりますね。

山形 vs 清水の國分選手のヒートマップ

対策⑤: セットプレーのずらし

もう一つ、山形が明らかに清水対策としてやっていたのは、セットプレーの際のずらしです。ゾーンで高いラインで守る清水に対して、山形側のキッカーが必ずキックフェイントを入れて、清水のディフェンスラインを一度動かしてから、ラインが崩れた隙に長身の選手が走り込みヘディングを狙うという形が徹底していました。
まさにそれによって決定機を作られたのが、後半29分のシーン。右斜め45度からの中距離のFK。國分がキックフェイントをして、杉山が左足でクロス、清水のラインが崩れたところを、熊本が近距離ドフリーでヘディング。キックフェイントによりファー側の宮本・吉田がラインを下げてしまったことで、オフサイドにならずに熊本が走り込むスペースを作ってしまったことが原因です。
熊本のヘディングはゴール右隅に叩きつけるものでお手本のようなシュートでしたが、権田選手が左手でスーパーセーブ、さらにキックフェイントをした後でそこに詰めていた國分が弾いたボールをシュート。これも権田が弾きだし、なんとかゴールを守りました。まさにドイツ戦の権田の16秒を思い起こさせるようなスーパーセーブで、清水を救いました。



前半終了間際に、失ったボールを自ら奪い取った住吉がドリブルで前線まで持ち込み、白崎の巧みなコントロールから、山原、宮本、ブラガ、松崎と渡り、松崎の突破から、白崎のアシスト、郡司のシュート。跳ね返ったボールをさらにボレー。ペナルティエリア内で、ゴールへの嗅覚を最後に示せたのは、さすが郡司選手でした。

清水は何がうまくいかなかったのか?

前半の清水は終了間際の郡司の2つのシュートを含めて、シュート3本。ボール支配率も山形に68%も握られるという、これまでの試合の中でも最も悪い内容でした。

課題①: 前線からのプレス

北川・乾が欠場と聞いて、私は試合前に以下の投稿をしていました。

清水の現在の戦術の基盤となっているのは、前線からのプレスです。北川、乾、カルリの3人は、攻撃的な選手でありながら、守備のセンスも極めて高い選手。北川、乾に加えて、カルリも抜ける形となり、前線からのプレスが効くのかどうかは、試合前から不安でした。
北川、乾、カルリの3人の代わりは、郡司、松崎、白崎でしたが、前線からのプレスはあまり有効には機能しませんでした。
山形が、意図的に最終ラインが深い位置でボールを回したこと、3バックの形で数的優位を確保したことなど、山形側のうまさもありましたが、清水側の選手たちに課題があったことも事実です。
例えば、前半13分から14分のシーン。吉田からGK後藤へのバックパスについて、郡司がプレス。連動して松崎も安部にプレスに行きますが、その後ろの吉田泰にブラガが十分にプレスにいけておらず、結局パスをつながれます。その後も、再び、後藤⇒西村と繋がれ、西村を郡司が追いかけますが、縦のパスコースを誰も消せておらず、また中央に絞っている氣田にもプレスにいけず、縦パスを通されてしまいます。
他にもありましたが、前線からプレスに行っても、2番目、3番目の選手が連動せずにパスを通されてしまうと、前線に人をかけた分カウンターのピンチを招くことになります。また前線に縦パスを通されてしまうと、清水のWボランチは、相手のボールホルダーを後ろから追いかけることになり、体力を削られてしまいました。

前半は見てのとおり、少しプレッシングのところでハメることができずに、後手を踏んで足を使わされたなと思っています。やはり二の手、三の手でしっかりとプレッシングに行けるように、われわれらしく攻守において主導権を握る、攻守においてアグレッシブにプレーできるということをもう一度やっていきたいなと思います。

