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ビジネスマンのためのブラックスワン対策講座(2)オプションを探せ!

現在の新型コロナ蔓延の状況下で、多くの事業者が苦しんでいる中、最高益を上げる会社もあれば、しっかり耐えて利益を出し続けている会社もあります。

疫病の蔓延という、まさにブラックスワン的事象に対して、それぞれの企業が「脆い」か「反脆い」かが明確に見えることになりました。

このような事象に対する対抗策として、効果的に、「脆さ」を最小化し「反脆さ」を獲得する方法のひとつとして、オプションの活用があります。

1.オプション

「反脆く」なるために「オプション」が大変重要な役割を果たします。オプションとは、将来のある時点で何らかの行為を行うことができる権利(義務ではない)のことです。

タレブ氏の著作「反脆弱性」には、アリストテレスの著作に登場する哲学者タレスの話があり、彼がオリーブの搾油機を収穫シーズンに利用できる権利を安く買占め、オリーブが豊作になって、搾油機をいい条件で貸し出してかなりの富を築いたと言う話が出てきます。これが人類史上最初のオプションではないかとタレブ氏は言います。

このオプションは、安く手に入り、うまくいったときの利益が莫大になるという「非対称性」(ダウンサイドよりアップサイドの方が大きい)のオプションです。

よい方のオプションの場合、いいとこ取りが出来るので、変動性を好みます。より大きな変動があるほうがメリットが大きくなるのです。つまり、平均より、平均からのばらつき具合いが重要なのです。従って、このようなオプションは、不確実性が高いほど、ばらつきが大きいほど価値があります。

また、非対称性が強い場合、つまり安くオプションが手に入る場合は、細かいことを理解する必要もいろいろ予測する必要もありません。オプションを実行してメリットを取れるタイミングだけ考え、実行すればいいのです。

2.ファット・テール

高級品のビジネスでは、平均的に収入が多少多いところよりも、平均収入は低くとも高額所得者の数が多いところの方がものが売れます。つまりベル型カーブのテールの部分が重要になります。

同じように、イノベーターは、一種クレイジーでアイデアと稀有な能力をもって行動に移す人たちで、やはりテールに属する少数派です。ベンチャー投資家にとっても、またベンチャー企業にとっても、イノベーションは非対称なオプション、つまりアップサイドがとてつもなく大きいのです。

私たちが今生きている「極端な世界」は、テールの部分の大きい、ファット・テールです。平均からの外れ値はとても大きくなっているわけです。ということは、「極端な世界」の方が、よりランダム性も不確実性も高まるので、オプションが成り立ちやすい環境にあると言えます。

特にイノベーションを実用化して社会を進歩させたいなら、平均をアップさせるのではなく、テールを厚くして、よりリスクテイカーを増やして、オプションの成功確率を高めることが重要です。

3.オプションの発見と評価

実はオプションは、いろいろなところに存在しています。金融のオプションについては、料金を払うのが当たり前で、過大評価されて高い価格がつくこともあります。ただほかの分野ですと、無料のオプションに気づかなかったり、過小評価されがちなのです。時として、オプションは私たちの前に転がっているのですが、私たちにはそれが見えないのです。

企業において考えてみましょう。企業は目標を設定し、戦略的な計画を策定するのが普通です。中期的、短期的、様々な計画やアクションプランも作ったりします。

企業は基本的にランダム性を嫌います。また計画に従った行動に縛られ、オプションの存在に気づかなくなってしまいます。

しかしながら、企業の行動には意識すれば様々なオプションの存在が分かります。商品の販売量や購入量について、上限や下限のみ設けたり、確定しないで範囲だけ決めたりすることもあります。

また総代理店などの契約だと、通常は特定の地域での独占販売の権利なので、これは一種のオプション性があり、長期にわたってかなりアップサイドの利益を上げられることもあります。

ベンチャー企業の商品の販売にあたり、その会社に投資をするオプションを付与してもらうケースもあります。また同様に、会計などのサービスを提供する会社が、サービス代金を安くするかわりに、そのベンチャー企業への投資する権利を獲得したという話もあります。これらは実は大きなアップサイドを秘めたオプションなのです。

企業取引の場合は、まったく無料のオプションはないと思いますが、細かいところでオプション性のある取引は存在しますし、場合によってはそれを提案することも可能でしょう。但し、企業と企業の取引の場合は、明らかな非対称性のオプション(どちらかに大きなアップサイドがある)はあまり考えられないので、金融のオプション同様に、そのコストと内容を十分に検討する必要があります。

七面鳥の話を思い出してください。「ないことの証拠」と「証拠がないこと」は違います。「ないことの証拠」を考えると次のようにアップサイドがある場合は過小評価され、ダウンサイドがある場合は逆に過大評価されます。

いいアップサイドのオプション(「反脆い」)の場合、アップサイドは稀少なので、「よいニュースがない状態」です。そうすると平均値は実際より下がり、過小評価してしまいます。
一方、ダウンサイドのリスクを抱える「脆い」場合は、「悪いニュースが過去のデータに見当たらない」という状態なので、サンプルの平均を取ると実際より過大評価してしまうのです。

これをよく理解すれば、アップサイドのオプションが過小評価される傾向なので、それを上手く利用すべきなの必要です。

4.アップサイドオプションを集める

企業経営においては、まずダウンサイドの可能性(オプション)を探し出して、それを潰すか、影響を少なくするべきです。更に大事なことは、大小関係なく非対称性のアップサイドのオプションを集めまくることです。

このようなオプションの考え方をする事で、確実に「反脆さ」を身につけ、ブラックスワンに対しての抵抗力を上げることが出来ます。

また、不確実性を味方にしたアップサイドのオプションは、ブラックスワンによって逆な大きな利益を生むことだってあり得るわけです。