見出し画像

観戦記: 2024 J2 第17節 清水 vs 水戸

5/26(日)にさわやかな五月晴れの中で行われたホーム水戸戦のレビューを書きます。私もいつも通り西スタンド2Fゴール裏にて現地観戦をしました。去年あれだけ苦い思いをさせられた相手でもあり、また連敗を避けるためにも、絶対勝たなければいけない試合でした。


新たな選手の活躍もあり2-1で見事勝利

結果は、矢島の芸術的なフリーキックおよび白崎の見事なヘディングシュートで2-1で接戦を制して勝利。特に前半で同点に追いつかれた以降は、水戸が横浜FC同様の清水対策を実践したこともあり、苦しい展開でしたが、後半の交代策含めて、なんとか勝ち切りました。「勝てばすべて良し」という言葉がぴったりなゲームだったと思います。
まずはハイライトを見てみましょう。

難敵水戸相手に、想定通り苦しい試合でしたが、後半の乾選手の投入による効果および、高木選手・白崎選手という出場機会の少なかった選手たちの活躍により、2-1と勝利。勝ち点3を獲得、ホームでの無敗記録を伸ばしました。スタッツは以下の通りです。

清水 vs 水戸のスタッツ

清水としては珍しいのですが、まずゴール支配率とパス数でわずかではありますが、水戸に上回られており、またシュート数やCK数でも負けています。また水戸の守備戦術が嵌ったことが一番表れているのはボール奪取位置。42.8mと非常に高い位置で、前回の横浜FC戦もかなり前からこられましたが、それでも36.2mだったことを考えれば異常な高さですね。
もともとの水戸のスタイルと重なっていたこともあり、水戸はやはり前節の横浜FCの戦術とかなり近い形で、迷いなく清水に向かってきたという印象を持ちました。特に前半が顕著で、あそこまで最終ラインの3-4枚以外の6-7枚の前線の選手が、清水の最終ライン・ボランチまで人数をかけてプレスをしてくるとは。横浜FCとの違いは強いて言えば、(清水が裏対策をしたこともありますが)水戸は裏のスペースを狙うだけではなく、45番の寺沼選手に後ろ向きでキープさせるような形も織り交ぜてきたことでしょうか。そして清水にとっての最大の違いは、三ッ沢とアイスタのピッチの質と、後半に乾選手が完全復活といえるような活躍を見せたことでしょう。この辺りを中心に試合の展開を見ていきたいと思います。

前半の展開

スターティングメンバーとシステム

両チームのスターティングメンバー及びシステムは以下の通りになりました。

清水 vs 水戸 スターティングメンバー

両チームとも予想外のスタメンとなりました。
まずは清水。期待された乾の先発復帰はお預け、ここ数試合同様4-4-2で左MFに矢島を起用します。驚いたのはボランチに宮本ではなく白崎を8試合ぶりにスタメン起用。これまで宮本・中村の不動のWボランチは崩しませんでしたし、前節横浜FC戦はベンチ入りさえしていなかった白崎をスタメンに抜擢します。
そしてさらに驚いたのは、左CBに住吉の代わりに、高木践のスタメン起用。これまでの試合はルヴァンカップ以外は全試合でベンチ入りもしていませんでしたので、このタイミングで初先発するのは誰も想像していなかったと思います。
でしnoteにも書きましたが、確かに1週間前の日曜日に行われた松本山雅とのTMにおいて、白崎も高木も良いパフォーマンスだったので、意図は理解できるのですが、それにしてもベンチではなく、いきなりスタメンとは。
秋葉監督は大胆だなと思いました。
そして水戸は前節から、ツートップを入れ替え。昨年清水戦で点を奪っているエースの安藤選手が欠場、代わりに前節の大分戦で後半頭から出場して、後半の巻き返しに貢献した寺沼と落合のコンビになりました。この寺沼選手、ナイジェリア人とのハーフで身長188cmとフィジカルに優れた選手。そして落合はここ最近は「スーパーサブ」として途中交代から3得点をあげていた選手が先発になります。またボランチには長井選手が復帰しました。

