観戦記: 2024 J2 第20節 愛媛 vs 清水
リーグ後半戦の初戦となる、アウェイ愛媛戦のレビューを書きたいと思います。この試合、悔しすぎる0-3での惨敗でしたが、清水にとって学びの多い一戦だったと思います。J2優勝に向けてこの学びを活かさなければなりません。そんな想いを込めて感想を書きたいと思います。
愛媛の戦術に嵌り0-3の完敗
アウェイにおいて横浜FC・山口に連敗をしていることもあり、必勝の構えで臨んだ清水でしたが、愛媛の高度な戦術に歯が立たず、0-3という大量失点・無得点というまさに完敗の結果となりました。ハイライトはこちらです。
前半の早い時間で先制点を奪われ、その後も愛媛に粘り強く守られ、後半の終盤にカウンターの形から2点を追加され万事休す。試合全体のスタッツは以下の通りです。
スタッツ的には、清水はシュート・支配率・パス数・ゴール期待値・ボール奪取位置と上回っています。これは展開として愛媛が早い時間に先制し、清水が追いかける展開だったことを示してます。一方で、愛媛にとってはこのスタッツほどの清水の脅威は感じていなかったと思います。それは先制してからの戦い方も、整理できていたからだと思います。
愛媛にとっては、首位清水を叩きのめすという会心のゲーム。清水にとっては大事な折り返しの初戦かつ、課題としているアウェイ連戦の1試合目で痛恨の敗戦となりました。勝ち点ののみならず、得失点差にも大きなマイナスとなり、1試合少ない長崎と勝ち点差3となり、得失点差を考えれば長崎がこの1試合を勝てば、清水は首位陥落するというところまで追い込まれることになりました。
でしも現地観戦していましたので、負けた当日は悔しくて、試合のことはあまり考えられなかったのですが、何度か試合を見直して、愛媛の何が良くて、清水の何が悪かったのかが、少し見えてきましたので、解説を書いていきたいと思います。
この試合の敗因とは?
試合との石丸監督の言葉がすべてだと思っています。
また窪田選手も以下のように語っています。
石丸監督のいう「清水の守備の難」とは何か?清水はハイプレスを標榜しているのに、窪田選手がいう通り「清水はあまり強く行けなかった」のは何故か?その中で「カウンターが嵌った」のは何故なのか?この試合の全般を通じて起こっていたことをざっくりまとめると、以下の通りかなと思います。
愛媛は最終ラインでのビルドアップの際に、CB2枚(小川と森下)にGKの徳重が加わり、3枚で数的優位を作っていた
清水は北川がGKの徳重に、乾とブラガがCB2枚にプレスすることになり、結果的に他のフィールドプレイヤーが7対8となり、特に愛媛の両SBのうち1枚がフリーになるケースが散見された
清水の3-4-2-1の武器である左WBの山原は、愛媛の右WG茂木にピン留めされて守備に戻らざるを得ない局面が多くなった
愛媛は最終ラインでのビルドアップの際に、1トップの松田が中盤の深い位置まで落ちて最終ラインからの縦パスを受けて、清水のCBの1名をおびき出し、レイオフする(ダイレクトでボランチやCBに落とす)形を良く狙っていた
これによって清水の最終ラインはCB2枚で広大なスペースを守ることになり、愛媛で自由を与えらえた曽田や窪田が斜めのダイアゴナルランで再三裏を狙ってきた
愛媛はゴールが見えたら、手数をかけずに、迷わずに足を振り抜いてシュートをすることを徹底し、清水にカウンターのチャンスを作らせなかった
この戦術が見事に嵌ってしまった理由は、清水が個の強さをベースに、人につく守備をすること。基本的には「ブロックを組む」ことをしないため、愛媛の選手が動くと深追いする形になり、マークの受け渡しをあまりしないこと。これこそが、石丸監督のいう「清水の守備の難」だったのだと思います。
それでは前後半に分けて試合の振り返りをしたいと思います。
前半の流れ
両チームのスタメンとシステム
両チームのスタメンとシステムは以下の通りとなりました。私は現地では気づきませんでしたが、石丸監督の試合後のコメントを見ると、愛媛は3バックを守備時の基本系としていたようですね。