試合後 秋葉監督

秋葉監督も、前半にプレスが上手くいかなかったことを認めていますね。

課題②: ビルドアップ

またこの試合は、これまでうまくいっていたビルドアップも全く機能しませんでした。パスソナーを見てみましょう。

山形 vs 清水の清水のパスソナー

これを例えば、大分戦のパスソナーと比較するとその違いは明らかでしょう。

清水 vs 大分の清水のパスソナー

北川・カルリ・乾のパス数と比べて、郡司・松崎・白崎のパス数が半減しています。その分最終ラインでのパス数が多くなっており、ビルドアップが上手くいかなかったことを如実に表しています。
特に偽9番の動きができる北川、そして偽10番の動きができる乾がいないこと、ある程度アバウトなボールでもマイボールにする力のあるカルリの不在が大きかったですね。
郡司選手はポストプレイヤーではなく下がって受けることは得意ではない。本人のコメントでも監督からは裏抜けをするよう言われていたみたいなので、ビルドアップでの貢献はそもそも求められていなかったと思います。
また松崎選手は、足元でもらうよりもスペースでもらうのが好きな選手。前半何度も、松崎へのパスがずれていましたが、これは周りの選手が乾のように、下がりながらボールを迎えるように受けてターンしてくれるプレーのイメージがある中で、松崎にパスを出してしまい、松崎はスペースでもらおうとしているので合わないというシーンが良くありました。
白崎も本職はボランチで前線からのバックパスを受けることが得意で、後ろ向きで背負ったり、サイドライン際で上下動してボールをもらう動きができる選手ではないため、ビルドアップはうまくいきませんでした。

それ以外にも、8本もらったCKを一度もゴールに結びつけられなかったことや中盤がずるずると下がって、相手のペナルティエリアへの侵入を許してしまったことも課題としては目につきましたが、改めて清水の今季の戦術の生命線は、前線からのプレス(及びゲーゲンプレス)、そしてビルドアップにあることを痛感する試合となりました。

清水はどう修正を図ったか?

とはいえ、清水も何も手を打たなかったわけではありません。前半のポジションチェンジ、後半からのシステム変更と後半途中の交代策が大変興味深かったので解説してみます。

修正①: 前半のポジション変更

まず清水が動いたのは前半25分過ぎでした。実はでしも、その直前に、現地から以下の投稿をしていました。

まるででしの投稿を見ていたかのように(冗談です)、左の白崎を中、中の松崎を右、右のブラガを左に回します。

山形 vs 清水 清水の前半でのポジション変更

狙いとしては、それまで中央で松崎選手がボールを受けることに苦戦していたため、白崎にその役割を担わせ、本来WGの松崎・ブラガを両WGに並べます。攻撃面では改善したように思いますが、守備面は特に左サイドのブラガ、中村、山原の連携があまりよくなく、いくつかピンチを招く結果になりました。ブラガは後ろに吉田がいてこそ、活きる選手なのだなと思いました。
郡司、ブラガ、松崎の3選手に関しては、前線からのプレスについて多くの学びを得たことと思います。

修正②: 後半頭からのシステム変更

前半が全く上手くいかなかったため、後半から郡司に代わり、千葉を投入。(これについても投稿していました。)

以下のように、特に攻撃時は、蓮川・住吉・吉田豊の3バック気味にして、右WBにブラガ、左WBに山原、白崎と松崎がCMFのような形に配置します。

後半開始の清水のシステム3-4-2-1

これはビルドアップに効果を発揮しました。後半開始1分、前半にはなかった良いプレーが出ます。

後半1分の松崎選手のチャンスシーン

スローインから白崎のバックパスを受けた山原が、大きく3バックの右に位置する吉田豊にサイドチェンジ。山形の高橋・氣田が寄せるも、少しインサイドに動きなおしたブラガに縦パス。ブラガは内側にワントラップして左足で、山形の最終ラインにスルーパス。松崎は最終ラインで膨らんで裏に走り抜け、GK後藤雅の飛び出しを確認して、右足でのシュート。シュートは枠に飛んでいましたが、ここも後藤のビッグセーブで防がれます。