前半序盤は一進一退の攻防

今年のキャプテン北川は、コイントスの勝率が非常に高く、前半はサポーターを背に守り、後半はサポーターに向かって攻める「デフォルト」のピッチを選択するのですが、この日は水戸がコイントスに勝ち、ピッチの入り替えを選択します。この辺りのいやらしさはさすが水戸という感じですね。
キックオフでいきなり、北川がチャンスを演出します。キックオフからボールを真ん中で受けてするするとドリブル突破。左サイドの深い位置で山原が受けてクロスを上げます。キャプテン自ら、この試合であるべき姿勢を示します。

前半サポーターに向かって攻めることに

前半3分から4分の攻防。清水の山原のスローインを受けた高木選手に、相手FWの寺沼選手が猛然とプレス。これが高木選手にとってのファーストタッチだったと思いますが、高木選手はビルドアップを諦めて、右前方にロングキック。これを水戸が回収し、左サイドでパス交換をしながら前田選手がロングボール。ここに寺沼選手が反応し、ゴールライン際でキープ。左からクロス、更に流れたところを右からクロス。こぼれたところを最後は甲田がシュート。中村がブロックしましたが、水戸にとっての最初のシュートになりました。
そして清水の保持の場面。権田から山原にグラウンダーのパスを送ります。この山原に、右サイドの甲田が猛然とプレス。山原が左サイドのライン際でフォローに入る矢島にパス。その矢島にもサイドバックの2番後藤田選手がプレスをかけに行きます。水戸の非常に前がかりな連動したプレス。
たださすがの矢島選手は、トラップはせずにダイレクトで、カルリに楔を入れて、カルリはレイオフの形で中村に落とし、右サイドのハーフレーンにいるブラガに繋ぎます。
この縦パス+レイオフが、横浜FC戦以降に練習を積み重ねた前線プレスに対する清水の対策のひとつだったと思います。何度かこのやり方で局面を打開できていました。
通常のチームだったら、あるいは清水でもピッチコンディションが良くなかったら難易度が高いプレーの連続ですが、清水は相手のプレスを「外す」ことに成功し、ブラガがドリブルで突破。この時点でブラガの前には3人のディフェンスのみ、広大なスペースを駆け上がります。左サイドの矢島にスルーパス(これが矢島選手のスピードを考えると少し強かった)、矢島はキープして山原にバックパス。このタイミングでまさにbox-to-boxの動きと言えますが、白崎がフリーランで左サイドのニアゾーンに走り込みます。そこに山原がボールを出します。わずかには合いませんでしたが清水の良い攻撃になりました。

このシーンで水戸と清水の狙いが良くわかりました。水戸は、①前線から枚数をかけてプレスをすること②ボールを奪ったら寺沼選手に向けてロングボールを送ること③ボールを保持出来たら手数をかけずにシュートで終わること、などです。逆に清水は、①相手のロングパス対策としてラインを上げすぎないこと、ダイレクトパス、一つ飛ばしのパス、フェイントなどにより、②水戸のプレスを外すことで数的優位を作ること③プレスを回避できたらドリブルなどで一気に攻撃をすること、などです。
それぞれの戦術が絡み合うような面白い試合でした。

清水側の狙いが出たのが、この後の前半10分のシーン。権田→山原→高木とパスの出しどころを探っている中で、高木に対して落合が猛烈なプレス。高木は思わず権田に下げ、権田は右サイドの原にパス。ただ水戸の新井はそれも予想して、パスを受ける前から原に対して猛烈なプレス。完全に嵌ったかと思いましたが、ここで原が違いを見せます。新井の股を抜いて、完全に抜き切り、すかさず、この日前線のリンクマンとして良い働きをしていたカルリに楔の縦パスを入れます。水戸からすると、前線に枚数をかけてプレスをして嵌めたはずなのに、個人技によって局面を打開されたことになりますね。カルリは反時計回りに大きくターンをしながら、ドリブルで一気にかけあがります。カル→北川→矢島に渡り、矢島から山原へのスルーパスはわずかに長くなりましたが、このシーンも両者の狙いが顕著に出たシーンになりました。

