008 Why 'follow your passion' is bad advice
「あなたの夢はなんですか?」
若い頃は特に、こんな無邪気な質問を幾度とも問いかけられてきた。
夢に向かって部活に精を出す。なんか、ひまを貪ってぐーたら生きるよりはステキな時間かもしれませんね。
ところが、「自分のやりたいことを見つけ、その仕事に就くことが幸せの第一歩!」という考え方は間違いだ、という記事を目にしました。
Cal Newport の "Why 'follow your passion' is bad advice"。
わたしの言いたいことをきっちりと言語化してくれてるので、紹介しておきます。この記事は、そんなニューポートの記事の健忘録です。
文献1
文献2
文献3
情熱仮説
1970年ボレス (Richard Nelson Bolles) は、”What color is your parachute?” の中で、次のようにアドバイスする、
「あなた自身がやりたいことを理解しなさい・・・。そして、あなたのような人を必要としている場所を見つけなさい」
この『自分のやりたいことを軸に仕事を見つける』という考えは、当時は先鋭的であり、多くの人たちには受け入れられなかった。
しかし急速な経済成長に伴い、単純労働から知的労働が増え、職業選択の幅が広がるにつれ、ボレスの考えが世の中に受け入れられた。
現在、彼の書籍は700万部を超えるベストセラーとなっている。
初版から50年経った今でも、Amazon で買えます。
ニューポートは、ボレスの洞察を以下のように要約し、これを「情熱仮説」と呼びます。
50年も前に提案され、今では広く支持されています。
もう一度、情熱仮説を見てみましょう。
STEP 1:あなたが情熱を注げる対象を見つける。
STEP 2:それができる仕事に就く。
↓
結果 :幸せな仕事生活が約束される。
こう端的に書いてしまうと、情熱仮説のいかがわしさが露わになります。
情熱の罠
「情熱仮説」はあくまで「仮説」です。
その後、職場でのモチベーションや幸福度については、多くの研究がなされてきました。(なぜならhappy employees はbetter employeesだから)
ここでの「研究」とは主に、Edward L. Deci、Richard M. Ryanらに主導された「自己決定理論」(self-determination theory )。
つまり、
研究結果は情熱仮説を支持しない。
どんな部署でも、仕事がしっかりできて、自信があり、謙虚なおじさん/おばさんがいらっしゃいます。それを「幸せだ」と自覚しているかは?ですが、憂いもなく、人に頼られ、信頼されているその働きぶりって、「幸せ」だと考えます。(そんな人も、「俺は経理がやりたいんだ!」とか「私は総務の仕事が大好きだ」と考えて入社した人ではないと思います。)
情熱仮説の問題点
それでも、「自分の情熱に従ってください」というのは無害なアドバイスだと主張する人もいるが、
デザイナーに憧れ、念願のデザイン会社に就職。でも待ち構えていたのは、くだらない雑用ばかり。
「こんなもののために生まれてきたんじゃない!」
仕事は大変です。毎日が楽しいわけではありません。
最終的に説得力のあるキャリアにつながるスキルを磨くには、何年もの努力が必要です。あなたが夢の仕事を探しているなら、あなたは何度も何度も失望することになります。
仕事が楽しいと感じるのに必要な要素は、「自律性、尊敬、能力、創造性、影響力」の感覚。実績もない人に、すぐそんな仕事が与えられるはずがない。
ニューポートは、こんな風に締めくくります。
おわりに
自分のやりたいことを見つけその実現に努力する。
このこと自体は、とても尊いことだと思います。
ただし、それでハッピーエンドに至るというのは極めて稀だと考えるべきで、その覚悟を持って自身で判断するべきもの。
やりたいことを見つけ、それが叶う仕事に就くことが、幸せな仕事ライフの鍵ですよ。というアドバイスを無批判に受け入れるのはとても危険だし、それが当然ですよという風潮はいかがなものかと思う。
まとめると
「やりたいことを見つけそれを追い求めることが職探しの秘訣」という情熱仮説には根拠がなく、このアプローチはむしろ不幸につながるリスクが高い。今ある仕事に真摯に取り組み、その中でやりがいを見つけていく姿勢こそが、幸せな社会人人生にとって重要。
補足
「好きこそ物の上手なれ」という言葉もあります。わたしも「楽しんで仕事をしている人の方がパフォーマンスは高い」と思っています。
でもそれは、情熱仮説とは違う。どんな仕事でも「もっといいやり方は」とか「もしかすると別なやり方が」とか考えることが楽しくて、それを繰り返すことかなと思う。今の仕事を好きになって、将来を見据え考え続けること。
補足の補足
自分の適性は把握しておいた方がいいと思う。
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