但し、ビルドアップの際には、戦術のように右CBの尾崎がSBのようなポジションを取り、GKが最終ラインに加わることで、4-4-2に近い立ち位置になっていたと思います。
これによって、愛媛がフィールドプレイヤーにおいて数的優位を作り、この図では尾崎選手ですが、フリーの選手が生まれ、清水側にマークのずれが生じるということが起こりました。
前半立ち上がりは清水がチャンス掴むがカウンターで失点
前半開始早々、清水がこの試合最初のチャンスを作ります。キックオフから前節の藤枝戦同様に、左の山原、右の北爪が高い位置を取ります。
北川→乾→北川→ブラガ→北爪とテンポよくパスを繋ぎ、北爪がドリブルで相手ゴールライン際まで持ち込み、一人交わしてからバックパスで原へ。原のクロスはPA中央に待つ北川に合いますが、惜しくも左に外れます。この時、PA内に、5人が進出しており、藤枝戦のいい流れをそのまま持ち込んだ形で期待感が高まりました。
前半3分の、愛媛の最初のビルドアップシーンは、徳重からのゴールキックがタッチを割ります。あれ、愛媛はビルドアップうまくいってないのかな、とこの時は思いました。
前半5分には、松田が倒れたことでレフリーが止めましたが、そのリスタートの際に、乾が相手の隙をついて、一気に裏に抜ける北川にパス。PA内で見事なトラップをしてシュートを放つもブロックにあいます。
清水ペースかと思いましたが、前半6分に、乾に対して尾崎(乾のマンマーカーをしていましたね)が高い位置でプレッシャーをかけて、マイボールのスローインにします。この辺りから若干風向きが変わり始めます。
前半6分、そのリスタートから、谷本→曽田→松田と、マークのズレをついて縦に繋げます。さらにその後の前半7分にも、乾の中村へのパスがずれて谷本にカットされ、ショートカウンターを受けますが、ここもパスがずれたので事なきを得ます。ただ清水のペースが明らかに狂い始めます。
そして、前半7分の愛媛のゴールキックからのリスタートのシーン。愛媛の前半3分のGKの保持とは全く違う形でのビルドアップ。GKの徳重のビルドアップに北川がプレスをかけますが、落ちてくる松田に縦パスを通されてしまいます。
この時点で前線からプレスをかけにいった、北川、ブラガ、乾、宮本、北爪の5名がおいていかれてしまいます。その後、松田がレイオフにより深澤にパスを落とし、深澤から、完全にフリーになっている尾崎にパスが入った際には、4対3の局面になってしまいます。
ここからフリーの尾崎がドリブルで2度持ち込んで、ダイアゴナルに斜めに走る窪田にスルーパス。窪田は権田の前でループ気味のシュートを放ち、いとも簡単にゴールを奪うことに成功します。
愛媛としては、最初のビルドアップの機会に、狙い通りの得点。清水は、落ちてきた松田に縦パスを簡単に通され、また尾崎のマークを誰もできておらず、一瞬で崩されてしまいました。もちろん、窪田選手のシュートは非常に技術の高いものでしたが、愛媛としては狙い通りの形だったと思います。
先制点を奪われたことで、愛媛は、5バックでブロックを形成するようになり、清水はゲーム展開としては厳しくなりました。
前半戦清水も反撃を試みるが愛媛が守り1-0で終了
前半10分、権田のキックから、前線で山原がキープし、北川→乾→北川→乾と二人の関係で、中央を突破し、乾がPA内に進入してシュート。深澤選手が後ろから決死のタックルでなんとか防ぎます。
前半11分、連続でのCK。2本目のCKのこぼれを乾がカットして、ドリブル。ポケットを取りながら、単純にはクロスを上げず、さらにゴールポスト付近まで乾がドリブルで切り込みます。右足でのシュート気味のクロスは徳重が触り、こぼれを北川が反応しますが、わずかに合わず。この日は愛媛の選手は最後の部分の集中力が素晴らしかったです。