前半16分にも清水に良いシーン。左サイドのスローインからカルリ→矢島→山原でボールを受けると、山原が、右サイドのペナ角に立つ原にきれいなサイドチェンジ。原はその位置からアーリークロスを上げて、相手のクリアが浮いたところをカルリが反応して、右足でシュート。清水最初のチャンスになりました。
逆に前半20分には、水戸の狙いの形。ボランチの長井が落ちての3枚でのビルドアップのシーン。その長井から、右サイドから高木を引き連れて走っていた寺沼にロングボール。寺沼はシンプルに落合に落として、また戻しを落合からもらい、少し距離はありましたが、左45度の位置からシュート。
水戸は最終から闇雲にロングボールを蹴るのではなく、このようにターゲットとなる寺沼が横に動いたり、周りの選手が合えて引いたりして、裏だけではなく、寺沼にポストプレーをさせるような攻撃も狙いでした。ここは横浜FCと違う部分ですね。

前半の序盤は両チームの狙いが良くわかる一進一退の攻防になりました。

この日はShimiZooを開催

セットプレーから両チームが得点

先制点に繋がるきっかけとなるCKを奪った前半21分からのシーンこのシーンは、清水のやりたいことが詰まっており、清水の前線のプレスの場面から見返してみることをおすすめしたいのです。
相手が先ほどと同様、長井が左サイドに落ちての3枚でのビルドアップ。そこに対して、清水は最初は最終ラインに対しては無理にプレスをかけませんが、相手左サイドバックの大崎選手に入った瞬間、ブラガが縦を切ってプレス。10番前田への横パスに対してカルリが厳しいプレス。バックパスがずれて、大﨑が背走しながらゴールを追いかけますが、これを見て、ブラガが縦切りでプレス。長井にボールが出たところを、カルリがプレス。中央に位置する4番山田へのパスは北川が狙っているため、長井はGKの松原までバックパス。そこに対して北川が頑張って詰めにいきます。松原は少し蹴り損ねてしまい、それに反応した矢島がカット。まさに前線の4人がきちんと連携したプレスにより高い位置でボールを奪うことに成功します。
続く清水の保持の場面ですが、水戸の切り替えも早く、出しどころを見失って、清水は後退を強いられます。最終的にはボールが権田まで戻り、それに対して水戸がまた前からプレスをかけます。ただここでもこのハイプレスを外す鍵は、高木の正確な楔と、矢島の見事なレイオフと、それに対する中村のサポートでした。これで矢島が完全にフリーで前を向き、左サイドで迷いなく走る山原にパス。ダイアゴナルランでニアゾーンに進入したカルリにスルーパス。カルリはフェイントを入れてクロスを上げますが、これは相手DFに阻まれてCKとなりました。この一連のプレーに清水のトレーニングの成果が凝縮されていますね。
これで得た左CKのこぼれ球に反応した高木が相手からファールをもらい、ゴールに向かって左側、いい位置でのFKのチャンス。矢島の蹴ったボールは、ニア側の左上隅に飛び、バー→GKに当たってゴール。清水のレジェンドである澤登のFKのような美しいゴールになりました。松下アナの「矢島できたーーーー」という実況も良かったですね。

矢島選手は意外なことに直接FKのゴールは初とのこと。これで今季2点目になりました。

但し、清水はその直後が良くありませんでした。清水がカウンターを仕掛けようとした際に、北川が簡単にボールを奪われてしまい、上がろうとしていた原の裏で残っていた新井にパス。新井はそのままボールを持ち運び、CKを獲得します。
左CKで水戸の大崎のインスイングでのCK。寺沼に合わせて高く上がったボールに高木がクリアしますが、長井の足元に。長井はダイレクトで鮮やかなボレー。地を這うような弾道でゴールの左隅に突き刺さりました。
ブラガのシュートブロックが甘いという指摘もありますが(確かにシュートブロックに背中を向けてはいけませんが)どちらかというと、このゾーンで守る際の、セカンドボールに対する、チームとしての守備の考え方の課題の部分が大きいかなと思います。こぼれ球を狙うために相手選手があのような位置にいる際には、誰かがケアをした方がいいのかもしれません。
わずか3分で同点い追いつかれてしまい、逆に水戸が勢いに乗ります。いわき戦でもありましたが、せっかく得点を奪った後、早い時間で失点するということは、仙台戦、いわき戦、栃木戦とあったので、集中が必要ですね。

