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書籍の内容で国家試験を解説(3章~4章)

書籍を購入してくださった方に向けて、Twitterで書籍の内容をもとにした国家試験の解説を行いました。

書籍はこちら↓

改めてnoteにまとめたいと思います。
今回は3章~4章の内容です。

以下の総合フローチャートをもとに考えてみてください。

問題1

以下の紅斑をみたときに、まず確認するのはなんでしょう。

112C-25

国試問題文(抜粋)
32歳の女性.痒みを伴う皮疹を主訴に来院した.昨日夕食後に皮疹が背部に出現し,消退した後に下肢に同様の皮疹が出現した.

答え:皮疹の持続時間

表面の変化がなく、境界明瞭な紅斑なので病変は真皮にあるようです。

その場合はマスト細胞性の蕁麻疹とT細胞性の中毒疹を考えます。
そして蕁麻疹と中毒疹の鑑別点は皮疹の持続時間です。
24時間以内に消えるのが蕁麻疹、24時間以上持続するのが中毒疹です。

この症例は数時間で皮疹が消退しているようなので蕁麻疹だとわかります。
隆起が強いので見た目一発診断も可能ですが、順序立てて考えましょう。

問題2

以下の24時間以上持続する紅斑をみたとき、まず確認するのは何でしょう。

102A-33

国試問題文(抜粋)
70歳の女性.5日前に頭痛と咽頭痛とが生じたため,感冒薬を内服した.
3日前から発熱,関節痛,結膜充血,口腔内びらんに加えて,顔面,体幹および四肢に紅色皮疹が出現した.

答え:薬歴

表面の変化がなく境界明瞭な紅斑なので、病変は真皮にあるようです。
この場合は蕁麻疹と中毒疹を考えます。
蕁麻疹と中毒疹の鑑別点は皮疹の持続時間です。
24時間以上持続する場合は中毒疹と診断します。

中毒疹は薬疹、感染症、膠原病の可能性がありますが見た目では鑑別できません。
そこでまず薬歴に注目します。
薬歴がなければ感染症と膠原病に絞られますが、この症例は感冒薬を内服しているようです。
まず薬疹を考えて薬剤を中止します。

ちなみに薬疹は重症薬疹の鑑別が重要です。
通常の薬疹は原因薬剤の中止で治癒しますが、重症薬疹はステロイドの全身投与が必要です。

重要な鑑別点は発熱と粘膜病変です。
この症例は発熱と粘膜病変があり、重症薬疹(スティーブンスジョンソン症候群)のようです。
ステロイドの全身投与が必要になります。

問題3

以下の24時間以上持続する紅斑をみたとき、まず確認するのは何でしょう。

108-A51

国試問題文(抜粋)
60歳の男性.発熱と全身の皮疹を主訴に来院した.15日前に山へ山菜採りに行った.5日前から発熱があり,3日前から全身に皮疹が出現していた.体温39.5℃.右下腿には黒褐色の痂皮が付着した紅斑を認める.

答え:薬歴

表面の変化がなく境界明瞭な紅斑なので、病変は真皮にあるようです。
この場合は蕁麻疹と中毒疹を考えます。
蕁麻疹と中毒疹の鑑別点は皮疹の持続時間です。
24時間以上持続する場合は中毒疹と診断します。

中毒疹は薬疹、感染症、膠原病の可能性がありますが見た目では鑑別できません。
そこでまず薬歴に注目します。

この症例は内服薬剤はなく、感染症と膠原病に絞られます。
その場合の診断は非常に困難です。

感染症ではウイルス(麻疹、風疹、伝染性単核球症など)、リケッチア(ツツガムシ病、日本紅斑熱)、スピロヘータ(梅毒)などを考える必要があります。

また膠原病では成人スティル病、SLE、皮膚筋炎、水疱性類天疱瘡の初期などの鑑別が必要です。

診断がつかないことも多々あります。

この症例は野山に行ったという行動歴から刺し口を見つけてツツガムシ病と診断されたようですが、診断はなかなか難しいと思います。

問題4

以下の紅斑をみたとき、注目すべき2つのポイントは何でしょう。

110-I79

国試問題文(抜粋)
45歳の男性.1週前から多発関節痛と両側の下肢の皮疹とが出現した.体温37.6℃.

答え:①表面の性状、②周囲との境界

紅斑を見たときに最初に注目するのは表面の性状です。
表面の変化がなくツルツルしている場合は、病変は真皮以下に存在しています。
浅い部位(真皮)に病変がある場合は境界が明瞭で、深い部位(皮下組織)に病変がある場合は境界が不明瞭になります。

この症例は境界が不明瞭なので、病変は皮下組織にあるようです。
その場合は感染症、循環障害、自己免疫疾患の3つを考えます(関節部に病変がある場合は急性関節炎も鑑別に挙がる)。

これらの鑑別点は病変の分布です。
多発している場合は感染症(蜂窩織炎)の可能性は低く、循環障害と自己免疫を考えます。
見た目では鑑別はできず、確定診断には皮膚生検が必要です。
ただ関節痛があるので自己免疫疾患(結節性紅斑、中型血管炎)の可能性が高そうです。

問題5

以下の表面がツルツルで周囲との境界が不明瞭な紅斑をみたとき、注目すべきポイントは何でしょう。

112-E28

国試問題文(抜粋)
43歳の男性.足の痛みを主訴に来院した.左足の第一中足趾節関節に熱感と圧痛とを認める.

答え:皮疹の部位(関節部)

紅斑の表面の変化がなくツルツルしている場合は、病変は真皮以下に存在しています。
そして皮下組織に病変がある場合は境界が不明瞭になります。
この症例は境界が不明瞭なので、病変は皮下組織にあるようです。

単発の場合はまず感染症(蜂窩織炎)を疑います。
ですが関節部に病変がある場合は急性関節炎(痛風、偽痛風)の可能性も忘れてはいけません。
可動域制限、可動時痛があるかどうかを確認するのがよいでしょう。

答えは痛風発作です。
意外と皮膚科を受診することもあるので間違わないようにしたいですね。

1~2章はこちら↓↓

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