前半14分、清水がまたマークの受け渡しの面でまずい守備。37番のCB森下がハーフラインまで持ち上がり、清水も北川が、中は切って追い込んでいる形なのですが、右サイドで茂木が下がる動き、それに対して曽田が上がる動きで入れ替わることで、茂木に山原も中村も引き付けられてしまい、森下の縦パスで、曽田に簡単に裏を取られてしまいます。おそらく中村は山原にステイして裏をケアしてもらい、自分が茂木のマークに行く考えなのに対して、山原は茂木についてしまったことで、マークが外れます。より危険度の高いエリアを優先的に守ることが守備の原則なので、確かに山原は曽田を見るべきだったかもしれません。が、清水の守備は人につくことが原則なので、このような縦のポジションチェンジにうまく対応できません。
前半17分の愛媛のコーナーキック。ショートコーナーからダイレクトでの落としをファーサイドに速いクロス。それに反応した尾崎選手のヘディング。シュートは外れますが、これと全く同じ形を見たことがありますね。左右は逆ですが、横浜FC戦の福森→ガブリエウの先制点のシーンと全く同じ。これだけでも愛媛が清水を分析して、対策を立ててきていたことがわかりますね。
前半19分、今度は清水の良い攻撃。最終ラインから高橋が、ショートパスで繋ぐのではなく、右サイド斜めに走った北川にロングフィード。北川は愛媛CBの森下と1:1になっており、競り合ったセカンドボールを北爪が拾い、前に前進。右サイドに残っていた北川に展開し、北川からGKと最終ラインの間にアーリークロス。そのまま走り込んだ北爪が合わせますがわずかに届かず。その後のスローインから、乾→ブラガでブラガのミドルシュート。CKを獲得します。狙いのわかる良い攻撃でした。
前半25分、これもちょっとしたところなのですが、清水のもったいないシーン。愛媛のビルドアップの局面でブラガと北川で追い込んで、GKの徳重に苦しい体制で蹴らせることに成功します。徳重のキックは、ドフリーの原の上空へ。原は目測を誤ったのか、トラップや周りの選手へのパスではなく、ヘディングでのクリア。これを曽田に回収されてしまいます。ここで清水が繋げれば、前線にプレスにいっていた北川、ブラガが深い位置で残っているのでカウンターのチャンスになるところでしたが、せっかくGKに蹴らせたのにセカンドボールを拾われたので逆に愛媛のチャンスに。曽田から原の上がったスペースにポジションした窪田にパスが入ります。そしてこの試合激しく上下動を売り返していた走力に優れる4番山口が一気にインナーラップで駆け上がり、ここに通されていれば決定的なピンチでした。ここは原が粘りカットします。
前半30分の山原流血による中断のシーン。権田が、乾・北川と長い時間話し合いをします。おそらく、左サイドにいる乾が、相手の尾崎にマンマークを受けて、孤立してボールに触れられていないので、右サイドに出るようにというアドバイスだったと思います。
前半36分、清水が良い守備からのショートカウンター。相手最終ラインの小川にブラガが寄せて、小川はもらいに来たボランチ谷本にショートパス。ここに宮本も連動してプレス。谷本の縦パスを北爪がカットして、一気にカウンターのチャンス。
跳ね返りを北川が拾い、左サイドを走る乾に展開。乾が絶妙のトラップでPAに進入し、横パス、北爪がスルーして、北川へ。少しずれたためダイレクトでは打てず、1回タッチしてからのシュートは相手に阻まれます。北爪選手はこの試合も高い位置でカウンターの起点になっていました。奪ってから必ずインサイドまで走り込むのがいいですね。
前半38分、乾のスルーパスから北川が抜け出しかけますが、33番小川選手が良い対応。
前半終了間際の45分、乾起点のチャンス。宮本からセンターサークル前でボールを受けると絶妙なトラップで前を向きます。乾→ブラガ→北川→乾とダイレクトで繋ぎ、最後は北川のフライスルーパスから乾がスライディングシュート。枠を外れます。
最後に清水にコーナーキックのこぼれ球から乾がシュートを放つシーンもありましたが、前半は1-0で終了しました。
前半の総括