その後、後半4分にも、千葉寛太の左ライン際での強引な突破から、ニアゾーンに進入。松崎に丁寧な戻しをして、松崎が左に持ち替えてシュート。GKが弾いたところをまた千葉がいち早く反応し、スライディングで吉田に落とす。吉田のシュートは枠を外れてしまいますが、良い攻撃でした。松崎が受けた時に、宮本が3番目の動きでゴール前フリーになっていましたので、そこにダイレクトで出せていれば確実に1点でした。

さらに後半8分には、中盤で中村と白崎で高江からボール奪取。白崎がスライディングで千葉にパスし、カウンターのチャンスを迎えます。千葉からブラガ、ブラガは右サイドのライン際にいた松崎とのワンツーでハーフレーンの突破に成功。2人の選手を交わして、再び松崎へ。松崎は巧みなドリブルでサイドを突破し、右足でのクロス。ニアに、まさに憧れの岡崎慎二のようなダイビングヘッドで千葉が飛び込みます。これも前半にはなかった良いカウンターでした。

その後のシーンも良いビルドアップがあります。

後半9分の清水のビルドアップ

このシーンも吉田がボールを受けます。3バックにしたことで、数的優位を確保できているため、高橋と氣田もプレスにはいけず宮本をシャドーカバーでマークする形で留まります。うまくフリーになった中村が、前線を見ながらボールを受け、それに呼応した千葉が下がってボランチの間で楔のパスを受けます。それを前を向いて前線に抜け出そうとしたブラガに落とし、チャンスになります。宮本のサイドチェンジが引っかかってやり直しになりましたが、中央の楔からサイドにはたくという、乾がいるときのようなスムーズなビルドアップでした。

修正③: 前線からのプレスの整理

ビルドアップに加えて、千葉寛太選手が試合後のインタビューでも語っていたように、ハーフタイムで前線からのプレスについても修正がなされたようです。

おそらくこれは、普段清水がやっている前線からのプレスの決まりごとについて、以下のような確認を行ったのだと思います。

  • 山形がビルドアップ時に3バックになり深いラインを引くこと

  • ボール保持側のCBの2枚に対して、千葉と松崎がプレスにいくこと

  • その際のシャドーカバー(背中側)で高江・南両ボランチへのパスコースを切ること

  • サイドハーフ(白崎とブラガ)は山形の最終ラインまでは深追いせずボール側はサイドバックを追い込む形で千葉・松崎と連動すること

  • 非ボール側のサイドハーフは中に絞って、宮本・中村とともに、相手の中盤の選手をマークすること

などです。図で書くと以下のようなイメージです。

山形 vs 清水 清水の後半の前線プレスのイメージ

結果的に、前半のようにボランチや國分経由の組み立てではなく、山形のCBからのロングボールが目立ちました。

修正④選手交代

おそらく後半のプランは、最初の15分で1点を返すことだったと思います。前述の通り、良い攻撃ができていましたが残念ながらゴールを割ることができず、1-0のビハインドの展開が続きます。
清水の新しいシステムに山形側も徐々に慣れてきて、ここはさすがだと思うのですが、ブラガが3バックの外側の右WBのポジションになっていたのですが、ここの守備時のポジションが悪く、その隙をつかれて、山形2番吉田泰選手に何度か突破を許します。
これを受けて秋葉監督は次々に交代カードを切ります。

  • 後半21分 ブラガ→西原(西原はブラガのいた右サイドにそのまま入る)

  • 後半30分 吉田→北爪(4バックに戻し北爪は右SBに)

  • 後半30分 白崎→西澤(西澤が右WG、西原が左WGに)

  • 後半41分 松崎→成岡(中村がトップ下、成岡は宮本とWボランチ)