前半の最後15分は徐々に水戸のペースに

水戸は同点ゴールの後に、森監督が、ジェスチャーで「2人の間に入りなさい」というような指示を出していました。おそらくこれは、寺沼と落合のポジショニングの微修正が行われたのではないかと思います。両者バラバラではなく、清水のCBの間のポジションを寺沼がとり、その衛星的な動きを、近い距離でするようになり、ロングボールから寺沼がキープをして落合に渡すようなシーンが増えていきました。この時間帯は水戸のペースとなりました。
清水も、この時間帯で唯一のチャンスは前半38分。前半10分と同様、水戸の前線のプレスが効いているなかで、原が個人技で縦突破してフリーになり、一気に駆け上がって逆サイドまで展開。山原のクロスからカルリのヘディングシュート。ただし個人で打開しなければチャンスにならないという状況が続きます。
前半42分は、2トップの関係性の修正から、落合がバイタルに落ちて、そこに長井がパスを通し、落合がミドルシュート。コースに飛んでいましたが、これは権田が見事なセーブ。
水戸は2トップが中で近い距離にいることで、サイドのスペースは両サイドハーフの新井・甲田がつく形が多くなりました。かなり水戸にボールを保持された印象ですが、そこまで決定機は作らせず、1-1で折り返します。

前半の総括

まずは前半のスタッツを見てみましょう。

清水 vs 水戸 前半のスタッツ

ホームなのに、水戸にシュート数、ボール支配率、パス数で上回られることになりました。時間帯別のボール保持率とシュート数は以下です。

清水 vs 水戸 前半時間帯別の保持率とシュート数

やはり、最後の15分間は2/3以上の時間を水戸がボールを保持するという極端な差が出ました。同点に追いつかれたことで相手に勢いを渡し、また前線の立ち位置を変えたことで水戸が優位にゲームを進めたことがわかりますね。

後半はサポーターを背に戦います

後半の展開

ハーフタイムに両チーム1名ずつ選手交代

ハーフタイムに両監督が動きます。ちなみに現在のJリーグのルールでは、交代枠は5人まで、また交代回数は3回までという制限があります。但し、この交代回数の制限には、ハーフタイム中の交代は含まれません。(交代回数を意図的に増やすことによる時間稼ぎを防ぐルールのため)よって、監督によっては積極的にハーフタイムで選手を変えるチームもありますね。清水はあまり多くないですが、この日は、前半終了間際に足を痛めたカルリを下げ、前節に復帰した乾選手を投入します。乾選手も横浜FC戦の後半途中から出場、翌日の松本山雅とのTMでも前半フル出場し、コンディションを上げてきていました。また水戸は10番の前田に代えて、6番の高岸を投入します。メンバーは以下の通りになります。

清水 vs 水戸 後半のメンバー

清水は乾の投入で、「乾システム」の4-2-3-1に変更します。前半終盤の悪い流れを、乾投入で断ち切れるかどうか、注目の後半になりました。

後半立ち上がり乾投入でペースを掴んだのは清水

後半最初にチャンスを得たのは水戸。後半2分、高岸→寺沼でポストプレー。長井に落として、前半から寺沼と縦関係になっている落合に預けて、落合がバイタルに一歩引いてキープして右サイドに展開。後藤田→甲田と渡り、シュートのクリアを高岸が拾って、キックフェイントで外してミドルシュートを放ちます。
後半3分から4分、今度は清水の良い攻撃。一度奪われたボールに対して、ブラガが追い込み、大﨑のクリアを白崎が拾い。白崎から原、ブラガ、白崎、乾、原、ブラガ、乾、中村と小刻みにボールを繋ぎます。そしていつのまにかバイタルのハーフレーンにポジションを移していた原にパス。相手の一瞬の隙をついてフリーになる原。これに反応して裏抜けする北川、ダイレクトでまたいつの間にかPA内中央に進入した白崎へ。