前半のスタッツは以下の通りとなりました。
特筆すべきは愛媛のオフサイドの数。全般的にオフサイドの少ないJ2ですが、愛媛がいかに裏を狙っていたかがわかりますね。
清水保持時には5バックで下がってセットしていたため。5バックですべてのレーンを埋められると、清水としても崩すことがなかなかできません。それではと、ショートカウンターで、速い攻撃でシュートで終わることはできていましたが、崩し切る前のシュートが目立ち、ゴールを割ることはできませんでした。愛媛も回数は多くありませんが、時折カウンターで清水のゴールまで迫っており、決してドン引きしているわけではなかったです。
清水としては、後半45分にどう追いつくか、逆転するか、何かしらの動きが必要になりました。
後半の展開
ハーフタイムに両チーム選手交代
愛媛は茂木→パクゴヌ、清水はブラガ→カルリと基本システムは変えずに同じポジションで選手を入れ替えます。カルリ―ニョス選手は、山口戦で足を痛めてからの復帰になりますね。確かに3-4-2-1のシステムのトップ下の位置であれば、ブラガ選手よりも適性があるため期待が高まります。愛媛の交代は理由はわかりませんが、清水のキーマンである山原を守るために、茂木→パクゴヌとマーカーをフレッシュな選手に入れ替えたということかもしれません。
清水は前に出る姿勢が裏目に出て追加点を奪われる
清水は後半頭から、さらにギアを上げて、アグレッシブに前に出ます。もちろんこれはハイリスクハイリターンの戦術。
後半1分、愛媛のカウンターのシーン。乾の横パスをカットした森下が、縦に速いボールを下がって受ける松田に出します。一度尾崎に預けて、尾崎は曽田に縦パスを入れます。アグレッシブなプレーを心がけていただであろう、高木が、そのボールを前に出てカットしにいきますが、曽田選手に競り負け、曽田選手が間を向いてプレーすることになり一気にピンチを招きます。難しいですが、CBとしては①インターセプト(パスカット)、②チャージ(ボールを受けた瞬間にチャージしてボールを奪うのを狙うこと)、③ディレイ(ボールを奪うことは諦めて相手のプレーを遅らせること)の優先順位で、①は確実にそれができるときに狙うべきなのですが、ここはその駆け引きに失敗してしまいます。パスの出し手の尾崎にプレッシャーがかかっていたわけではないので、①を狙うのは厳しかったかなというのが個人の感想です。曽田はドリブルで切れ込んで、ペナルティエリアアークに優しいパス。そこに走り込んだ窪田が、右足でゴール右上隅にきれいなシュートを放ちますが、ここは権田がスーパーセーブで阻止します。しかしこれは先制点と同様、清水のCBが釣り出されてしまったことで招いたピンチでした。
その後後半2分にも愛媛のチャンス。映像が切れているのでわかりませんが、ゴールキックの跳ね返しを、曽田→松田→深澤と繋ぎ、深澤が宮本のチャージを受けながらも、右足でのシュート。ここも権田がセーブします。
逆に後半2分、清水の攻撃。交代で入ったカルリ―ニョスが右サイドをドリブルで強引に持ち込んで、相手DFラインを下げさせてから、カルリ→北爪→宮本→原→北川と繋、北川がペナルティアークからターンして左足でのシュート。枠内に飛びますが、徳重にカットされます。後半からオープンな撃ち合いの形になります。
後半4分、今度は高木の前に出る姿勢がプラスに働いたシーン。谷本のドリブルが大きくなったところを、深いタックルで奪います。これが乾に渡り、乾はターンから、左サイドに展開。山原はドリブルで粘って速いクロス。ただこれはカルリには合いません。話それますが、今やっているEUROを見ていると、高いクロスはあまり得点に繋がらず、深い位置で、ニアゾーンなどなるべく内側に入って、グラウンダーのクロスの方が得点率は高いので、そこは意識したほうがいいかもしれませんね。