最終的には下記のフォーメーションになっていました。

山形 vs 清水 清水の終盤のシステム

西原選手は特に左サイドに回ってからは、鋭い縦の突破で相手を置き去りにしていましたし、久しぶりの出場となった西澤は、ピットを縦横無尽に走り、ボールを何度も引き出して、質の高いクロスやコーナーキックを蹴っていました。成岡も今季初出場ということで前向きに捉えられると思います。おそらく疲労マックスであろう中村選手もトップ下でも非常に良いターンをするなど輝きを放っていました。
一方の山形も、後半24分、34分、ATとセオリー通りの交代で、フレッシュさを保ち、清水に隙を与えませんでした。後半43分の、蓮川選手のクリアミスによる山形36番高橋選手のゴールで、万事休すとなりました。

総括

昨年に続き、アウェイ山形戦での敗戦。また今回は今季初の無得点と大変悔しい結果になりました。
主力が抜けた後で、今季の前線からのプレスおよびビルドアップを継続できるのか相手が想定とは異なる戦い方をしてきた中で前半のうちに選手間で修正ができるのかなど多くの課題は残りました。
一方で収穫もたくさんあったように思います。一つは、メンバーが変わっても、今季の清水の戦い方を変えずに、高い授業料ではありますが、郡司・千葉・白崎・西原・西澤など、これまで出場機会が限られていた選手を長い時間プレーさせることができた。ブラガ・松崎も含めて、前線からのプレスやビルドアップについて不足する部分を多く理解することができました。これは今後のJ2の長い戦いの中で必ず効いてくると思います。
またハーフタイムにきちんと修正ができ、このメンバーであっても、後半は山形相手に互角の戦いをすることができたということ。これは清水の分析担当が良い仕事をしている結果だと思いますし、昨季からの明確な違いだと思います。
前半は、シュート数で山形8に対して、清水は3。ボール支配率は山形68%で、清水は32%でした。試合トータルでは15 vs 11、支配率は54% vs 46%。つまり後半だけのスタッツは、シュート数は山形が7で、清水が8。ボール支配率は、山形が40%で清水が60%。スタッツ的にも清水が上回りました。もちろん山形が無理に仕掛けずにある程度引いたことがあったからですが、決して悲観する内容ではなかったように思います。
山形はフル出場した高江・南のWボランチが素晴らしかった。ヒートマップを見ればこの二人がどれだけ走ったのかが良くわかりますね。

山形 vs 清水 高江選手のヒートマップ
山形 vs 清水 南選手のヒートマップ

清水も、松崎は、前半こそボールロストが目立ちましたが、後半のように左サイドに流れてのプレーができれば、トップ下の位置でももっと活躍できると思いますし、後半頭から45分プレーすることができた千葉も、非常に良いプレーが目立ちました。悔しい思いをしていた西澤も、おそらく強い想いがあったのでしょう、精力的に動き回って精度の高いプレーをしていました。
郡司選手も、プロデビューおめでとうございます。ほろ苦いデビューだったと思いますが、岡崎選手もそうでした。絶対に次につながる経験ができたと思います。この日はまだ高校生ですから。

最後に

さて、もう明日になりましたが、中3日でホーム徳島戦です。徳島は監督退任、強化部長退任、主力引退、選手の不適切発言などまさに渦中にあります。一方で、「解任ブースト」という言葉がある通り、逆に選手が団結して、これまで以上の力を発揮することも良くあります。
清水側として、原選手に加え、前節乾・北川・カルリが欠場している中で、ボランチより後ろの選手は連戦で疲労が蓄積しており、選手のコンディションが心配です。
でも次は清水のホームです。どのメンバーが出ても、きちんと勝ち切れる強さが清水のホームにはあるはずです。「優勝するチームは連敗しない」必ず勝ちましょう。(また展望は書こうと思います)
最後に秋葉監督のコメントを置いておきます。

選手たちに伝えたのは、今日の敗戦はもう忘れて、中3日のホームでどれだけもう一度強い姿を見せられるかどうか。どれだけ立ち直った姿を見せられるかどうか。もうそこに尽きると思っていますから、もう一度奮い立たせて、徳島を相手にしっかりとしたものをお見せしたいなと思っています。

山形戦後 秋葉監督


明日は今年初のナイトゲーム(☔みたいですが)

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