後半4分の清水の攻撃

白崎はダイレクトで打てばよかったのですが、さらにファー側を回る、矢島にパス。これは少し合いませんでしたが、乾の効果か、パスが面白いように繋がる良い攻撃になります。
このように乾が絡むことで、人とボールが良く動き、その間に時間もできるので、原や白崎が前でポジションを取ることができましたが、これが追加点の伏線になっていました。

白崎のヘディングによる追加点

そして清水にとって貴重な追加点が後半8分に生まれます。右サイドの原のスローインから、白崎→原→乾。ここで乾が見事なターンからスライドして、中村とワンツーで右から中央にボールを動かします。乾から高木。そして高木からグラウンダーのパスで左サイドに上がる山原へ。右サイドから左サイドに揺さぶることで、一歩ずつ水戸のマークがずれているのを突いた形ですね。山原からの縦パスを受けに、サイドレーンに斜めに走る矢島を囮にして、山原はハーフレーンの最前線にいる北川へ鋭いパス。北川は一度・二度とフェイントをして、ゴール前に走る白崎、ブラガにスルーパス。白崎はここでもチャンスと見て長い距離をスプリントしていました。一度は弾かれますが、北川が回収して、ダイレクトでペナ角に上がる原にパス。さらに左から右に揺さぶった形となり。原にはマークが付け切れていません。原はトラップして、オフサイドではいことを確かめて、ブラガ、北川、白崎、矢島とPA内に4人が飛び込む中にクロス。

清水 vs 水戸 後半8分の白崎の追加点のシーン

白崎がドンピシャで合わせて、右サイドに突き刺します。白崎としては珍しいヘディングでのゴールになりました。
白崎選手にとっては8試合ぶりの出場ということで、本当に嬉しい今季初ゴール。出場機会を得られずにかみしめていた悔しさをここで晴らすことになります。同じく出場機会を得られていない若手へのメッセージにはこみ上げるものがありましたね。

--試合に出られない時期を振り返って。
本当にいろんなことがあったし、いろんな葛藤もありました。ただ、試合に出られない人たちはどのようにトレーニングをしていたのかとか、一歩引いていろいろ見ることができる時間でもありました。当然、最初は納得できない部分もありましたが、自分としては早い段階で「じゃあ、もうトレーニングで魅せればいいでしょ」というメンタルに切り替えました。紅白戦をやっても、自分のチームが勝つようにやってきたし、それが逆に、試合に出ている選手たちにとっても良い刺激になっていたとは思います。一喜一憂せずに、自分がやるべきことだけに集中して、練習を積んできました。

試合後 白崎選手

追加点後も清水が乾中心に良い攻撃を継続

後半10分から11分の清水の攻撃も、追加点と同じような形。権田のロングキックに、右サイドで乾が見事なトラップ。ブラガがキープして乾にパス。乾は右サイドのセンターラインから、左サイドに走る、山原に見事なロングサイドチェンジ。長短織り交ぜたパスでゲームを支配します。山原が受けた週間に追加点の形と同様に、左サイドのサイドレーンに走る矢島、それを囮に中央バイタルに走る北川にパス。トラップは流れますが、そのこぼれ球を矢島がシュート。このクリアを中村から、PAに進入した乾にヘディングでパス。これは惜しくも通りませんが、清水が押し込みます。その後水戸が一気に寺沼にパス。ただリスク管理をしっかりしていた高木がうまくサイドに寺沼を追い込み山原がボールを奪取。矢島との大きなワンツーから、ドリブルで抜け出し、北川にクロス。ニアで合わせたヘディングは肩に当たってしまいゴールを外れました。
さらに続く後半12分。このゴールキックを高橋が競り勝ち、左サイドの矢島にヘディングで繋ぎます。矢島→乾→ブラガ→乾とつなぎます。乾は白崎とパス交換をして、(このシーンも是非見直してください)ここで乾らしい高度な縦パス。乾は、体の向きと視線は完全に左サイドでフリーになっている山原に向けており、誰もがそこにパスを出すと思った瞬間、右足のアウトで矢島に縦パスを通します。そして、急にスピードを上げてパス&ゴー。矢島も北川に縦のスルーパス。北川はいつ見ていたのかわかりませんが、PA内に乾が走り込む確信があったのでしょう。ほとんど中を見ずに、横パス。PA内にスピードをもって入り込んだ乾が右足アウトサイドでシュート。これはキーパーにセーブされますが、乾を軸とした素晴らしい攻撃でした。
後半14分、清水の右サイド深くでブラガがボールを奪い、フォローした白崎が最終ラインで受けます。この形は松本山雅とのTMでもあったのですが、ここから白崎が、優しいゴロのパスを中央で下がって受ける乾へ。(これも見て欲しい!)乾は、相手ボランチの長井と、乾を追って前で奪おうとした33番牛澤をあざ笑うかのようにバックパスを刻みながら、この身体の動きだけで2人名を置き去りにしてボールをフリーで前に運びます。そしてその乾の前方から斜めに走って右サイドでフリーになった矢島へスルーパス。矢島はシュートではなく、クロスを選択したたため、相手のブロックに会いますが、一瞬で決定的なチャンスを作る、乾らしいプレーが出ました。(山口戦1試合で乾選手を評価している方は水戸戦のプレーを見直して欲しいです)