後半6分のシーン。清水が長い時間保持して、ボールも良く動かしてはいるのですが、愛媛の5+4のブロックの外側で回す形になり、ゴールに近づくのは、サイドレーン大外からのクロスのみということで、決定的なチャンスにはなりません。もう少し工夫してニアゾーンへの侵入を試みたり、ミドルを撃ってみたり、ドリブルでつっかけて即時奪回を狙ってみたり、いろいろな手を打たないといけないかもしれませんね。クロス主体で行くのなら、やはりタンキなどヘディングの強い選手の存在が最前線に必要ですね。
後半9分、愛媛の最終ラインからのビルドアップ。前半の先制点と同じような形で清水のプレス網を突破します。
このときは徳重に北川がプレス。左CBの小川に徳重がパス。小川にカルリがボランチへのパスコースを背中で消しながらプレス。ただこのパスを最前線から下がって受けに来た松田に通されてしまいます。この時宮本と中村は誰にもついておらず、この間を通してはいけないのですが、最前線の松田が下がって受けに来るという予測ができていないためなのか、宮本は左サイドの山口を気にしたからなのか。松田には高橋が釣り出されてチェックにいきますが、ダイレクトでパクに落とされ、パクには山原がチェックに行きますが、これまたヒールで曽田に流され、曽田が前を向いた時に、尾崎、深澤、松田、窪田がスプリントをかけて、5対3のような局面を作ります。曽田→松田とつないだところで、宮本が良く戻って松田がシュートを打つことを防ぎ、松田→曽田→深澤でシュートで終わります。清水はあれだけ保持してシュートが打てなかったのに対して、愛媛は一瞬でゴール前に迫ります。
後半10分、カルリから北爪に良いスルーパスが出ますが、北爪がトラップミス。北爪が裏を取るシーンが少なかっただけに、もったいなかったですね。
後半12分、清水の攻撃。中村が松田から素晴らしいプレスでボールを奪い、乾→カルリ→北爪と繋げて、北爪からアーリークロス。ただこれはCKに逃げられます。ここも、アーリーではなくて、ゴールライン側に持ち込んでも良かったシーンでした。
続けて、後半13分。中村から、インサイドに入った北爪にパス。北爪から、サイドではるカルリへ。カルリはドリブルで切れ込んで、山口をフェイントで交わし、北爪に優しいグラウンダーのマイナスのパス。北爪は大事にシュートを放ちましたが、原に当たってしまいゴールを外れます。ただこのシーンは、原・カルリ・北爪のポジションが入れ替わって、フリーの状態を作っていたこと。カルリが単純にクロスを送るのではなく、ドリブルでPA内まで切れ込んでグラウンダーでのマイナスのクロスを選択したことで、後半のこの時間までの中では最もゴールに近づいたシーンになりました。
清水の同点ゴールが近づいたかと思われた、後半14分に、先ほどと同様、前線からのプレスを簡単に交わされて、失点のシーンを招きます。
この時はゴールキックから、いつもと同じく、徳重、小川、森下が最終ライン3枚でボールを回し、深澤と谷本の二人がボールを受けようとします。この時は、右サイドの森下に入った際に、深澤が右サイドに落ちることでボールを受け、谷本に横パスを繋ぎます。
この時、深澤にプレスにいった中村、そして谷本についていたはずのカルリが簡単にはがされてしまい、谷本にドリブルでの持ち上がりを許します。ここにはカルリがついていくべきでした。谷本のドリブルの独走を警戒したのか、そもそも何故か最終ラインから大きく前にポジションを取っていた高木が、思い切って前に出てチェックに行きますが、それを見て、谷本は右に上がっている尾崎にパス。尾崎には山原がチェックに行きますが、尾崎はダイレクトで、高木が上がって空いたスペースにスルーパス。ここにパクが走り込みます。
パクには前線から戻ってきた乾が追いかけますが、追いつけずにグラウンダーのクロス。高橋が中途半端にクリアしたボールが、この日初先発で素晴らしいプレーをしていた曽田選手の前にこぼれ、思い切ってシュート。高橋選手の足にあたり、ゴールに突き刺さります。これも1失点目と同じように、最終ラインからのビルドアップから、電光石火の縦に速いカウンターでやられた形。清水の守りの難を突かれてしまう形になりました。
