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仕事がはかどらない Jazz の名盤 2

正月 2 日目。どうお過ごしでしょうか。元旦に引き続き,仕事がはかどらない Jazz の名盤 その 2 です。まずは,決まり文句を言わせて下さい。

仕事がはかどる Jazz って時々見かけます。それはそれで役立つんですが,音楽としては仕事がはかどるってどうなんだろう。というか,仕事をしていても思わず手を止めて曲に聴き入ってしまう,というのが本当にいい音楽であるような気がします。もちろん,時と場合によりますが。

元旦に紹介した Portrait in Jazz は,ピアノトリオというバンドしてはミニマムな構成で,とにかくセンスの光る 1 枚でした。2 日目の今日は,夜もふけた New York の Jazz Club の雰囲気を彷彿とさせるかなり Jazz 臭いアルバムの紹介です。バンド構成としても,管楽器が入ってきます。

Bags Groove, Miles Davis

バンドのメインは,帝王と呼ばれた Miles Davis (trumpet) です。Jazz は,時代とともに,Swing → Bebop → Modal と発展していくのですが,Bebop 全盛の時代に,新しい感覚のモード奏法を編み出したのが,何を隠そうこの Miles Davis です。Bebop では,曲のコード進行に合わせて,その時々のコードに合う音階(スケール)を吹きまくる(弾きまくる)という即興演奏スタイルでした。奏者は,それぞれのコード,例えば C7,といったコードに合うスケールをいくつか暗記しておき,それを次々に吹いていきます。このとき,鉄則があります。決して,4 度の音階は鳴らしてはいけない。C7(ド)に対してはファ。西洋の音楽理論によると,ドに対してのファは 4 度だけど,ファに対してドは 5 度になっている。つまり,ドとファが共存してしまうと,ドミソの和音のところでファラドの雰囲気が出てしまう。つまり,調性が失われて曲の雰囲気が台無しになるというのです。でも,Miles は,そんなことお構いなし。その曲のそのコードに合っていれば,4 度も鳴らします。そして,Bebop の速弾き奏法を,反射神経バカの奏法と言わんばかりに,ゆっくりと丁寧に音を出していきます。この新しい即興演奏の方法論がモード奏法です。

このアルバムには,もうひとり天才がいます。Thelonious Monk (piano) です。彼は,自分の感性だけを頼りに独自のピアノ演奏を追求した人です。この人の演奏は,時々,下手くそ? と思ってしまうこともありましたが,聴き手が成長すると下手くそではなかったことを思い知らせてくれます。

Bebop 時代の反射神経速弾き奏法をあざ笑うかのように,2 人の天才がゆっくりと音を置いていきます。また,その周りを Sonny Rollins (tenor sax), Milt Jackson (vibes), Horace Silver (piano), Percy Heath (bass), Kenny Clarke (drums) といった最高レベルの Jazz 職人たちが固めています。

ちなみに,Jazz のモード奏法は,クラシックではストラビンスキーあたりからの 12 音技法に通じるところがあります。また,東洋の音楽では,4 度を使うところが多く,中国の「チャカチャカチャンチャン,チャンチャンチャーン,チャ〜ン」も大抵 4 度が重ねられていて,日本のミュージックシーンでは,細野晴臣や坂本龍一あたりが YMO で使い始めます。こんな関係にも思いを馳せると,一層,音楽を楽しめると思います。

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