後半だけでパス数40本超え

両チームによる選手交代で試合は終盤へ

清水に完全にペースを握られる中で、水戸の森監督も動きます。後半19分に甲田→野瀬を投入。清水も後半22分に矢島→松崎で、ブラガを左に回します。
それでも乾を中心にした清水のペースは変わりません。
まずは後半22分から23分。高橋の前に出ての素晴らしいクリア。この浮き球を中央の乾が軽よかなタッチで白崎に落とし、またリターンを受けて、今後は松崎とワンツー。タメを作ります。その間に左サイドに上がる山原。そしてそこに乾から完璧なサイドチェンジのパス。山原は一度中村に下げ、中村→北川→山原→乾→山原→中村→高木→中村→山原→乾→中村→乾→山原→高木→原→高橋→高木→山原→乾→高木→中村→乾→中村→高橋→高木と、左サイドを中心に、すごい数のパス交換。水戸の選手たちの足を止めます。最後の高木の縦パスはカットされますが、ネガトラですぐにボールを奪い返します。
後半24分、今度は白崎の横パスを受けた乾が、先ほどの矢島の縦パスと同様、右サイドのアウトサイドでブラガに縦パスを通します。センターサークル付近で受けたブラガは、ここから一気にドリブルで加速して、PAの手前まで来てシュート。こぼれ球を北川が詰めます。
これを見て、水戸が二枚替え。後半25分、落合→草野、新井→山本と前線の選手を入れ替えます。落合は後半こそ少し落ちたように見えますが、寺沼とのコンビは脅威でしたね。

後半25分から両チームのメンバー

交代で投入された選手が見せ雅を作ります。後半27分の水戸後半最大のチャンス。ビルドアップから、後藤田と野瀬で右サイドを突破。ここはブラガの守備がルーズになっていました。クロスにファーで山本が合わせます。ここは原が身体を張ってシュートを打たせません。ただ流れたボールを大崎がカバー。代わって入った草野が、うまくバイタルでボールを受けて、少し遅れて寄せる白崎と原の間を割ってシュート。無回転気味の良いシュートでしたが、これは権田がスーパーセーブでゴールを守ります。