清水はこのとき守備の陣形が全く整っていませんでした。乾が中途半端な位置におり、中村が深澤にプレスにいかざるを得なかったこと。谷本に対してカルリがついていけなかったこと。中村のポジションを埋めようとした高木が前に出ておりまた谷本を潰せなかったこと、山原が尾崎にチェックにいったがダイレクトでパスを出されてしまったこと、乾の戻りが間に合わなかったこと、高橋が中央にクリアしてしまったこと、などミスが重なればおのずと失点は生まれてしまいます。
清水は選手交代で流れを変えようとするが、、、
清水にとっては、横浜FC戦、山口戦に続いて、同点に追いつく前に追加点を奪われるという苦しい展開。出ていかざるを得なくなります。ただそれに対して愛媛もカウンターで対抗。清水は、得点が奪えない中で体力を削られます。
2-0になった中で、先にカードを切ったのは愛媛。後半19分に得点を決めた両選手、窪田→佐藤、曽田→菊地の2枚を交代します。ハーフタイムでの茂木→パクの交代も含めて、ある程度ローテーションで、運動量を落とさないための交代ですね。この辺りも良く考えられていました。清水も後半20分に北爪に代えて松崎を投入。4-2-3-1の形にシステムを変更し、カルリを左、松崎を右に配置します。
後半22分に、交代で入った松崎の右足でのシュート。ただ力はなくゴールには届きません。
後半25分を超えても、清水が保持する中で、愛媛が集中力高く守りながら、時折、鋭いカウンターを浴びせるという展開が続きます。清水が得点を取るよりも、愛媛がさらに追加点を獲る可能性が高いような、そんな展開が続きます。乾の疲労も目立つようになり、珍しくボールロストが多くなります。流れを変えられない清水は、後半29分に、乾を諦め、乾→タンキ、宮本→矢島と交代。清水は今度は4-4-2にシステムを変更します。
早速後半30分には、CKのこぼれから、カルリがヒールでテクニカルなパス。矢島が左足で丁寧に上げて、タンキがヘディングを狙いますが、わずかに合いません。タンキが入ったことで、空中戦の迫力が増します。
清水の交代をみて、愛媛は後半31分に松田から舩橋に交代。天皇杯ハットトリックで、磐田ユース出身の高卒ルーキーを投入します。
後半32分。ボランチに入った矢島が、中盤でボールを奪うとトップ北川に素晴らしい楔のパス。これを北川が落として、タンキが左足を豪快に振り抜いてミドルシュート。ただこれはうまくヒットせず枠には飛びません。
後半34分には、佐藤選手にトラブル。途中交代されたばかりですが、浜下に交代します。これで愛媛は交代カードを使い切ります。浜下も天皇杯で2ゴールを決めた選手です。
そうこうしている間に試合は終盤へ。清水はミドルシュート含めて攻勢を強め、多くのCKを獲得したりするのですが、ゴールには繋がりません。
後半終盤に愛媛がダメ押しの3点目で万事休す
後半39分、中村のスルーパスから山原が抜け出し、タンキへクロス。しかしこれも合いません。
清水は後半41分に最後のカード、北川→郡司に交代。北川は交代時に悔しさから声を出します。
後半45分、松崎が左足でシュートも枠を外します。タンキに流しても面白かったのかもしれません。
その直後の後半45分。徳重のゴールキックから、何故か中村と高木が重なって競り合い、高木のヘディングが中央に飛んでしまいます。それを浜下選手が胸トラップして、そのまま浮き球をボレーによるロングシュート。シュートは無情にもゴールに吸い込まれてしまいます。試合を通して、フィードなど素晴らしい部分はあるのですが、高木選手は、まだまだ若く経験不足もあるのでしょう、前に出る際の判断のミスが気になりました。
最後まで、サポーターは声を出し続けますが、最後までゴールを割れずに試合終了。愛媛の選手の多くがピッチに倒れ込むほど、愛媛の選手は最後まで走り切りました。清水は、3-0での完敗。アウェイ3連敗となりました。
後半の総括
後半のみのスタッツは以下の通りです。