清水は3バックへの変更で試合を締めに

後半30分、残り時間を考えて、清水はタンキと住吉の66番・99番のフィジカルモンスター2名を投入。システムも3バックに変更して、試合を締めにいきます。

清水 vs 水戸 後半30分からのメンバー

タイミングおよびメンバー選択含めて、良い攻撃だと思いました。個人的には高木選手と高橋選手のポジションは逆のパターンもみてみたいですが。
後半34分には清水の良い攻撃。中盤でボールを奪った白崎から、乾。乾は右サイドの松崎にスルーパス。松崎はタメをつくって、PAのニアゾーンに走り込んだ乾にパス。乾のタンキへのクロスは阻まれましたが、PA内まで詰めていた原の前に。原が中央にバックパス。走り込んだ白崎がドフリーでミドルシュート。惜しくも右に外れました。
水戸は後半37分に、長井→久保で前線の枚数を増やします。
その久保に後半38分に決定機。住吉が深い位置でボールを持ちますが、39番山本のプレスを受けて、奪われたボールが中央への絶妙なパスに。寺沼が繋いで、フリーの久保へ。久保はペナルティアークの付近から左足で左隅に。シュートは右に外れます。
清水は後半42分に、足の釣った高木→吉田に交代。原が右CBに下がり、吉田は右WBに入ります。
AT2分には、左サイドで乾と山原のパス交換から、山原が抜け出し、ポケットを取ってクロス。ここはマイナスの位置にいたタンキを使えれば面白かったと思いますが、決定的になりそうなシーンでした。
水戸は何とか同点に追いつこうと、最後は積極的に前に出ますが、3バックにしたことで清水の守備は安定。AT4分には、乾が身体を張った守備を見せるなど、白崎の追加点を最後まで守り切り、2-1で勝利を収めました

後半の総括

まずは独自集計による後半のスタッツです。

清水 vs 水戸 後半のスタッツ

以外ではあるのですが、シュート数は水戸が上回りましたが、ボール支配率やパス数は、前半とは異なり、清水が上回り、乾効果もあって後半は清水がもともとやりたいサッカーに近づくことができたと思います。

清水 vs 水戸 時間帯別のボール保持率とシュート数

時間帯別にみると、最終盤こそ水戸が盛り返したものの、後半開始早々の時間帯含めて、後半は、清水がペースを握ることができました。

この試合のMVP・MIPは?

この試合、MVPを上げたいのは乾選手です。後半になって、清水の攻撃が活性化したのは乾選手の中盤における溜めや外しの部分が大きかったように思います。何度かボールをロストするシーンもありましたが、何といっても後半だけで、パス数が46(SPAIAより)と、1ゲーム通したら92本というありえない数値。しかも成功率も87%と高い数値を示しました。

後半だけで乾のパス数46と成功率87%は脅威

ヒートマップでも、ピッチの様々な場所で起点になっていたのがわかります。

水戸戦 乾のヒートマップ

そしてMIPは何といっても白崎選手でしょう。値千金の追加点に加えて、守備時のカバーリング、攻撃時の気の利いたパスなど、この試合は全体を通じて良いプレーができていたと思います。そして何より、試合出場機会の少ない若手選手のお手本になるんだという気持ち。素晴らしかったですね。秋葉監督も、高木選手と合わせて非常に高い評価でした。

--8試合ぶりの先発となった白崎 凌兵選手が結果を出した。
シラ(白崎)は自分のことだけでなく、試合に出られないときも、チームが勝つために必要なことは何なのかを考えながらプレーしてくれていました。こんなに心強い選手はいません。今日メンバーには入れなかった選手も、手を抜くことなく、勝つために、自分が試合に出るために何が必要なのかを、常に考えてくれています。このレベルで素晴らしい競争があるからこそ、チームは良い状態です。シラや(高木)践のような選手がもっともっと出てきて、僕自身がうれしい悩みで眠れない日が続けばいいなと思っています。

試合後 秋葉監督

最後に

前節の横浜FC戦での7連勝ストップ、久しぶりの敗戦の悪い流れを、ホームで水戸に勝つことで断ち切ることができました。特に去年は勝てずに因縁の相手、水戸に勝つことができたのは大きな収穫でした。
良かった点としては、相手の前線からのプレスに対しての外し方をいくつか実践できていたことと、攻撃面でも乾を中心に清水らしさをと取り戻すことができたこと、そして白崎と高木というこれまで出場の機会に恵まれていなかった選手が活躍できたことでしょうか。これらは大きな収穫でした。
一方で、特に前半は、前線プレス、ロングボールという戦術に苦しめられた面があり、ここは引き続き対策が必要かと思います。また新たな課題として、清水が4バックの際に、清水の2CBに対して相手FWの2トップが数的同数を作られたときにどうするのか、などいくつか出てきたと思います。
前半戦折り返しまであと少し。ここでできる限り勝ち点を積み上げて欲しいです。

2-1で勝利
人生初のサポパも楽しみました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?