ボール支配率、パス数、コーナーキックの数こそ清水が大きく上回りましたが、シュート数・ゴール期待値はほぼ互角。清水がボールを持たされ、愛媛が粘り強く守りながら、カウンターによってチャンスを作られるような展開になってしまいました。
やはり、前半の先制点が痛かったことと。とは後半の頭で同点に追いつけなかったこと。さらには、交代策が効果的ではなく、結果的に先に追加点を奪われてしまったことで、苦しいゲームになりました。
全体の総括
3-0というスコアを見れば、もちろん悲観的な気持ちにもなりますが、一方で、攻撃面では、試合を通じたゴール期待値は1.57、シュート数19本と、決して悪くない内容でした。一方で、前節で権田選手が「新システムでまだ練習に時間をかけられていないため、練度に課題がある」と言っていたように、特に守備面では大きな課題を露呈した形となりました。
秋葉監督は試合後に以下のコメントを残しています。
秋葉監督はアウェイの戦い方を見直したい、という主旨のコメントを残していますが、個人的には「アウェイの戦い方」というものはなく、対戦相手によって戦い方は変わるのだと感じています。
この試合を踏まえて、3つ課題を上げるとしたら、
守備における決めごと
セットプレーのバリエーション
控え選手の有効活用
かなと思います。
まず一つ目の、守備に関して決めごとですが、例えば、相手のGKが加わる形での最終ライン深い位置でのビルドアップに対しての前線プレスの考え方、また相手のFWの選手が楔を受けるために深い位置まで降りたときのマークの付き方、(愛媛に限ったことではないが)同サイドで数的不利を作られたときの対応の仕方、などをしっかり詰めて、選手間で意思統一をしないと、場当たり的な守備になってしまうと思います。これを採用するシステムごとに考えるという大変な作業になるはずです。
次に、セットプレーのバリエーションについて。さすがに獲得しているセットプレーの数に対して、セットプレーからのゴールが少なすぎます。左足のキッカーがいないという問題もありますが。それでも他チームのようにショートコーナーや、マイナスに出すことによるダイレクトボレー、ニアで逸らせてファー、ニアに選手を走らせて大外に一人待たせて折り返し、などもっとバリエーションを増やして欲しいと思っています。
最後に控え選手の活用ですが、愛媛戦も、カルリ、松崎、タンキ、矢島とひとり一人の選手は決して悪いパフォーマンスではなかったと思います。特にタンキ選手は、これまでアウェイで勝利した群馬戦を除いて、リーグ戦では十分な出場時間を得られていません。アウェイでの得点力不足に悩まされている現状を考えれば、最初から北川とタンキの2トップにするなど試してもいいように思います。また、気になるのはここ最近の吉田選手の出場時間が減っていること。攻撃は最大の防御というように、現代サッカーでは、守備は最大の攻撃という面もあります。また吉田選手が後ろに控えることで、ブラガ選手や松崎選手、そして最近出番のない西原選手もより活きるという部分もあります。先制点を相手に先にとられないためにも、吉田選手をスタメンで起用するというのもあっていいように思います。
最後に
J2リーグ後半戦、出だしから躓く形になりましたが、未だ清水は首位。勝ち点は20試合で43と優勝ペースの1試合勝ち点2をまだ上回っています。
そういう意味では、次のアウェイ秋田戦は、アウェイ連敗の流れを断ち切る上でも極めて大事な試合になります。
蓮川選手、住吉選手、西澤選手と怪我から復帰してくる選手もいると思いますし、先日アジズ・ヤクブ選手加入など、明るいニュースもあります。
サポーターができることは応援することのみ。秋田戦はそこまで現地に行ける人は多くないかもしれませんが、それでも全力で声を出して、選手の後押しをしてきます。
目の前の試合を全力で戦い抜きましょう!
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